人材派遣会社の起業とビジネスモデル一挙解説

2020年6月1日

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

「働き方改革」により、多種多様な働き方が生まれつつある今。正社員にこだわらず、自分のライフスタイルに合わせた働き方を選択する人も増えてきている。「派遣社員」もその選択肢の一つ。この時代だからこそ、人材派遣会社を起業しようと考えている方も多いのでは。そこで今回は、人材派遣会社の立ち上げや設立に関する概要から注意点やビジネスモデルの解説まで、網羅的にかつ端的に分かりやすくまとめていく。

この記事を読むメリット

  • 人材派遣会社を起業する際に知っておきたい情報を網羅できる
  • 人材派遣会社を起業する際の具体的なアクションが分かりすぐに実行できる

人材派遣会社とは?

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人材派遣会社とは、その名の通り「人材を派遣する」会社。人材を求める企業の登録を受け、その企業に合った人材を雇用して派遣する。つまり給料を支払うのは人材派遣会社だが、求職者が実際に指示を受けて働くのは派遣先起業となる。企業側にとっては正社員を雇用するよりも人件費を削減でき、雇用者にとっては正社員よりも気楽に働ける。双方にとってメリットのある働き方だ。

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人材派遣会社の立ち上げ方と起業

人材派遣会社を立ち上げようと思っても、「何から始めたら良いのか分からない」という方も多いだろう。そこでここでは、人材派遣会社の立ち上げ方と起業について解説していく。

人材派遣会社を立ち上げる大まかな流れ

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人材派遣会社を立ち上げる大まかな流れは、以下の通りだ。

  1. 申請書類の作成 
  2. 労働局への書類提出 
  3. 労働局が行う審査
  4. 厚生労働省による最終審査
  5. 許可証交付
  6. 人材派遣会社の設立

許可が出るまでの期間は約3か月。この期間を見越して、起業のスケジュールを立てよう。なるべく早く許可を取得したいなら、社労士など許可申請のノウハウが豊富なプロに依頼するのがおすすめ。その分費用はかかるが、許可取得までの時間を短縮し、スムーズに起業できる。あらかじめ初期費用に組み込んでおくと良いだろう。

厚生労働省の許可が必須

人材派遣会社の起業自体はそれほど難しいものではないが、業務開始にあたって厚生労働省からの許可を取得しなけらばならない。

主な許可条件は以下の3つだ。

  1. 基準資本金を含めた一定額以上の資産を保有すること
  2. 事務所面積を含めた事務所の条件
  3. 適正な雇用と管理ができる派遣元事業者であること

それぞれについて解説していく。

①基準資本金を含めた一定額以上の資産を保有すること

人材派遣会社を起業する上で、大きなハードルとなるのが資本金の最低額。許可を取得するためには資本金として、人材紹介会社の500万よりはるかに大きい2,000万円以上を用意しなければならない。他にも備品や事務所などに多額の資金が必要なので、早めに資金調達の見通しを立てておきたい。

②事務所面積を含めた事務所の条件

派遣登録者のプライバシーを守り面談等をするために、事務所にはさまざまな細かい条件がある。事務所の面積が20平米以上あることが必要とされる。ただ許可の要件をクリアしているかどうかだけでなく、事業戦略とひも付いたオフィスを選ぶことも大切だ。申請の際には、事務所として使う物件の見取り図などを提示しなければならないので、事前に準備しておこう。

③適正な雇用と管理ができる派遣元事業者であること

労働者派遣事業を行う許可を得るには、「派遣元責任者講習」を受講して適正な雇用と管理ができる派遣元事業者であることを示す必要がある。「一般社団法人 日本人材派遣協会」や「公益社団法人 労務管理教育センター」などさまざまな機関が全国各地で実施しており、派遣事業に関する様々な知識を労働法に詳しい専門家から学べる。費用は実施機関によっても異なるが、約5000円~1万円。一度受講すれば、3年間は有効となる。

