ややこしい?ストックオプションの会計処理方法とは

2020年8月4日

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会社全体の業績と連動する長期的なインセンティブとして、近年よく利用されているストックオプション制度。社員のモチベーションアップにつながるが、会計処理がややこしく手間は増えると敬遠している経営者も多いだろう。そこで今回は、正しい会計処理ができるようにストックオプションの会計処理方法に関して概要をまとめていく。

本記事を読むメリット

  • 正しいストックオプションの会計処理方法を理解出来る

ストックオプションに関して

ストックオプションとは、会社法で定められた「新株予約権」のこと。会社が従業員や取締役に対して、会社の株式をあらかじめ定めた価額である「権利行使価額」で将来取得する権利を付与する。つまり、会社全体の業績と連動する長期的なインセンティブ制度である。

会社の従業員や取締役は会社の発展に貢献し、その見返りとして権利行使による利益を得られる。あらかじめ定められた金額と市場での株価との差額が大きくなるほど、得られる利益は大きくなる。

例えば、現在の株価が500円の会社が、取締役や従業員に対して「今後5年間はいつでも500円で1000株まで当社の株を買える」というストックオプションを付与したとする。3年後、取締役や従業員の頑張りで業績が上がり、株価は1000円にまで上昇。ストックオプションを付与された取締役や社員は500円で1000株まで購入できるため、100万円の価値がある株を50万で手に入れられる。つまり、権利を行使すると差額の50万円を収益として得られる。

株式を自由に売ることができなければ、付与された側にメリットがあまりない。また成熟した起業は、株価が短期間で大きく上昇することはほとんどない。そのためストックオプション制度を有効に活用できるのは、既に上場している企業、もしくは将来的に株式上場を目指すベンチャー企業である。資金に余裕が無くても導入できるインセンティブ制度であり、特に創業初期のベンチャー企業から注目を集めている。

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ストックオプションの会計処理方法 まとめ

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 ストックオプションは、どのように会計処理していくのか。ここでは、以下の前提条件のもと会計処理方法をご紹介する。

  • ストックオプション発行額総額1,000円(新株予約権1個)
  • ストックオプション1個につき発行する株式は2株
  • 権利行使価額は1株当たり2,000円

ストックオプションの会計処理では、「株式報酬費用」勘定と「新株予約権」勘定を使用する。

発行時(発行者)

報酬のうち、ストックオプションに対応する金額を『新株予約権』(純資産)勘定で処理するとともに、人件費の一部前払いと考え同額を「株式報酬費用」として計上する。ストックオプション付与時は、退職予定者を除いた金額を計上する。総額ではなく、1年分の金額のみ計上する。

借方金額貸方金額
株主報酬費用1,000新株予約権1,000

権利行使時(発行会社)

発行時の金額と行使時の払込額(行使価額)の合計を資本金勘定に振り替える。

借方勘定科目金額貸方金額
新株予約権1,000資本金5,000
当座預金4,000

行使期間満了時(発行者)

失効分を「新株予約権」勘定から「新株予約権戻入益」(特別利益)勘定に振り替える。

借方金額貸方金額
新株予約権1,000新株予約権戻入益1,000
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ストックオプションの税金に関して

ストックオプションの税金は、どのように課税されるのか、節税する方法はないのか、気になるところ。ここでは、ストックオプションの税金に関して紹介する。

「税制非適格ストックオプション」と「税制適格ストックオプション」がある

ストックオプションは、原則として2回課税される。1回目は権利行使時に、行使時の時価が権利行使価額を上回っている部分に対して「給与所得」として課税。2回目は株式売却時に行われ、売却価額と権利行使時の時価との差額部分について、「譲渡所得」として課税される。

しかし一定の条件を満たした場合は、税制の優遇措置を受けられる。ストックオプションは、この税制の優遇措置を受けられる「税制適格ストックオプション」と税制の優遇措置を受けられない「税制非適格ストックオプション」の大きく2つに分類される。「税制適格ストックオプション」は、権利行使時に課税されず、課税は1回のみとなる。

税制優遇措置を受けるための要件

税制優遇措置を受けるためには、以下の全ての要件を満たす必要がある。

付与対象者について

  • ストックオプションの付与対象者が下記のいずれかに該当すること(ただし、未公開会社で発行済株式の3分の1超を保有する等の大口株主や、その配偶者等の特別関係者は除く)
  • 自社の取締役、執行役または使用人およびその相続人
  • 発行株式総数の50%超を直接または間接に保有する法人の取締役、執行役または使用人およびその相続人

権利行使期間について

  • 付与決議の日後2年を経過した日から付与決議の日後10年を経過するまでの間であること

権利行使価額について

  • 権利行使価格が、ストックオプションについての契約締結時の1株あたりの価額以上であること
  • 権利行使価額が年間1,200万円を超えないこと
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