要注意!!案外作れない?【法人口座開設の審査と注意点】

2020年8月4日

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創業期に準備するものの一つが、法人口座。会計管理をスムーズにし、会社としての信用を得るためには重要な役割を担う。法人口座は個人名義の口座と異なり、審査を通過しなければ開設できない。「審査がある」と聞くとハードルが高く感じられるかもしれないが、ポイントさえしっかり押さえて臨めばそこまで厳しい審査ではない。今回は、口座開設の審査とその注意点、問題解決法まで、法人口座に関してまとめて解説していく。

本記事を読むメリット

  • 法人口座開設の審査の実情や注意点の把握ができた上で実際にどのように口座開設を行っていけば良いのかが分かる

法人口座はなかなか簡単に作れないのが実情

法人口座とは、個人名義ではなく会社を名義とした銀行口座のことである。会社としての信用力を示すためには重要で、創業期に解説するのが一般的だ。法人口座がないと、税務署や取引先、融資を受ける際の金融機関などから余計な疑いをかけられてしまうこともある。また、法人口座がないと、個人の資産と会社の資産が区別しにくくなり、会計業務に支障をきたす。

このように重要な役割を担う法人口座だが、個人名義の口座のように窓口に行けば簡単に開設できるものではない。振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺では、法人を装って開設した口座が使用されるケースも多い。こうした犯罪を防ぐため、金融機関は慎重に審査を行う。審査を受けて、「実在する法人であること」「正当な理由で使用されること」などを証明されて初めて法人口座を開設できる。

実際の法人口座開設における審査の基準とフロー

法人口座の開設で用意するものは金融機関によって多少異なるが、基本的には以下の通りである。

  • 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  • 会社の定款
  • 会社実印
  • 代表者の実印
  • 代表者の印鑑証明書
  • 代表者の本人確認書類(運転免許証や保険証など身分証明書)

しかし、上記の書類等を提出しただけでは、必ずしも審査に通過できるとは限らない。金融機関によって審査の基準や方法は異なるが、大切なのは代表者と会社の信頼度を上げること。実店舗がある金融機関の場合は、銀行に直接代表者が出向いて、事業内容の説明や口座開設の申請をするケースが多い。事業内容をしっかりと説明し、今までの取引を証明するような取引先との契約書や請求書などがあれば掲示する。

創業初期の経営者が実際に行うべき注意点とは?

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創業初期の経営者はまだ実績も少ないため、法人口座を開設する上で不安も大きいだろう。そこでここでは、創業初期の経営者が注意すべき点と対策をご紹介する。

事業内容を明確にしておく

代表者自身と会社を金融機関に信頼してもらうためにまず大切なのが、事業内容を明確にすること。事業計画に曖昧な部分が多かったり一貫性が無かったりすると、行員に不信感を抱かれ審査に落ちてしまう。

事業内容を説明する際は、メインの事業に絞って掘り下げるよう心がける。メインの事業以外のことを「あれもこれもできる」と説明すると、どれが本当に行っている事業なのか不信感を抱かれかねない。特に、過度に幅広い事業内容は注意が必要である。

事業内容を具体的に伝えるために、営業計画書を参考にしながら実態をまとめよう。事業計画書、ホームページなどの資料も用意しておくと安心だ。

法人設立時の資本金は最低でも100万円を用意する

法人口座を開設する際は履歴事項全部証明書の提出が必須なため、資本金の額も掲示することになる。会社法により1円株式会社の設立は可能だが、あまりに資本金が少ないと会社経営する上で非現実的で、信用力も比例して低くなってしまう。目安として、最低でも100万円は資本金として入れておきたい。金融機関によっては、法人口座開設の資本金最低額が設定されている場合もあるので確認しておこう。

なるべく固定電話を用意する

最近は固定電話を引かず携帯電話のみでビジネスを展開する会社も多いが、法人口座の開設においては固定電話は重要視される。固定電話は、その会社がちゃんと存在して事業を営んでいることを示す一つの要因となる。メガバンクや地方銀行などの法人口座だと、固定電話を必須にしていることが多い。ネット銀行だと固定電話が不要な場合もあるので、シェアオフィスやバーチャルオフィスなどで固定電話を引かない場合はそういった金融機関を選ぼう。

 登記住所がバーチャルオフィスやシェアオフィス

法人口座の開設申し込み時に提出する登記簿謄本には、会社の登記住所が記載されている。振り込め詐欺などの特殊詐欺を防ぐために、銀行は登記住所を慎重にチェックしている。 最近は増えてきたバーチャルオフィスやシェアオフィスだが、簡単に移転できることとオフィスの実態を証明しづらいことから、審査ではマイナスになる可能性が高い。

オフィスを借りるには、それなりの費用と信用性が必要となる。きちんとしたオフィスがあれば、それだけで会社としての信用が高まる。

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法人口座開設の全体の流れを把握

法人口座を開設する大まかな流れとしては、以下の3つのステップがある。

  • 申請
  • 審査
  • 口座開設

会社設立手続きを経て会社を設立した後、金融機関に求められた必要書類を用意する。その後銀行に出向いて申請。審査が通れば口座が開設されるといった流れだ。法人口座の開設審査は約1~2週間ほどかかり、さらにそこからキャッシュカードの発行までも時間がかかる。実際の取引開始から逆算し、なるべくテンポよく準備を進めていこう。

困ったら税理士に相談してみよう

法人口座の開設はもちろん、創業期にはやらなければならないことが多い。資金調達をどのように計画したら良いのか、どのように創業準備を進めるのか、悩む経営者も多いだろう。金銭面で不安や疑問がある場合は、税理士に相談してみよう。

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税理士・公認会計士コメント

経営者が過去にクレジットカード、カードローン、携帯電話の分割払い、融資などの返済の延滞といった金融事故を起こしている場合、自己破綻や任意整理など政務整理を行った場合など、いわゆる「ブラックリスト」に載っている場合は銀行口座の開設は非常に難しくなります。また仮に開設できたとしても融資をとるのはさらに難しくなり事業継続が出来なくなるのが現実です。メガバンク、ネットバンク、地方銀行など様々な銀行でその基準は異なりますが、口座開設がどうしてもできない場合は「ブラックリスト」に載っていないかを各信用情報機関に開示請求してみるのも一つの手かと思います(全国銀行個人信用情報センター(KSC)、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、株式会社日本信用情報機構といった各信用情報機関のWebサイトに開示請求手続きがあります)。

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