雇用調整助成金の申請期間が延長に!対象者や申請の流れ、必要書類などを解説
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新型コロナウイルスの影響で多くの企業が打撃を受けることとなった2020年。
企業の負担を少しでも軽減するために取られた措置の1つが「雇用調整助成金」である。
申請期間が2020年9月までだったこの助成金制度だが、12月31日まで延長されることとなり、利用を考えている企業も多いと思われる。
そこで今回は、雇用調整助成金について知りたい企業へ向けて以下の内容を紹介する。
・雇用調整助成金とは
・雇用調整助成金の申請に必要な書類
・雇用調整助成金の申請までの流れ
・雇用調整助成金についてのよくある質問
目次
雇用調整助成金とは
雇用調整助成金とは、事業を収縮せざるを得なかった事業主へ向けた助成金のこと。
一時的な休業などで労働者の雇用を継続した場合、休業手当に相当する額が給付される。
特に、新型コロナウイルスの影響で店の営業ができなかった飲食業やサービス業にとっては重要な助成金制度となるのだ。
ここでは、雇用調整助成金の対象になる事業者・労働者について紹介するだけでなく、助成金額や日数についても解説していく。
雇用調整助成金の対象になる事業者・労働者
雇用調整助成金の事業者は以下の条件を満たしている必要がある。
①新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
②最近1ヶ月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少している
③労使間の協定に基づき休業などを実施、なおかつ休業手当を支払っている
上記の3つの条件をすべて満たしている事業者が対象となるため注意が必要だ。
②の比較対象とする月についても、柔軟な取り扱いとする特例措置がある。
次に、雇用調整助成金の対象になる労働者の条件である。
対象になる労働者は「雇用保険に加入している」ことが求められる。
事業者に雇用され、雇用保険被保険者であることが条件のため、学生のアルバイトなどは対象外となっているのだ。
雇用保険被保険者以外の休業手当は「緊急雇用安定助成金」という別の助成金の対象となるため、間違いのないように注意したい。
雇用調整助成金の助成金額や日数
雇用調整助成金で助成される金額は計算式で算出することができる。
自社はどのくらいの金額が助成されるのか、算出しておこう。
(平均賃金額×休業手当等の支払率)×企業ごとの助成率
※1人1日あたり15,000円が上限
企業ごとの助成率は以下の通りである。
【新型コロナウイルスの影響を受けている事業主の場合】
大企業:2/3
中小企業:4/5
【新型コロナウイルスの影響を受け、さらに条件が上乗せになる事業主の場合】
大企業:3/4
中小企業:10/10
これらの計算式をもとに、雇用調整助成金の助成金額が算出できる。
助成される日数については原則1年間で100日分、3年で150日分と決まっている。
しかし、令和2年4月1日~令和2年12月31日までは新型コロナウイルスによる緊急期間対応中のため、この限度日数とは別に支給を受けることができるのだ。
雇用調整助成金の申請に必要な書類
ここまで雇用調整助成金の概要について紹介してきた。
ここでは「小規模事業主」「小規模事業主以外」の場合について、申請時に必要な書類を解説していく。
小規模事業主(従業員が概ね20人以下の事業主)の場合
小規模事業主が雇用調整助成金を申請するときに必要な書類は、以下の通りである。
・休業実績一覧表
・雇用調整助成金 支給申請書
・支給要件確認申立書
これらの書類に加えて、以下の書類を添付して提出する必要がある。
・前年比の売上がわかる書類(対象月の売上表と前年度同月の売上表)
・休業させた日数がわかる書類(タイムカードやシフト表など)
・休業手当の額がわかる書類(給料明細の写しなど)
・役員名簿(役員がいる場合)
・振込口座の通帳のコピー
小規模事業主以外(従業員が概ね20人超の中小企業・大企業)の場合
中小企業・大企業の事業主が雇用調整助成金を申請するときに必要な書類は、以下の通りである。
