ちゃんと抑えてますか? 【役員報酬の決め方】

2020年6月7日

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本記事を読むメリット

  • 役員報酬の設定方法の正しい知識を得られる
  • 役員報酬の決定までの一連の流れを把握できるようになる

役員報酬とは?

役員報酬とは、取締役や監査役といった役員に対して支給される報酬のことを指す。それに対して、給与は従業員(会社と雇用関係にある)に対して支給される労働の対価のことである。

オーナー企業の役員は自分の報酬を自分で決定することができる。ですので、親族である役員にその業務に見合わない不当に高すぎる役員報酬を支給することも可能なのだ。それに加えて、決算間近になって、役員報酬を多く支給して、会社の税金を減らそう、ということも可能だ。このように役員報酬が調整などに使われることを防ぐために、税務上は従業員に対する給与と役員報酬では取扱いが異なるものとなっている。

役員報酬の決め方

役員報酬の決め方についてだが、ここからは具体的にはどのような手順と手続きで決定しているかについて紹介していこう。

1.役員報酬のルールを確認

経費(損金)として認められる範囲で役員報酬を決定する。

2.株主総会で決議を行う

株主総会を開催して、役員報酬の金額を決議し、会社の出資者の承認を得る。

3.年金事務所に社会保険加入の書類を作成・提出

役員報酬が決まったら、社会保険加入の手続きが必要だ。

4.役員が居住している市区町村へ住民税の届出

役員個人の住民税を会社が源泉徴収し納付する特別徴収手続きが必要である。

以上のような手続きが必要となってくる。決め方については大枠こういった形だ。あくまで株主総会では、役員ごとの報酬金額を決めるのではなく、役員報酬の総額を決めるだけである。

次のフェーズでは、役員報酬のルールや会社法について、具体的に説明していこう。

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役員報酬のルール 会社法

これまで役員報酬の決め方について解説してきた。ここでは、役員報酬のルールや会社法について触れながら、詳しく解説していこう。

まずはじめに役員報酬による会社法は以下となっている。

会社法361条より、 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。

  1. 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
  2. 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
  3. 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

前項第二号又は第三号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。

つまり、簡単に言うと、役員報酬はほとんどの場合株主総会によって総額が決められると言うことである。

では次に、役員ごとの役員報酬を決めるにあたり、押さえておくべきポイントを紹介しよう。

押さえておくポイントは二つである。

毎月同額(定期同額)であること

役員報酬の変更は、会社設立時(翌期以降は事業年度開始)から3ヶ月以内のみ可能

毎月の役員報酬の金額が自由に変更できると、決算前に会社の利益を調整できてしまうため、このような役員報酬のルールが定められている。ですから、スタートアップ経営者の場合は、まず役員報酬は毎月同額であること把握しておく必要があるので注意。

3ヶ月でルールを守らなかった時は?

ここで気になるのが、3ヶ月でルールを決めなかった時はどうなるのかということだ。結論から言うと3ヶ月経った後でも変更することが可能だ。しかし、その際は、ペナルティを支払わなければならない。

では、どんなペナルティなのだろうか。

具体的には、事業年度開始から3ヶ月経過後に株主総会(社員総会)で「役員報酬の増額改定の決議」が行われた場合、増額した部分が法人税の計算上で経費(損金)として認定されない。例えば、毎月100万円の支給額としていて、途中130万円に増額した場合、増額した30万円は経費として認定されないと言うことである。

では、逆に減額した場合はどうなるのか。減額した場合も増額した場合の計算と同じである。例えば、毎月100万円の支給額を70万円に減額した場合、減額した30万円は経費として認められないと言うことである。

3ヶ月のルールが例外とされる場合はあるの?

先程述べたように3ヶ月のルールというのは大事である要素だ。しかし、例外として認められるケースというのは存在する。そのケースとは大きく分けて2つである。

1.昇進したとき

昇格によって業務への権限と責任が増すことによる実態を鑑みて、増額できるということだ。ですから、実際は権限が上がっていないような、形式的に役員の肩書を変更しても増額は認められないので、注意だ。

2.やむを得ない状況で減額したとき

病欠や懲戒など、やむを得ない自体が発生した場合には、減額が認められる。ニュースなどで見ることがあると思うが、懲戒処分で何ヶ月間か役員報酬カットというのはこれが認められるからだ。その他には、後継者に代表取締役の地位を譲って、自分は相談役などになり一線を退く場合には、職責の変更による減額が認められるのだ。

このように、変更が認められるケースがあるので、変更したいと考えている人は例外として認められるケースというのを押さえておこう。

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役員報酬と取締役会

役員報酬を決める手続きについては、会社法や法人税法などで規定されているのだ。よって、代表取締役だとしても、独断で役員報酬を変えることができないということである。

これまで、株主総会で役員報酬の総額を決める所まで解説してきた。今回のフェーズでは、総額の範囲から、役員ごとに報酬金額を決めるまでの説明をしていこう。

取締役会では、株主総会で決まった役員報酬の総額金額を役員ごとに報酬金額を設定することを決める。

その際、議事録の作成を必ずしなければならない

実際に決まった金額は、事前確定届出給与に記し、税務署にて提出することが必ず必要となっている。

また、事前確定届出給与の届出の提出期限は次のように定められている。

  • 通常の場合 ・・・次のいずれか早い日・株主総会等の決議をした日から1か月以内・会計期間開始の日から4か月以内
  • 新設法人の場合・・・設立の日以後、2か月以内
  • 臨時改定の場合・・・事由が生じた日から1か月以内
  • 業績悪化改定の場合・・・変更に関する決議をした日から1か月以内

このように、所定の書き方で税務署に提出することで、役員報酬を全て設定することができるようになっているのだ。

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税理士・公認会計士からコメント

役員報酬に関しては税務調査でも必ずみられる箇所になりますので、その額や支給時期に関しては慎重に決定する必要があります。定期同額給与のように一度金額を決めたらしばらく変えられないなど、計画的に方針を決める必要があるからです。一方で、特に完全オーナー会社の場合には法人税と役員個人の所得税のバランスを見ながら役員報酬を決定したり、事前確定届出給与など適切な時期に手続きをすれば節税ができる箇所でもありますので、この点に関しては全体的なバランスや方針について顧問税理士と相談されることをお勧めします。

2020年6月7日経営者の課題と解決策