【税理士監修】ふるさと納税確定申告のやり方!ワンストップ特例制度も解説

2020年9月6日

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「今は離れて住んでいるけれど、生まれ育った土地を応援したい」「特産品を楽しみながら節税したい」など、さまざまなニーズに応えてくれるふるさと納税。ふるさと納税で税金の控除を受けるためには、確定申告が必要だ。そこで今回は、ふるさと納税と税務申告・ワンストップ特例制度、具体的な手続きの流れに関して解説していく。

本記事を読むメリット

  • ふるさと納税の確定申告の具体的なやり方からワンストップ特例制度まで網羅できる

ふるさと納税とは?どういう制度?

ふるさと納税とは、都道府県や市区町村など好きな自治体に寄付を行い、控除上限額内の2,000円を越える部分の税金が控除される制度。「納税」という名前だが、実際は税金ではなく「寄付」である。寄付のお礼に自治体から、お米やお肉、野菜、果物など地域の特産品を「返礼品」として受け取れる。

税収の減少に悩む自治体や、地方間の格差の問題を解決するために、2008年からスタートした。2018年には過去最高となる控除適用者数が約395万人、そしてふるさと納税額は約5,127億円まで増加し、認知度が高まっている。

確定申告とは?

ふるさと納税による税金控除を受けるためには「確定申告」をする必要がある。確定申告とは、1年間の売上から経費を差し引いた「所得」をまとめ、所得にかかる税金を計算し、国に納めるべき税額を報告する手続きのこと。以下の条件に1つでも当てはまる方は、確定申告をしなければならない。

  • 1月1日〜12月31日の間に寄付をした自治体数が6自治体以上ある方
  • 寄付をした自治体すべてにワンストップ特例の申請書を提出できなかった方
  • 給与所得者でかつ高額医療費の支払いがあり、医療控除などの申告が必要な方

上記以外でも、以下の条件にひとつでも当てはまる方はふるさと納税を行っていなくても確定申告が必要になる。

  • 個人で事業を行っている方や不動産収入がある方
  • 不動産や有価証券・会員券などの売却益や譲渡益などがあった方
  • 2,000万円以上の給与所得があった方
  • 2カ所以上の会社から一定額の所得がある方(年末調整をされなかった給与の収入金額と、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円を超える)
  • 医療費控除や住宅ローン控除を受ける方

年間2,000万円以下の給与所得者で、他の収入や医療費などの控除申請がなければ必ずしも確定申告をする必要はないが、ふるさと納税による控除が受けられなくなるため注意が必要だ。その場合は後ほど詳しくご紹介する「ワンストップ特例制度」を利用すると、確定申告をしなくても控除を受けられる。

法人の場合の確定申告について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてほしい。

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ふるさと納税のメリットとは

ふるさと納税には、以下のようなメリットがある。

様々な地域に寄付ができる

ふるさと納税の最大のメリットは、本来の目的である「ふるさとを応援できる」ことだろう。ふるさとと言っても、ふるさと納税では自身の出身地に限らず、全国の自治体から好きな地域を選んで寄付ができる。被災地や観光して好きになった地域、学生時代に住んでいた地域など、自分が応援したい地域を寄付という形で応援できるのが魅力だ。

返礼品がもらえる

ふるさと納税で寄付すると、自治体からお礼として返礼品がもらえる。返礼品はお肉や果物などの地域の特産品をはじめとし、便利な家電製品や食事券、宿泊券などもある。日本全国の自治体が多種多様な返礼品を用意しているため、欲しい返礼品から寄付する自治体を選ぶのもふるさと納税の楽しみ方のひとつだ。よりお得にふるさと納税したいなら、返礼品の還元率が高い自治体を選ぼう。還元率とは、「還元率=返礼品の販売価格 ÷ 寄付金額 ×100」で求められる返礼品のお得さを示す数値。2019年6月の制度改正により、各自治体は「返礼品の調達額(返礼率)を寄付金額の3割以下とすること」と義務付けられた。しかし市場に出回っている販売価格よりも安く調達できている返礼品だと、一般消費者にとっては還元率が3割を上回るお得な返礼品である。ふるさと納税のサイトでは還元率の高い返礼品のランキングもあるので、参考にしてみてほしい。