・様式新特第4号 雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書
・様式新特第6号 支給要件確認申立書
・様式新特第7、8号 支給申請書(休業等)、助成額算定書
・様式新特第9号 休業・教育訓練実績一覧表
「様式新特第9号 休業・教育訓練実績一覧表」については複数枚になった場合、ファイルをCDやDVDの形で提出することもできるので参考にして欲しい。
雇用調整助成金の申請までの流れ
これまで雇用調整助成金の申請に必要な書類について解説してきた。
ここではその書類を使って申請を行う流れについて、詳しく紹介していく。
ステップ①:休業について具体的に検討する
まずは休業に関して、内容を具体的に検討する。
休業措置を取る場合、以下のような内容を決めることとなる。
・どの部門で何人が休業するのか
・いつまで休業するのか
・誰が休業するのか
本来であればこの内容を「雇用調整計画書」にまとめて労働局へ提出しなくてはならない。
しかし、新型コロナウイルスの特例措置として「雇用調整計画書」の提出は不要となっている。
ステップ②:休業の実施
①で計画した雇用調整の通りに休業を行う。
「雇用調整計画書」の提出は不要となっているが、実施にあたって計画書を作成しておくと良いだろう。
ステップ③:支給申請
休業の実績をもとにして、雇用調整助成金の支給申請を行う。
支給対象期間ごとに申請が必要となるため注意が必要だ。
ここで気を付けたいのが申請期限である。
申請対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内に申請しなくてはならない。
期限切れとならないようにきちんと把握しておきたい。
ステップ④:労働局の審査
提出された申請内容について、労働局が審査を行う。
ここで支給の可否が決まるため、申請内容に不備がないように注意したい。
ステップ⑤:支給決定
支給が決まった場合、申請書類に記載した口座に支給額が振り込まれる。
雇用調整助成金についてのよくある質問
雇用調整助成金の申請方法や助成金額について解説してきたが、ここでは雇用調整助成金に関するよくある質問を紹介していく。
雇用調整助成金を利用する際にぜひ参考にして欲しい。
Q.今後も延長される可能性は?
厚生労働省によると、今後の雇用情勢によって延長を改めて判断するとのこと。
今後さらに新型コロナウイルスの感染が広まり、雇用情勢が悪化した場合には延長される可能性もあり得るだろう。
ここで注意したい点が3つある。
①利用可能な特例措置はすべて延長となっている
②特例期間、緊急対応期間も延長となっている
③雇用調整助成金は支給対象期間の翌日から2ヶ月以内に申請する必要がある
特例期間や緊急対応期間も延長になったが、申請期限には注意が必要だ。
Q.雇用調整助成金はいつ頃振り込まれる?
厚生労働省では具体的な振り込み目安は提示していないものの、申請件数によって振り込みにかかる期間が前後すると公表している。
特に令和2年8月以降は申請件数が急増している関係で、振り込みまでに1〜1.5ヶ月要するとのこと。
余裕を持って早めに申請するのをおすすめする。
まとめ:雇用調整助成金を正しく使ってコロナを乗り越えよう
今回は、雇用調整助成金について知りたい企業へ向けて以下の内容を紹介した。
・雇用調整助成金とは
・雇用調整助成金の申請に必要な書類
・雇用調整助成金の申請までの流れ
・雇用調整助成金についてのよくある質問
新型コロナウイルスによる緊急事態ということもあり、これまでの制度より特別な措置が取られている雇用調整助成金。
影響を受けている企業はうまくこの制度を使いながら、事業を継続するように心がけたい。
今後の新型コロナウイルスの感染状況によっては、さらに申請受付期間が延長する可能性もあるため、こまめにチェックしておくことが大切だ。
監修税理士・公認会計士からのコメント
新型コロナウイルスの影響で多くの事業者がダメージを受けましたが、それを助ける助成金がこの雇用調整助成金です。しっかりとこの制度を利用して、企業の存続をさせていくことが大切です。