iDeCoの強力な節税メリット「所得控除と非課税措置」を徹底解説!
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個人型確定拠出年金「iDeCo」が節税に繋がると耳にしたことがある人も多いだろう。
しかし、具体的にiDeCoがどのような制度で誰が加入でき、なぜ税優遇されているのかなど、詳しくは分からない人が多いのではないだろうか。
これからiDeCoを始めたいと考えているのであれば、加入することでどれくらい税制優遇があるのか興味もあるはずだ。
この記事を読むことで、iDeCoの制度概要・税優遇のメリット・運用するにあたっての注意点などを理解し、自分が実際にiDeCoに加入して掛金を拠出し、運用すべきであるかどうかを検討できるようになるだろう。
目次
節税ができる年金制度「iDeCo」とは?
iDeCoとは個人型確定拠出年金の別称であり、国民年金や厚生年金に上乗せして、個人が任意で加入できる私的年金である。
証券会社や銀行などiDeCoを取り扱っている金融機関で加入申し込みを行い、毎月一定額を積み立てて投資信託などの金融商品で運用するものだ。
そして積み立てた資金は60歳以降に一時金として一括もしくは年金として分割で受け取ることができる。イメージとしては、老後のための積み立て貯金に資産運用の要素が加わった年金制度だ。
自営業者はiDeCoの恩恵がない?国民年金基金を推奨する訳
自営業者はiDeCoの利用を最優先すべきではないと考えられる。
その理由は、自営業者は勤労者と異なり、終身年金は国民年金だけの1階建てであるため、国民年金基金で終身年金の2階部分を確保するのが先決であるからだ。
また、iDeCoに比べ国民年金基金は口座管理料がかからず運用利率も高いことが多い。
よって自営業者は国民年金基金への加入を優先し、掛金の拠出枠が余っていればiDeCoの利用を検討すべきである。
確定拠出年金の税制優遇って?
確定拠出年金は、税制優遇の手厚い魅力的な制度である。
iDeCoに加入すると、所得税と住民税の負担が軽減されるため節税に繋がる。また、運用益は全額非課税であり、さらに年金を受け取る時も各種控除が適用されるのだ。
このようにiDeCoでは三段階に渡って税制優遇を受けることができる。では、実際にどのくらい節税できるのか、例を挙げて詳しく見ていきたい。
どのくらい節税できる?「所得税と住民税」を課税所得で見てみる
iDeCoに加入すると、所得税と住民税をどのくらい節約できるのだろうか。iDeCoの掛金は勤務先に企業年金があるか無いか、自営業者であるかどうかで上限額が変わる。
一般的な公務員の掛金上限額は14万4,000円であるが、これを例にシミュレーションを行うと、課税所得330万円〜695万円以下の場合、所得税・住民税の負担軽減額は4万3,200円。
課税所得が900万円〜1,800万円以下の場合の軽減額は6万1,920円である。このように課税所得が多い人ほどiDeCoの節税メリットが大きくなるのだ。
iDeCoによる課税額の違い「会社員と自営業」
iDeCoの掛金上限額は会社員と自営業者では大きく異なる。では、会社員と自営業者では課税額にどの程度違いが生じるのだろうか。
まず、企業年金のない会社員と仮定した場合の掛金上限額は年間27万6000円まで。対して自営業者の上限額は81万6000円までである。
課税所得が300万円の場合、適用される税率は所得税が10%と住民税が10%だ。
前述の会社員と自営業者が掛金限度額まで拠出した場合、年間10万円以上自営業者の方が税負担が軽減される課税所得が同じであれば、年間の掛金額が多いほど税制優遇も大きくなるため掛金上限額の多い自営業者はその恩恵がより大きくなる。
10年、20年と年数が経てば経つほど、その差はさらに大きなものとなるのだ。
「iDeCo」3つの節税メリット
iDeCoには3つの節税メリットがある。
- 掛金の積立は「全額所得控除」
- 運用利益も「非課税」
- 受取方法を問わず、一定額までは「非課税」
以下、それぞれを詳しく解説する。
掛金の積立は「全額所得控除」
iDeCoで積み立てた掛金は、全額が所得控除の対象となり「所得税」と「住民税」が軽減される。つまりiDeCoでは掛金額の分、課税所得を減らすことができるのだ。
会社員の場合は年末調整、自営業者は確定申告で対応可能である。
節税額は年収や掛金に応じて変動するが積み立てる全機関に適用されるため、長期的に見るとより大きな節税メリットが見込める。
運用利益も「非課税」
投資信託や預金で運用し、利息・運用益が出た場合には税金が差し引かれる。しかしiDeCoで運用して生じた利益には税金がかからない。
利息や運用益にかかる税率が、課税ありの運用と比べ優遇されているのだ。
さらに、本来は税金として引かれるはずの運用益も再投資されるため通常よりも有利に資金を増やすことが可能である。
iDeCoは老後のお金の準備であるため、長期での運用になる場合が多く、運用利益が非課税である効果は大きい。
受取方法を問わず、一定額までは「非課税」
iDeCoは原則60歳から受取を開始できる。その際に年金か一時金か、もしくはその併用か受取方法を選択する。いずれの方法を選んでも各種控除の対象となるため給付の際は一定額まで税金がかからず非課税となる。
年金で受け取る場合は「公的年金控除」一時金で受け取る場合は「退職所得控除」の対象となり税制優遇措置を受けられるのだ。
具体例として、60歳から年金で受け取る場合は公的年金と合算して月々60万円まで非課税であり、30年間積み立てて一時金で受け取る場合は他の退職所得と合算して1500万円までが非課税となる。
気を付けておきたい「iDeCoの注意点」
iDeCoは有利に資金を積み立てることができる魅力的な制度であるが、そのメリットを享受するためには見過ごせない注意点がいくつかある。
- iDeCoは原則60歳まで引き出すことができない
- 受取資格を得るために必要な「通算加入者等期間」がある
- 税負担の軽減効果が期待できるが、手数料負担があるため総合的に検討する必要がある
- 業績が不安定になりがちな自営業者にとって、納税の負担が大きくなるリスクがある
iDeCoのメリットは確かに多いが、万人向きとは言い切れない面もあるため、運用を始める前に理解しておく必要がある。
まとめ: iDeCoは税優遇は強力、ただし引き出し制限には注意
誰もが不安に思うであろう老後資金を準備する優れた制度がiDeCoである。
そしてiDeCoの最大のメリットは、資金の拠出から運用・受取に至るまで3段階で税制優遇を受けられる点である。
サラリーマン・公務員・自営業者など働いて所得のある人であれば誰でも節税メリットを受けることができるのだ。
また、2017年には専業主婦(夫)も加入が可能になり所得税や住民税を支払っていなくても運用益が非課税であるというメリットがある。
しかし、節税メリットは豊富であるが、60歳まで資金の引き出しができないという点においては注意が必要だ。
急なお金が必要であっても、国民年金や厚生年金を取り崩すことができない。
同じくiDeCoでも加入者個人の事情で資金を引き出すことはできないのである。
これは、老後の所得保障を目的とした制度であるため税優遇を認める代わりに設けられた制約だ。
長期運用であることを理解した上で、節税しながら効率的に老後資金を運用できる手段として、iDeCoへの加入を検討すべきである。
監修税理士・公認会計士からのコメント
iDeCoは節税対策として注目を集めています。多くの人にとってメリットのある制度ですが、60歳まで日出すことができないので注意する必要があります。個人事業主の人の節税対策はTaxtechの他の記事でも解説しているので是非参考にしてください。