税金還付・控除が受けられる

ふるさと納税は寄付した金額から2,000円を差し引いて、所得税と住民税の還付・控除を受けられる。控除上限額内であれば実質自己負担額は2,000円のみで豪華な返礼品を受け取れるため、節税対策に役立つ。

寄付の使い道が選べる

ふるさと納税では、自治体によっては寄付したお金の使い道を選べるのが大きな特徴だ。通常の納税では、国民は自分が納税したお金が何に使われるのかを自分で選ぶことはできない。「せっかく支払うなら、自分の応援する事業に使われてほしい」という方は多いだろう。ふるさと納税なら、復興支援、自然保護、文化振興、まちづくりなど、自分が関心を持っている分野を選択して寄付することが可能な場合がある。地方行政に興味を持つきっかけにもなるだろう。

ふるさと納税の仕組みと控除上限金額

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お得にふるさと納税を活用するためには、その仕組みと控除上限金額についてしっかり理解しておきたい。ここでは、ふるさと納税の仕組みと控除上限金額のポイントについて詳しく解説する。

ふるさと納税の仕組み

ふるさと納税をすると、寄付した自治体から返礼品と寄付金受領書が届く。1月1日~12月31日までに寄付した金額によって、住民税と所得税に分かれて控除される。住民税は、ふるさと納税をした翌年の6月以降に納付予定の住民税から控除される。所得税は、ふるさと納税をした年の所得税から払いすぎた分が4~5月に還付される。例えば控除上限額が20,000円の人が20,000円分のふるさと納税を行った場合、住民税と所得税から合わせて18,000円分の控除を受けられる。つまり実質2,000円で返礼品を受け取れる仕組みとなっている。

ふるさと納税で受けられる控除は、大きく分けて「所得税からの控除」「住民税基本分からの控除」「住民税特例分からの控除」の3つである。

所得税からの控除は、以下の計算で求められる。

「(ふるさと納税額ー2,000円)×所得税の税率=控除額」

所得税の税率は課税所得によって異なり、課税所得が高いほど税率も高くなるよう設定されている。

控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限である。

住民税基本分からの控除は、以下の計算で求められる。

「(ふるさと納税額=2,000円)×10%=控除額」

控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限である。

住民税特例分からの控除は、以下の計算で求められる。

「(寄付金額ー2,000円)×{100%-10%(基本分)ー所得税の税率}=控除額」

住民税特例分の控除は、住民税所得割額の2割を超えない場合に適用される。

ふるさと納税は控除上限金額に注意

ふるさと納税をする上で注意したいのが、控除上限金額。ふるさと納税は寄付した金額のすべてが控除されるわけではなく、所得や家族構成によって定められた「控除上限額」から2,000円を差し引いた金額が控除される。住宅ローン控除や医療費控除など、その他の控除を受けた場合は、控除上限額は低くなる。目安として、医療費控除との併用によってふるさと納税の控除上限額が少なくなる金額は、医療費控除額の2%から4.5%程度と言われている。多額の医療費控除を利用して所得税率の区分が下がると、よりふるさと納税の控除額に与える影響は大きくなる。

控除上限金額は複雑な計算式で求められるため、自分で計算するのは難しい。そのためふるさと納税の各サイトでは、自分の控除上限額をシュミレーションすることができる。控除上限額は寄付した年の12月末までの所得で決まるため、寄付する時点で正確な金額は算出できないが、現状の給料や所得、前年度の所得などから12月末までを予想し、ある程度の目安としてシュミレーションしておこう。

ふるさと納税の確定申告 具体的な手続き

ふるさと納税の確定申告は、どのように進めたらよいのか悩む方も多いだろう。ここでは具体的な手続きについてご紹介する。

①確定申告で必要なものを用意する

ふるさと納税で確定申告を行う場合に必要なものは、以下の5つだ。

  • 寄付金受領証明書
  • 対象期間の源泉徴収票
  • 還付金受取用口座番号
  • 印鑑
  • マイナンバーカード

寄付金受領証明書とは、寄付をした自治体から送付される書類。確定申告では対象期間の全ての寄付金受領証明書が必要となる。返礼品と一緒に送られてきたり、後日別で郵送されたりと、寄付金受領証明書が送られてくるタイミングは自治体によってまちまちだ。届いたら紛失しないように、確定申告の時期までしっかり保管しておく。万が一紛失してしまった場合は、自治体によっては再発行が可能な場合もあるため、早めに寄付をした自治体まで問い合わせてみよう。