この他にも、

  • 労働者の教育と訓練を適正に行える計画を持っていること
  • 許可に当たって拒否されることになる欠格事由を持っていないこと

などさまざまな条件がある。

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人材派遣会社設立での注意点とビジネスモデル

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人材派遣の形態は大きく「一般派遣」「特定派遣」「紹介予定派遣」の3つに分けられる。

一般派遣(登録型派遣)

一般的に「派遣社員」と呼ばれるのはこの形態。派遣の仕事を希望する人材を人材派遣会社に登録し、派遣スタッフと派遣会社との間で雇用契約が結ばれる。雇用関係は就職先が決まった時点で初めて発生し、派遣契約の結ばれている期間のみ成立する。派遣会社は仕事内容・就業条件の案内、給与の支払い、福利厚生、スキルアップ研修等の面で派遣スタッフをサポートし、実際に業務の指示を行うのは派遣先企業となる。

特定派遣

システムエンジニアなどの一定のスキルが必要な業種に多い形態。派遣会社と派遣社員が正社員同様、無期限の雇用契約を結ぶ。必要に応じて派遣先企業に派遣され、派遣契約終了後も派遣会社での業務が継続する。

紹介予定派遣

将来的に正社員や契約社員など直接雇用されることを前提に、約3~6ヶ月の一定期間、派遣社員として就業する。双方に合意があれば、契約期間終了後に直接雇用に切り替わる形態。就職期間の間に事前に互いをも見極めることができることから、「自社に合った社員を雇用したい」企業と「自分に合った会社で働きたい」雇用者の双方にメリットがある。

拡大しているマーケットを狙おう

人材ビジネスの成功の鍵は、人材を必要とする企業に適材適所の人材を供給することができるかどうか。規模にもよるが、大手がやっているような総合型の派遣事業だと勝負するのは難しい。拡大しているマーケットに特化したブティック型で事業を拡大するのがおすすめ。

特定の分野に特化することで自社の特徴を作り、優秀な人材が集まる企業に近づける。転職市場はどんどん変化していくので、常に市場を意識しながら戦略を練り続ける必要がある。

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人材紹介業との違い

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人材派遣会社は「人材紹介会社」とよく混同されがちだが、両者には大きな違いがある。ここでは、人材派遣会社と人材紹介会社がどう違うのかを解説する。

人材派遣会社では、会社と求職者の間に雇用関係が発生する。対して人材紹介会社は、あくまで求職者に求人をあっせんするだけで、求職者が働き始めたとしても、会社と求職者の間に雇用関係は発生しない。

人材紹介会社は利益率は高いが、継続して求人をあっせんしていかなければいけないので売上収入が不安定になりがちだ。しかし人材派遣は、人材紹介会社と比べると利益率は低いものの、求職者が派遣先起業で働き続ける限り収入が見込める。安定した収入を得やすいのが大きなメリットだ。

しっかり準備して人材派遣会社の起業を成功させよう

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今回は、人材派遣会社の立ち上げや設立に関する概要から注意点やビジネスモデルを解説した。人材派遣会社を起業する上ではさまざまな条件があり、情報量が多くて混乱するかもしれない。しかし転職市場が盛り上がっている今、しっかりと準備さえすれば事業が成功する確率は大きく上がる。一つひとつクリアしていこう。

税理士・公認会計士コメント

上記にあるように、人材派遣会社は厚労省の許認可制になっており、資産要件や事務所要件、財務要件等その起業に当たっては資金調達や場所・人材確保等十分な準備が必要になる。
我々会計士サイドからよく相談に来るのが、資産要件を満たさなくなった場合の監査や合意された手続の依頼である。
金融業や人材業など社会的な影響の大きい事業に関しては行政の規制も考慮に入れなければいけない点に、通常のビジネスとは違った難しさがある。

2020年6月1日ビジネスモデル