センスのある起業家が使いこなす【ストックオプション制度とは?】

2020年8月4日

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勉強でも仕事でも、人間は目の前にご褒美があると頑張れる。どれだけ頑張っても得られるものが何もなかったら、頑張る意味を見失ってしまいがちだ。そこで従業員のモチベーションを高めるために効果的なのが、ストックオプション制度。今回は、ストックオプションの概要から具体的なストックオプション制度の設計手順、メリットデメリット、会計処理の際の注意点まで、網羅的に解説していく。

本記事を読むメリット

  • 従業員や創業メンバーへのインセンティブとして設計されるストックオプション制度の概要と正しい使い方が分かる

そもそもストックオプションとは?

ストックオプションとは、会社法で定められた「新株予約権」のことを指す。

「株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいう。」

会社法第2条21号

会社が従業員や取締役に対して、会社の株式をあらかじめ定めた価額である「権利行使価額」で将来取得する権利を付与する、会社全体の業績と連動する長期的なインセンティブ制度。会社の従業員や取締役は会社の発展に貢献し、その見返りとして権利行使による利益を得ることができる。あらかじめ定められた金額と市場での株価との差額が大きくなるほど、株式を取得した社員が得られる利益は大きくなる。

株式を自由に売ることができなければ、付与された側にメリットがあまりない。また成熟した起業は、株価が短期間で大きく上昇することはほとんどない。そのためストックオプション制度を有効に活用できるのは、既に上場している企業、もしくは将来的に株式上場を目指すベンチャー企業である。

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ストックオプション制度の設計手順

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ストックオプションを有効に活用するためには、導入前に将来的なシミュレーションを行いながら、資本政策や人員計画等も考慮に入れつつ入念に設計しておくことが大切だ。ストックオプション制度を導入した後に設計を修正するのは難しいケースも多い。また設計に不備があると、インセンティブ制度として機能しなくなるだけでなく、会社の発展にマイナスな影響を及ぼしてしまうこともある。

発行済み株式総数に対する比率、付与対象者、発行価額、権利行使可能になるまでの期間などを、よく検討して具体的に決定しておこう。経営、法務、会計などさまざまな専門知識が必要となるため、弁護士や公認会計士といった専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめする。

設計が済んだら、下記の流れでストックオプション制度の導入を進めていく。

  • 募集事項の決定と通知
  • 総額引受方式による手続
  • 新株予約権原簿の作成と新株予約権の登記

ストックオプションのメリットデメリット・注意点

社員のモチベーション向上に効果的なストックオプションだが、適切に導入しないと効果を発揮しないこともある。そこでここでは、ストックオプションのメリット・デメリット、注意点をご紹介する。

メリット

ストックオプションを導入する大きなメリットは、付与された従業員や取締役のモチベーションの向上である。いくら頑張っても目に見える成果が何もないと、モチベーションを維持するのは難しい。ストックオプションを導入すると、自社の株の価値が上がれば、自己の報酬に直結する。自ずと株主価値・企業価値の向上に意欲的になれる。またストックオプションは現時点で資本が少なくとも導入できるため、将来的なインセンティブを絡めて優秀な人材を集められる。

従業員にとっては、自己資金で直接株式を保有するよりもリスクが少ないのがメリットだ。直接自社の株式を保有した場合、株価が下落すると損失となってしまう。しかしストックオプションなら、株価が上がった場合のみ権利を行使して利益を得られるため、損することはない。

デメリット

ストックオプションは導入の際の設計が重要であるとお伝えしたが、この設計が不十分だと経営にとってマイナスな影響が生じてしまうリスクがある。また、経済全体の影響で、取締役や従業員がどれだけ頑張っていても株価が上昇しない状況に陥ってしまうこともある。このような環境下では、せっかくストックオプションを導入していてもモチベーションを保てない。

ストックオプションを付与する基準が不明確だと、ストックオプションを得ている従業員や取締役と、そうでない従業員や取締役の間で不公平感が生まれ、従業員のモラルの低下が起きる可能性もある。会社業績への貢献度、勤続年数などから、ストックオプション付与対象者の基準を明確にしておく必要がある。

またストックオプションの権利行使後に、社員が離れてしまうことも。採用の際はストックオプション制度のみを全面に押し出すのではなく、権利行使後も在籍し続けたくなるようなメリットも合わせて提示しておこう。

気になるストックオプションの会計処理

ストックオプションは、原則として2回課税される。1回目は権利行使時に、行使時の時価が権利行使価額を上回っている部分に対して「給与所得」として課税。2回目は株式売却時に行われ、売却価額と権利行使時の時価との差額部分について、「譲渡所得」として課税される。しかし一定の条件を満たした「税制適格ストックオプション」だと、税制の優遇措置を受けられて課税は株式売却時の1回のみとなる。これらを「株式報酬費用」勘定と「新株予約権」勘定を使用して会計処理していく。

ストックオプションの会計処理について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてほしい。

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まとめ

今回は、ストックオプションの概要から具体的なストックオプション制度の設計手順、メリットデメリット、会計処理の際の注意点まで、網羅的に解説した。ストックオプション制度の効果を最大限発揮できるように設計し、節税対策や会計処理を行うには、ストックオプションへの理解を深めて税金や会計の専門知識が必要となる。不安な方は税理士や弁護士に相談するのがおすすめだ。

税理士・公認会計士コメント

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