中小企業が受けられる助成金・補助金には何がある?

2020年12月17日

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中小企業が申請できる補助金・助成金についてどのくらい知っているだろうか?

中小企業向けの補助金・助成金は実にさまざまな種類がある。

上手く利用すれば資金繰りや事業計画の面でかなり役立つ収入源となるので、中小企業の経営者や、これから起業したいと思っている方には必須の知識だ。

この記事ではそんな中小企業向けの補助金・助成金について解説する。

補助金・助成金とは?中小企業経営者におすすめする理由

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補助金と助成金とは、国や自治体から受給できる返済不要のお金のことだ。

しかし補助金は”必ず審査があり、それを通過した場合に受給できるお金”で、助成金は”条件を満たしていればもらえるお金”という違いがある。

ただどちらも返済義務のないお金なので、受け取ったお金はそっくりそのまま事業に使ったりして会社の経営に役立てることができる。

銀行から借り入れたりすると返済や金利のことを考えなければなりませんが、補助金や助成金はその必要がない。

なので経営者からすると非常にありがたい収入源と捉えることができる。

補助金・助成金の知識があるかどうかは、会社の経営をスムーズにする上でとても重要になるので、必ず覚えて置くようにしよう。

助成金を受給する要件とは

助成金とは、”企業がある目的を達成するために支給されるお金”のことだ。

なので助成金を受け取るための要件には、「うちの会社はこういう目的を達成したいんです」と言えるような環境を整えるというものがある。

例えば、

・派遣社員を正社員として雇用する

・育児休暇の日数を増やす

・高齢者や障碍者の雇用を増やす

・社員全員の健康診断を促進する

などだ。

社員のキャリアアップや労働環境の改善などに助成金が出るので、労働環境を整えて社員のモチベーションを上げつつ、お金を受け取れる。

中小企業は人数が少ない分、社員一人一人の負担が大きくなりがちなので、そこを改善するために助成金が出る。

助成金の申請には、事業計画書の提出や就業規定の改訂などが必要にあることもあるので、ご自身の会社で受け取りたい種類の助成金の受給条件は常にチェックするようにしよう。

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補助金や助成金を受給するメリット

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補助金や助成金を受給すると、金銭的なメリットはもちろん社会的なメリットもある。

ここからは補助金・助成金を受け取る”4つのメリット”について解説する。

返済の必要がない

補助金や助成金は返済義務のないお金だ。

そして助成金の場合、受給したお金の使い道はその会社に任されている。

会社の運転資金や借り入れへの返済、設備投資など何に使用しても構わない。

返済のことを考えなくていいお金というのは、キャッシュフローを考える面でもかなりのプラスになる。

きちんと評価された企業だと見られる

補助金を受け取るには書類や面接での審査がある。

なのでそれを通過して公的に補助金を受け取るというのは、「第三者から評価された」と社会的に認められたことになる。

そして助成金は社員のキャリアアップや労働環境の改善が達成されると思われる企業に支払われるので、「きちんと労働基準法を守っている会社」と判断される。

このことで後々の融資や、他の補助金・助成金を申請する時にプラスに働くことがある。

種類が多いので複数活用できる

調べてみればわかるが、補助金や助成金の種類は数えきれないほど多くある。

なので自分の会社で受給できそうなものが複数あれば、組み合わせて受給すればかなり会社の経営の助けになる。

使い道も自由なので、事業の段階に沿って受給できそうなものはとにかく申請し、資金調達に役立てよう。

資金繰りがやりやすくなる

受給できることが決まると、よほどの変更や書類のミスがなければ支給時期と金額がしっかり確定する。

「この日にこれだけのお金が入ってくる」とはっきりわかっていると、資金繰りやキャッシュフローが考えやすい。

外的な要因に左右されない確実性のあるお金なので、金銭面を安定させることができる。

今すぐ使える中小企業経営者におすすめの助成金

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どの助成金を受給するかは、自分の会社の経営環境を考えてそれに合うものを選択するべきだ。

しかし助成金の数があまりにも多すぎて、「どの助成金を選んだらいいのか分からない」「数が多くて見るのもげんなりする」ということもあるだろう。

そこでここからは、中小企業経営者におすすめの助成金を8つ、紹介する。

トライアル雇用奨励金

トライアル雇用奨励金は、社会経験が少なく技術や知識が不足している人を試用期間を設けて雇用した事業者が受給できる。

試用期間が終われば、企業はその人をそのまま雇用することも可能だ。

企業にとって人件費は一番のコストで、労働者にとっても入社した会社をすぐ辞めてしまうと経歴に傷がついてしまう。

しかしこのトライアル雇用奨励金を利用すれば、企業も労働者も”お試し期間”を設けることができるので、雇用のミスマッチが起こりにくい。

トライアル雇用奨励金は対象者1人に付き月額最大4万円まで、最長3カ月に渡って受給できる。

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、厚生労働省が設けた条件に沿った従業員を雇うと受給できる助成金のことだ。