対象期間の源泉徴収票は、確定申告の項目を記入する際に使用する。印鑑はスタンプや浸透印、ゴム印は使用できないため注意が必要だ。

マイナンバーカードを持っている方は、マイナンバーカードだけで本人確認が可能である。郵送でコピーを添付する際は、表裏両方のコピーが必要だ。

マイナンバーカードを持っていない方は、番号確認書類と身元確認書類が一つずつ必要だ。通知カードや、マイナンバーの記載がある住民票の写しなど、本人のマイナンバーを確認できる書類を一つ。身元確認書類として、運転免許証やパスポートなど、記載したマイナンバーの持ち主であることを確認できる書類を一つ。郵送で提出する場合は、コピーを送付する。

e-taxで確定申告を行う場合の準備について

e-taxで確定申告を行う場合は、上記に加えて用意しなければならないものがある。e-taxの確定申告には「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2種類があり、それぞれ以下のものが必要だ。

【マイナンバー方式】

  • マイナンバーカード(住民基本台帳カード)
  • ICカードリーダライタ
  • 利用者クライアントソフト

【ID・パスワード方式】

  • ID・パスワード方式の届出完了通知(利用者識別番号と暗証番号)

マイナンバー方式で申告するなら、マイナンバーカードに対応したICカードリーダライタが必要だ。2019年以降は、NFC対応のスマートフォンでも電子証明書の読み込みが可能となった。NFCとは「近距離無線通信規格」のひとつで、かざすだけで周辺機器と通信ができる機能である。お手持ちのスマートフォンがNFC対応であればICカードリーダライタを購入する必要はなくなるので、購入前にあらかじめチェックしておこう。自分のスマートフォンがNFC対応かどうかは、設定画面の「無線とネットワーク」などから、「NFC」の記載の有無で確認できる。

マイナンバーカードを持っていない場合は、後者のID・パスワード方式がおすすめだ。運転免許証などの本人確認書類を持って税務署に行き手続きすることで、IDとパスワードを発行してもらえる。また、メッセージボックスにもID・パスワード方式の届出完了通知が格納される。

②確定申告書を作成する

確定申告の書類作成には、以下の3種類の方法がある。

  • 手書きで作成
  • 確定申告書等作成コーナー
  • 電子申告(e-Tax)

手書きで作成する場合、確定申告書は税務署で配布、または国税庁の確定申告ページでダウンロードできる。

国税庁の確定申告ページへアクセスし「確定申告書等作成コーナー」からも申告書を作成できる。「自宅にパソコンがない」という方のために、確定申告期間中は税務署のパソコンで書類を作成し、そのまま提出することも可能。初めて確定申告する方は「作成開始」を、以前確定申告をしたことがあってデータが残っている方は「保存データを利用して作成」を選択する。

電子申告(e-Tax)の場合は作成した申告書を印刷する必要がなく、そのままパソコンで送信できる。電子申告では寄付金受領証明書を提出する義務はない。しかし各自治体に寄付した金額を正確に入力しなければならないため、手元に置いて確認しながら入力すると安心だ。また、最低でも5年間は保管しておく義務がある。

③確定申告書を提出する

入力後に印刷した申告書は税務署へ郵送するか、直接持参して提出する。控用の用紙に受付印を押してもらうのが従来の方法だが、提出期限が近くなると窓口が混雑して、長時間待たなければならないことも多い。そのため財務省は現在「ペーパーレス推進税制」を進めており、郵送やe-Taxでの提出が推奨されている。税務署に行くと、窓口を通さなくても確定申告書を提出できるように専用のポストが設けられていることもある。控除の開始時期は確定申告後の1〜2ヶ月後より所得税がまず還付される。その後、住民税から控除される。

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ふるさと納税 ワンストップ特例制度 具体的な手続き

以下の条件を満たす方に限り、「ワンストップ特例制度」という簡単な手続きでふるさと納税の控除を受けられる。

  • もともと確定申告をする必要のない給与所得者等であること
  • 1年間の寄付先が5自治体以内であること
  • 申し込みのたびに自治体へ申請書を郵送していること

