債務不履行とは?分かりやすく解説!対応方法から5つの賠償事例まで

2020年12月31日

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ビジネスにおいて、「債務」、「債権」という言葉がよく使われるが、正確な意味はよくわからないという人が多い。

しかし、個人事業者であれば必ず知っておきたい内容である。

そこで、今回は「債務」「債権」「債務不履行」について、その対応方法も含めて解説する。

債務不履行とは?対処方法と仕組みを解説

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まずは債務不履行とは何か、基本的な内容を解説していこう。

「債務」とは何か?

債務(さいむ)とは、特定の人に対して金銭を払ったり、物を渡したりするなど契約した内容を実際に行う法律上の義務のことである。

(例)注文を受けた品物を納品する、借りたお金を返す、依頼された作業を行うなど

債務は借金を返す義務という意味で使われることが多いが、特定の人と交わした契約内容を行う義務という意味合いもある。

「債権」とは何か?

債権(さいけん)とは、特定の人に対して金銭を払ってもらう、または、物を渡してもらうなど契約した内容を実際に行ってもらう法律上の権利のことである。

(例)注文した品物を納品してもらう、貸したお金を返してもらう、依頼した作業を行ってもらうなど

債務と同じように、借金を返してもらう権利という意味で使われることが多いが、特定の人と交わした契約内容を行ってもらうことができる権利という意味合いもある。

「債務不履行」とは何か?

債務不履行(さいむふりこう)とは、特定の人と契約した義務を果たさないことである。

債務者は、債権者に対して契約内容を行う義務があり、債権者は債務者に対して契約内容を行ってもらうよう請求する権利がある。

特定の人と交わした契約が正確に履行されない場合、債権者は債務者に対し、損害賠償請求できる。

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債務不履行が成立する「3つのパターン」

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上記のように、債務不履行とは、簡単にいうと契約が守られないということである。約束を守らないという事態において、民法は3つのパターンに分類する。

「履行遅滞」期限の遅れたとき

履行遅滞(りこうちたい)とは、契約で決めた約束の日まで契約上の義務が間に合わないというケースのことである。

他にも契約で定めた納期までに品物を納品できないというような場合も履行遅滞となる。

「履行不能」契約の履行が不能になったとき

履行不能(りこうふのう)とは、契約上義務を果たすことが不可能になってしまったというケースのことである。

「不完全履行」十分に契約を履行できないとき

不完全履行(ふかんぜんりこう)とは、契約を果たしたものの、義務の履行が十分とは言えないケースのことである。

「債務不履行(契約不履行)」への対応

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契約不履行が生じた場合、もう片方の当事者は本来得られる利益を得られなくなるため、大きな損失となる。そこで民法では、契約不履行が生じた場合に権利者が実行できる対処法を3種類定めている。

1.強制執行

強制執行(民法第414条)とは、裁判所の力を借り、契約を強制的に履行させる方法である。

強制執行は下記3つの方法に大別される。

  • 直接強制:裁判所が直接債務者に契約内容を実現させる方法
  • 代替執行:債権者もしくは第3者が債務者に代わって契約内容を実現しその費用を債務者から取り立てる方法
  • 間接強制:裁判所が債務者に罰則や罰金を課すことをにおわせ、契約を 履行させようとする方法

2.契約の強制解除

契約の解除(民法第540条~第548条)とは、当事者の片方が一方的な意思により、契約内容を無効にすることである。

履行不能の場合は特段の手続きなく一方的に解除することが可能であるが、履行遅滞の場合は、あらかじめ催告を行わないと一方的に契約を解除できないため注意が必要。

3.損害賠償の請求

損害賠償請求とは、契約不履行によって生じた損害について、債務者に対して原則金銭にて補填するように請求することである。

契約不履行で損害賠償を行うには、民法415条で定められた下記3つの要件をクリアしなくてはならない。

  • 債務不履行(契約不履行)が生じている。
  • 損害が発生している。
  • 債務不履行と損害発生の間に因果関係がある。

その時の因果関係は「相当因果関係」に限定される。

(債務不履行によって発生したことが「相当」と言える範囲に 限定される。)

反対に以下のようなケースの場合損害賠償請求は認められない。

  • 損害がない
  • 故意や不履行と損害に因果関係が認められない
  • 債務の不履行と損害に因果関係が認められない。

債務不履行に関する2つの注意点

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ここでは、債務不履行に関する注意点について2つに分けて解説していきたい。