例を挙げると、

・3年以内の既卒者や中退者

・65歳以上の高齢者、障害者、シングルマザー、発達障害者

・生活保護受給者

などがある。

すべてを挙げて解説していくと長くなってしまうのですが、上記のようないわゆる”就活や転職活動に不利な方”を雇い入れると、助成金の給付対象になることがある。

特定求職者雇用開発助成金は、7つのコースに分かれており、助成金対象になる従業員の条件が異なるのでチェックしておこう。

職場定着支援助成金

職場定着支援助成金は、従業員の離職率を下げられるようにする取り組みへの支援金だ。

人材の定着や確保、魅力ある職場づくりが目的の助成金で、4つのコースに分かれている。

最も重要視されるのが”職場への定着”で、「評価・処遇制度」「研修制度」「健康づくり制度」「メンター制度」「短時間正社員制度」の5つの項目によって社内の雇用管理制度が評価される。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、派遣社員や契約社員などの有期契約の従業員を正社員として雇用したり、昇給などの取り組みを行った事業者に対して支給される助成金だ。

非正規社員の正社員雇用、賃金規定の改定、健康診断制度の導入などが対象になる。

キャリアアップ助成金は、働き方改革など時代の流れの影響を受けて内容が変化しやすい助成金である。

なので受給できるコースも、前年から変わっている可能性があるので公式サイトなどでチェックしておこう。

従業員の働きやすさやキャリアアップのためのモチベーション維持など、労働環境の質を高めれば

その企業の業績も大きく上向いていく。

そこに対して支払われるのが、このキャリアアップ助成金ということだ。

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人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、労働者に職業訓練開発をした際、その経費や賃金を一部負担してくれる助成金である。

平成28年度まではキャリア形成促進助成金という名前だったが、翌平成29年度より人材開発支援金という名前に変更された。

対象となる職業訓練には、

・労働生産の向上につながる訓練

・若手労働者のスキルアップを目的とした訓練

・熟練技能者の指導力強化や技能継承を目的とした訓練

・海外関連の事業に従事する労働者を対象にした訓練

・建設、情報通信業を対象に厚生労働省の認可を受けた訓練

などがある。

人材開発支援助成金は4つのコースに分かれているので、どのコースなら受給できそうか最適なものを選ぶようにしよう。

両立支援等助成金

両立支援等助成金は、労働者が仕事と育児・介護などを両立できる環境づくりへの助成金である。

特に仕事と育児の両立は、女性が社会で活躍するために大きなハードルとなっている問題で、

少子高齢化の日本では介護と仕事を両立させたい、という方も多いだろう。

優秀な人材の確保・定着や、そのキャリアを生かす上で重要な問題ですので、そこに対しての支援金となります。

全部で6つのコースに分かれており、

・育児と仕事の両立

・介護と仕事の両立

・妊娠、出産、育児、介護で職場を離れた人の再雇用

・育児休業等支援

・女性管理職が基準値以上

などが条件で受給することができる。

ものづくり・商業・サービス新展開補助金

ものづくり・商業・サービス補助金は、新製品・サービス開発や生産プロセス改善等のための設備投資を支援する助成金だ。

補助の上限は1,000万円、または3,000万円と他の助成金に比べてかなり高額なので、中小企業にとってはかなり大きな設備投となる。

機械装置やシステム構築費だけでなく、運搬費や外注費、専門家経費、クラウドサービス使用日、原材料費も助成対象としてみなされることがあるので、幅広い費用をまかうことができる。

ただ、交付の下限が100万円と決まっているので、200万円以上の大きな買い物をする必要がある。

創業・事業承継補助

創業補助金は、創業時に必要な経費の一部を国や地方公共団体が負担してくれるものだ。

2018年度から「地域創造的起業補助金」という名前になり、起業を補助することで新たな需要や雇用を生み出し、経済を活性化させることを目的としている。

そして事業承継補助は、中小企業の後継者が最大1200万円の補助金を受給できるものだ。

事業を承継したり、M&Aなどをきっかけに新商品や生産ライン、既存の販路の見直しなどを行う費用が対象になる。

後継者不足で廃業する中小企業を減らすために、後継者を支援する補助金ということだ。

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補助金・助成金の活用事例

どんな補助金・助成金があるかを見たところで、次は実際に事業者がどのようにして活用したかを紹介する。

これから挙げるモデルケースのうち、自分も同じことができそうであれば、実際に行動に移して申請すれば補助金・助成金を受給できる。

資金繰りを楽にするためにも、事業者がどのようにして受給しているかを見ていこう。

診療所の新規開業

医師がクリニックを開業する時、専門の設備などで5,000万円以上の投資が必要になったケースだ。

その時に地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)を利用して助成金を受け取っている。

地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)は、その地域に住んでいる求職者を雇い入れる事業者に対して支給される助成金のことだ。