同じ自治体に複数回寄付した場合でも、寄付先は1自治体としてカウントされる。しかし複数回申し込んだ自治体には、同一自治体であってもその都度申請書を提出しなければならない。ここでは、ワンストップ特例制度の具体的な手続きについてご紹介する。

①必要な書類を準備する

ワンストップ特例制度で必要な書類は以下の2つである。

  • 寄付金税額控除に係る申告特例申請書
  • マイナンバーカードおよび申請者本人を確認できる書類

「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」は、寄付する際に申し込みフォームにて「自治体からのワンストップ特例申請書の送付」をチェックしておくと、寄付先の自治体から郵送されてくる。自治体へ直接連絡して申請書をもらうことも可能だ。

本人確認書類は、マイナンバーカードがあれば1枚で済む。マイナンバーカードが無い場合は、通知カードもしくは住民票と、運転免許証もしくはパスポートの2種類の書類が必要となる。運転免許証もパスポートも無ければ、健康保険証や年金手帳など、提出先自治体が認める公的書類が2点以上あれば代わりとして使える。自治体によって認められる本人確認書類は異なるので、もし該当する書類を持っていなかったり、入手することが難しかったりする場合は、自治体に相談してみよう。

②必要事項を記入する

上記の「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」の、必要事項を記入する。住所や個人番号などの個人情報から、ふるさと納税の寄付の情報などを、記入漏れがないように正しく記入しよう。

③提出期限までに各自治体へ郵送する

申請書が準備できたら、身分証明書のコピーと共に寄付した自治体へ郵送する。郵送する内容は以下のとおりである。

  • 本人確認書類の写し
  • 寄付金税額控除に係る申告特例申請書
  • 返信用の封筒・切手

同じ自治体に複数ふるさと納税した場合は、申し込んだ件数分の申請書と本人確認書類を送付する必要があるので注意が必要。マイナンバーカードのコピーを送付する場合は、裏表両面のコピーを送る。提出期限は、寄付した翌年の1月10日必着。12月にふるさと納税した場合は、なるべく早く申請書を入手して手続きを進めよう。

確定申告が所得税・住民税を還付・控除する手続きであるのに対し、ワンストップ特例制度では住民税のみが控除対象となる。ただし控除金額には、原則として差は生じない。住宅ローン控除などを利用している場合はワンストップ特例制度を利用した方が控除額が大きくなる可能性があるため、事前にシミュレーションしておくのがおすすめだ。

申請書類に不備があった場合や、期限までに書類の提出が間に合わなかった場合は、寄付先の自治体において受理されず、ワンストップ特例制度は利用できない。とは言え、すぐに控除が受けられなくなるわけではない。確定申告を行えば、住民税と所得税からふるさと納税による控除を受けられる。しかしこちらも原則3月15日までの期限があるため、遅れないように申請しよう。

ふるさと納税の確定申告・税務申告を忘れずに行うなら

ふるさと納税は画期的な仕組みではある一方、税務処理が多少複雑である。
よって多くの利用者は税理士・会計士を顧問にしたり、サポートが充実している会計ソフトを利用している。

忘れたり、抜け漏れがあって節税上損をする事なく安心して確定申告・税務申告を行うなら弊社TaxTechnologyが運営するクラウド会計ソフト10bookがオススメだ。
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是非一度検討をおすすめしたい。

1x1.trans - 【税理士監修】ふるさと納税確定申告のやり方!ワンストップ特例制度も解説

まとめ/監修税理士・公認会計士コメント

今回は、ふるさと納税と税務申告・ワンストップ特例制度、具体的な手続きの流れに関して解説した。自分の好きな自治体を応援できるふるさと納税は、節税効果を得ながら豪華な返礼品を楽しめるお得な制度。ただ納税するよりも、寄付したお金の使い道が分かるのも魅力だ。自然災害などの被害を受けた地域に、返礼品を受け取らずに寄付金で支援できるようなものもある。控除を受けるためには、確定申告またはワンストップ特例制度での手続きが必要だ。どちらの制度にも期限があるため、必要書類を大切に保管しておき、忘れずに行おう。

法人の確定申告について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてほしい。

2020年9月6日税務サポート