『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』を解説
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「DXを推進したいが、どうやってシステムを導入したらいいかわからない……」
こんな悩みをお持ちではないだろうか。
経済産業省は平成30年9月にDXレポートを、同年12月にはDX推進ガイドラインを公表した。
DXレポートでは、2025年までにDX推進がうまく進んでいないと、最大で年間約12兆円もの経済損失が生じる可能性があるとされている。
しかし、思うようにDXが進んでいない企業が多くあるのが現状。この状況に経営者の中には焦りを感じている人も多いだろう。そこで役に立つのがDX推進ガイドラインである。
この記事ではガイドラインの活用法やDX推進に必要な情報を紹介する。ぜひDX推進をする際には参考にしてほしい。
この記事を読むメリット
・ガイドラインの活用方法や、またそのために必要な情報・知識を得ることができる
目次
【おさらい】DXの定義とは?
DX推進を本格的に始めようと考えた際に、DXについていまいち理解していないことに気づく人も多いだろう。
そこで、DXの定義について簡単に説明すると、
- DXとは「デジタルトランスフォーメーション」のことである
- DXは、大まかにいうと「デジタルに変わること」を意味する
- 元々は「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を指す
- 総務省による定義では「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ことである
となる。
DXについてより詳しく説明した記事があるので、知識をさらに深めたい方はぜひそちらも参考にしてほしい。
経済産業省のDX推進ガイドライン
経済産業省が公開したDX(デジタルトランスフォーメーション)推進ガイドラインは、
- DXの実現やその基盤となるITシステムの構築をおこなっていく上で経営者が抑えるべき事項を明確にすること
- 取締役会や株主がDXの取組をチェックする上で活用できるものとすること
を目的としている。
DX推進が思うように進んでいない現状を踏まえたDX推進ガイドライン。
そこにはDXを実現するためのアプローチや、DX実現に必要なアクションについての認識の共有が図られるように取りまとめられている。
その具体的な内容は以下の通りである。
DX推進ガイドライン概要
DX推進ガイドラインは、 DX推進のための経営の在り方、仕組み DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築 の2つから構成されている。
- DX推進のための経営の在り方、仕組み
- DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築
「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」ではさらに
- 体制・仕組み
- 実行プロセス
にわかれている。
「DX推進のための経営の在り方、仕組み」の項目は
- 経営戦略・ビジョンの提示
- 経営トップのコミットメント
- DX推進のための体制整備
- 投資等の意思決定のあり方
- DXにより実現すべきもの:スピーディーな変化への対応力
の5つ。
「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」の項目は
- 体制・仕組み
- 全体的なITシステムの構築のための体制
- 全体的なITシステムの構築に向けたガバナンス
- 事業部門のオーナーシップと要件定義能力
- 実行プロセス
- IT資産の分析・評価
- IT資産の仕分けとプランニング
- 刷新後のITシステム:変化への追従力
となっている。
DX推進指標
DX推進指標(デジタルトランスフォーメーション推進指標)とは、各企業が現在どの程度DX推進ができているのかを確認し、今後どうしていくかを考えるための指標である。
DX推進指標は自己診断を基本としたもので、「共有した認識に基づいたアクションをとるための気づきの機会」を提供することを目指している。 ベンチマークを策定することもでき、自社と他社の差を理解することができる。
また、先行事例も数多くあるので、これからDXを推進しようと考えている経営者にとって参考になるものである。 DX推進指標について詳しく説明した記事もあるので、ぜひ参考にしてほしい。
ガイドラインの背景
現在、あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネスモデルを展開する新規参入者が登場している。
この状況の中で、各企業は競争力の維持・強化のために、DX(デジタルトランスフォーメーション)をスピーディーに進めていくことが求められている。
しかし、既存システムのブラックボックス化・不十分なマネジメントによるレガシー化の繰り返しなどの課題点があり、なかなかDXが進まない。
そこで、経済産業省はDXに関する報告書を公表し、そこにあるアプローチやアクションについての認識の共有が図られるようにガイドラインが取りまとめられた。
DXが求められる3つの理由
DX(デジタルトランスフォーメーション)が必要なことはわかったものの、なぜこんなに求められるのか疑問に思う方もいるだろう。
今のままでも成り立っているのに、なぜ改革をすべきなのか。
ここからはその疑問を解決する、DXが求められている理由を紹介していく。
①デジタル化
昨今の情勢により、リモートワークへの移行が急速に進んでいる。
会社に出社せずに仕事ができれば、必要な経費・移動時間の削減ができるなど利点が多いので、コロナ以前の体制に戻ることはあまりないだろう。
2020年8月時点で、IT・インターネット業界では約6割がリモートワークとなっている。 また、近年ではデジタル化によりビジネスが多様になっている。
データやデジタル技術を使って、顧客視点で新たな価値を創出していこうとするDXを進めなければ、これらの企業と戦えなくなるだろう。 将来の成長や他企業との競争力強化のためにも、DXを推進する必要があるのだ。
②ITシステムの老朽化
DXレポートでも言及されているように、現在のITシステムに問題がある企業は少なくない。
具体的には 既存システムが事業部門ごとに構成されているため、全社横断的なデータ活用ができない 既存システムが過剰にカスタマイズされている などが挙げられる。
このように、システムが複雑化・ブラックボックス化していると、データを活用しきれなかったりコストがかかりすぎたりする場合がある。
③労働力不足
周知のように、日本の人口はこの先減少していく。
また、少子高齢化も進むので、労働人口はさらに少なくなるだろう。 このような労働力不足が見込まれることから、労働生産性を向上させていく必要がある。 労働力は減少する一方、AIなどのICT技術は急速に進化している。
これらのICT技術を使えば、少ない人数でも効率よく仕事ができる。長期的な視点からも、DXを推進していくことが望まれる。
DX推進のため必要なテクノロジー
DXを進めたいと思っても、なにをしたらよいか、どのようなテクノロジーが必要なのかわからない経営者も多いだろう。ここでは代表的なテクノロジーを7つ紹介する。
- コンピューティング
- AI
- 5G
- IoT
- サイバーセキュリティ
- クラウド
- データ
- コンピューティング 古来の意味は「数えること」「計算すること」。 現在ではコンピュータによる数値計算・データ処理・情報処理といったコンピュータを使う活動全般を指すこともある。
- AI 「Artificial Intelligence」、つまり人工知能のこと。 常に人の誘導なしに作業タスクを実行する自律性と、経験から学びパフォーマンスを向上させる適応性が備わっている。
- 5G 「5th Generation」、つまり「第5世代移動通信システム」のこと。 高速・大容量・多接続・低遅延が実現できる。
- IoT 「Internet of Things」、つまりモノのインターネットのこと。 従来インターネットに接続されていなかったさまざまなモノが、インターネットを通じて相互に情報交換をする仕組みを指す。
- サイバーセキュリティ コンピュータやweb上への不正アクセスを防ぎ、電子情報の不正な取得・流出・改ざんの防止を目的とした対策のこと。
- クラウド ハードウェア・ソフトウェアを持たずとも、インターネットを通じてサービスを必要なときに必要な分だけ利用する考え方のこと。
- データ コンピュータでプログラムを使った処理の対象となる記号化・数字化された資料のこと。
まとめ
今回はDX(デジタルトランスフォーメーション)推進ガイドラインについて説明し、ガイドラインの背景・DXが必要な理由・必要なテクノロジーを紹介した。
改革をするのは簡単なことではないが、その分得られるメリットも多い。あなたもぜひガイドラインを利用して、DXをより推進させてほしい。