これを利用して地域住民を雇用し、その助成金を設備投資に回している。

地域住民の雇用に対して支給された助成金でも、助成金の使途は自由なのでこうして設備投資に回すこともできる。

障害者の雇い入れ

新しく従業員を雇い入れたいと思い、ハローワークに求人を出した時に障害者の方から応募があり、そのまま雇用して障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)を受け取ったケースだ。

障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)は、障碍者雇用の経験がない中小企業が初めて障害者を雇用した時支給される助成金である。

このケースでは障害者の方を雇用した結果、障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)以外にも特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用奨励金も同時に受給することができている。

高齢者の雇い入れ

ハローワークで介護職の求人をしたとき、62歳の高齢者から応募があったケースだ。

60歳以上65歳未満の高齢者や障害者などの就職が困難な方を、ハローワークや民間の職業紹介事業者などと通じて雇用すると、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)が受給できる。

これによって賃金の一部が助成してもらうことができる。

介護職の場合、高齢者を雇うと介護施設利用者と年齢が近く、コミュニケーションがスムーズになったという副次効果もあったようだ。

シングルマザーの雇い入れ

母子家庭の母親を雇用した場合も、先ほどと同じく特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)を受給できるケースがある。

シングルマザーも就職困難者とみなされるので助成金対象となる。

この他にもトライアル雇用奨励金などと組み合わせて併給できる場合もある。

契約社員を正社員に雇用

契約社員を正社員として雇用して、キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)を受給したケースだ。

キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)は契約社員や派遣社員などの有期契約労働者を、事業者が直接雇用することで受給できる助成金だ。

自分の会社で働いている有期契約労働者の中で、優秀な人材がいれば直接雇用することで助成金を受給しつつ人材確保ができる。

育児休業者の代わりの社員を雇用

育児休暇の取得者が出た場合、同一の職務、同一の労働条件で代わりの人を雇い入れて、両立支援助成金 中小企業両立支援助成金(代替要員確保コース)を受給したケースだ。

育児休暇所得者の代替要員を雇い、その後育児休暇取得者を職場に復帰させることで受給できる。

労働者自身に助成金があることは知っていても、事業者にも助成金があることは知らなかった、というケースが意外と多いのでチェックしておきましょう。

補助金・助成金を申し込む時の注意点

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補助金・助成金は返済義務がなく便利だが、申請するうえでいくつか注意点がある。

それは、補助金や助成金は基本的に「後払い」になっているので、申請してすぐにお金が受け取れるわけではないということだ。

また、基本的には先着順なので「後で申請しよう」なんて考えていると先着から漏れて、受給できなくなってしまうなんてこともある。

受給できそうなものがあったら早めに申請しておこう。

そして労働法令に違反している会社は、助成金が受給しにくくなっている。

例えば、従業員が10人以上なのに就業規則を届け出ていない、残業代が未払い、三六協定を提出していないなどだ。

ついうっかり忘れていた、なんて場合でも労働法令違反とみなされると助成金が受給できなくなるので、

社内の整備はしっかりやっておこう。

助成金だけでなく”中小企業の支援政策”もチェック

中小企業の支援は、助成金以外にも様々な政策がある。

例えばコロナウイルスの影響で、昨年度から売り上げが減少した分を最大200万円まで給付してくれる「持続型給付金」や、事業者の家賃を3ヶ月分、持続型給付金に上乗せしてして受給できる「東京都家賃等給付金」など。

その時の環境や情勢に合わせて新しい中小企業支援政策が出てくることもありますので、支援政策は助成金の情報は常に追いかけておくとよいだろう。

まとめ:助成金を活用して経営をスムーズに

補助金や助成金はただ返済義務のないお金が受給できるだけでなく、会社の労働環境を改善できるきっかけにもなる。

従業員の生産性向上やモチベーションアップなどにもつながりますので、積極的に活用しよう。

受給には社労士との相談や書面作成が必要になるケースがほとんどなので、「今うちの会社が受給できる助成金は何か?」というのを打ち合わせしながら、会社の経営に役立てていただきたい。

監修税理士・公認会計士からのコメント

中小企業は助成金や補助金を受け取ることで、資金繰りが改善されることもあるため申請できるものは確認しておくのがおすすめです。補助金や助成金は雑収入として会計処理されますが、わからない点がある場合は税理士に相談するのがおすすめです。

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2020年12月17日起業準備

Posted by taxtech-editor