損害賠償の請求には「時効期限」がある

損害賠償請求には時効があり、時効までの期間は通常一般の場合は、債務不履行に基づく損害賠償請求権の時効は10年である。

これに対し、商事債権の場合には、債券の履行を請求できるようになった時点から5年となる。

商事債権とは、営利目的を持った企業や個人(商人)が債権者となっている場合や、取引内容が商事性を持つ場合の債権のこと。

損害賠償請求権の時効については、その期間をいつからカウントするのかも問題である。このような、時効のカウントを開始する時点のことを、時効の起算点といいます

債務不履行にもとづく損害賠償請求権の場合、時効の起算点は、債権の履行を請求できるようになったときで、通常は債務の履行日である。

例えば、物の引き渡しをする契約をする場合には、約束した引き渡し期日が時効の起算点である。

請求できる期限が過ぎてしまうと、損害賠償請求権は消滅し、損害を賠償してもらうことができなくなるということである。

「口約束でも」債務不履行が成立する可能性がある

契約書がなかったとしても、特定の人同士で約束を交わした時点で契約が成立するケ-スが多く、たとえ口約束だったとしても、行うべき約束(義務)が果たされない場合は、債務の不履行は成立する。

契約書とういう形で証拠を残しておくと、後々トラブルになることは少なくなる。

実際に債務不履行で損害賠償請求が行える事例

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ここでは、実際に債務不履行で損害賠償請求が行える事例について解説していきたい。

不履行事例1.「支払いの遅滞」

遅延損害金とは、金銭債務の履行遅滞になったとき(お金を約束の期間内に支払わなかったとき)に発生する損害賠償金のことである。

お金を支払う約束をしたときに、支払い期日までに支払いをしなければ「遅延損害金」が発生する。

お金の支払い債務において、履行不能(履行ができなくなること)にはならないと考えられ、支払いをしない限り、遅延損害金が発生し続ける。

不履行事例2.「不動産の引き渡し」

債権者と不動産の売買契約をしたとき、その不動産が他人所有の場合や、二重譲渡で他人に売却してしまったりした場合には、約束通りの義務の履行ができなくなって履行不能となり、損害賠償請求される。

不履行事例3.「二重譲渡」

在庫が一つしかないある商品を二重に売却して、約束通り引き渡すことができなくなってしまった場合、履行不能となって損害賠償をされるおそれがある。

また、その商品が壊れている場合や二重譲渡していなくても、約束の期日までに引き渡しができなかったら、履行遅延となるので、これも損害賠償請求されるおそれがある。

不履行事例4.「引っ越し中の物損事故」

引っ越し作業が作業を依頼され、引っ越し自体はしたけれど、作業中に物を壊してしまった場合には不完全履行となり、引っ越し業者は壊れた物についての損害賠償請求をされてしまう。

或いは、引っ越し当日に業者が現地に行かず、作業をしなかった場合は履行遅延となり、引っ越し作業日がその日から遅れると契約の意味が無くなる場合は、履行不能となることもある。これらの場合、どちらの場合でも、引っ越し業者は損害賠償請求される可能性がある。

不履行事例5.「販売品の納期遅滞」

ある中古の自動車2台を売却する契約をしたとする。このとき、期限までに中古の自動車の引き渡しをしなければ、履行遅滞となって損害賠償請求されてしまう。

また、期限までに引き渡しをしたとしても、2台の自動車のうち1台が故障し走行不能となっていたら、不完全履行となるので、やはり損害賠償請求をされることになる。

まとめ:債務不履行は賠償問題になるケースも、早期解決が重要

債務の不履行によって損害を与えてしまったり、損害を受けてしまったりした場合は示談交渉から始める。

示談交渉で問題が解決しない場合は、最終的には法的手段で賠償責任を請求することになる。

債務の不履行によって損害賠償責任や損害賠償義務が生じてしまい、うまく進められない場合は弁護士などの法律の専門家に相談することをおすすめする。

債務不履行にもとづく損害賠償請求権には時効あるが、権利を取得したら、早めに相手に請求をして、賠償金の支払いを受けるべきである。

時間が経過してしまうと、さらにこじれてしまう可能性が高くなるので、できるだけ早く相談するようにしよう。

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監修税理士・公認会計士からのコメント

債務不履行というのは特定の契約が履行されないことを言います。債務不履行の場合は損害賠償にもなることがあります。債務不履行になってしまたら早めに解決を目指すことをおすすめします。

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Posted by taxtech-editor