【持続化給付金】個人事業主 必要書類から申請方法まで 完全ガイド
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新型コロナウィルスの流行は、世界中の経済活動に大きな影響をもたらした。自粛や学校の休校などによって、大幅に収入が減ってしまった個人事業主も多いだろう。そこで助けとなるのが、今年5月から始まった「持続化給付金」である。今回は、個人事業主における持続化給付金の給付条件から必要書類・申請手順と振り込まれるタイミング、注意点まで全て解説していく。
本記事を読むメリット
- 個人事業主の持続化給付金の概要から必要書類・申請手順 注意点まで全て網羅できる
目次
個人事業主 持続化給付金制度とは?
持続化給付金制度とは、感染症拡大による営業自粛などで大きな影響を受けた事業者に対し、事業の継続を支え、再起の糧としてもらうべく、事業全般に広く使える給付金を給付する制度である。「給付金」なので、融資と異なり返済する義務はない。
個人事業主の場合、給付額の上限は100万円。2019年の年間事業収入から、対象月の月間事業収入に12を乗じて得た金額を差し引いて計算される。
例えば、以下のケースを想定して計算する。
- ①2019年度の年間事業収入は300万円
- ②2019年5月の事業収入は30万円
- ③2020年5月の事業収入は15万円
昨年と比べると、5月の収入は50%減少している。給付額の計算は、「① -{(②-③)× 12} =給付額」である。このケースだと、「300万-(15万×12)=120万」。上限は100万円なので、給付額は100万円となる。
対象月は2020年1月から12月までの間で事業者が自由に選択できる。前年度と比較して、受給金額がより大きくなる月を選ぼう。
個人事業主 持続化給付金制度 給付条件
持続化給付金は、フリーランスを含む個人事業者が広く対象となる。給付条件は以下の通りだ。
- 2019年以前から事業により事業収入(売上)を得ており、今後も事業継続する意思があること。
- 2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月があること。
それぞれについて解説する。
2019年以前から事業により事業収入(売上)を得ており、今後も事業継続する意思があること
基本的には2019年以前から事業により事業収入を得ていて、今後も事業継続する意思があることが受給の条件となる。2019年以前から確定申告をしているなど、実際に事業収入があることを証明できれば、開業届の提出の有無は問われない。
2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月があること。
2020年1月から12月までの間で、2019年の同じ月と比較して事業収入が50%以上減少していれば対象となる。例えば昨年5月に20万円だった事業者が、今年5月は10万以下だった場合は受給できる。
2020年1月から3月に開業した個人事業者の特例
2020年1月から3月に開業した個人事業者でも、特例として条件を満たせば受給できる。2020年1月から3月の間に開業して、2020年4月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、2020年の開業月から2020年3月までの月平均の事業収入に比べて事業収入が50%以上減少した月があれば、受給対象となる。その場合、下記の証拠書類の提出が必要だ。
- 持続化給付金に係る収入等申立書(個人事業者等向け)
- 通帳の写し
- 本人確認書類
- 個人事業の開業・廃業等届出書・または事業開始等申告書
個人事業の開業・廃業等届出書は、開業日が2020年1月1日から3月31日までで、提出日が2020年5月1日以前、かつ税務署受付印が押印されていることが条件だ。
主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者の特例
持続化給付金が発表された当初は、主たる収入を事業収入として確定申告した個人事業主のみが給付の対象であった。しかし業種によっては、継続して収入を得ている事業でありながら、税務署の指導や慣習から雑所得として確定申告しているケースが多く見られた。これにより、6月29日より主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者も持続化給付金の対象となった。ただしこの場合、事業収入で申請している通常の個人事業主に比べると、審査に大幅に時間がかかるので注意が必要である。
給付対象者の要件は以下の通りである。
- 2019年以前から、雇用契約によらない業務委託等に基づく事業活動からの収入であって、税務上、雑所得又は給与所得の収入として計上されるもの(業務委託契約等収入)(売上)を主たる収入として得ており、今後も事業継続する意思があること
- 2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、2019年の月平均の業務委託契約等収入(2019年の確定申告書第一表の「収入金額等」の「給与」又は「雑 その他」欄に記載されるものを12で割ったもの)に比べて、業務委託契約等収入が50%以上減少した月(以下「対象月」という。)があること
- 2019年以前から被雇用者、又は被扶養者ではないこと
- 2019年の確定申告において、確定申告書第一表の「収入金額等」の「事業」欄に記載がない(又は「0円」)こと
給付対象となる方の一例として、以下のようなものがある。
- 請負契約により、成果物を納品しているWebデザイナーやライター
- 業務委託契約により、特定取引先の商品を届けて集金する業務を委託されている方
- 委任契約により、音楽教室や学習塾などにおいて講師を勤めている方
しかし上記に該当する方であっても、以下の要件のうち1つでも該当すると申請の給付対象外となる。
- 会社等に雇用されている被雇用者の方(サラリーマン・パート・アルバイト・派遣・日雇い労働等の方)
- 被扶養者の方
- 事業所得で確定申告をした方(持続化給付金申請要領(個人事業者等向け)に従って申請を行ってください)
会社等に雇用されていても、2019年中に独立、開業した場合は、給付対象になることもある。
受給対象外となるケース
上記の条件を満たしていても、以下のいずれかに該当する場合は受給されない。
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する「性風俗関連特殊営業」、当該営業に係る「接客業務受託営業」を行う事業者
- 宗教上の組織若しくは団体
- ①②に掲げる者のほか、給付金の趣旨・目的に照らして適当でないと中小企業庁長官が判断する者
個人事業主 持続化給付金制度 必要書類
個人事業主が持続化給付金制度を利用するためには、令和2年5月1日(金)から令和3年1月15日(金)までの間に、以下の4種類の書類を提出する必要がある。なお電子申請の場合は、令和3年1月15日(金)の24時が送信完了の締め切りとなる。
- 確定申告書類
- 対象月の売上台帳等
- 通帳の写し
- 本人確認書類の写し
それぞれについて詳しく解説していく。
確定申告書類
青色申告の場合は、2019年分の確定申告書第一表の控え(1枚)と、所得税青色申告決算書の控え(2枚)。白色申告の場合は、2019年分の確定申告書第一表の控え(1枚)が必要だ。いずれも収受日付印が押されていることが求められる。
しかしe-Taxの場合や、郵送で確定申告をして控えを受け取らなかった場合は、収受印がない。e-Taxの場合は、申告後送られてくる「受信通知」を添付する。郵送の申告などで収受印がない場合は、提出する確定申告書類の年度の「納税証明書(その2所得金額用)」を提出することで代替できる。ただし、事業所得金額の記載のあるものに限る。
対象月の売上台帳等
売り上げが50%以上減少したことを証明するため、対象月の月間事業収入が分かる売上台帳等を提出する。給与明細、通帳の写し、レシート、請求書等は認められない。フォーマットの指定はなく、対象月の事業収入であること、また対象月の事業収入の合計額が確認できる資料が必要だ。必ず「2020年〇月」と、対象となる月の売上台帳であることを明確に記載する。事業収入額が0円である場合も、その事実を明確に記載した売上台帳を準備する。
通帳の写し
持続化給付金を受け取るための通帳の写しを提出する。銀行名、支店番号、支店名、口座種別、口座番号、口座名義人が確認できるものであれば良い。必要であれば通帳の表面と、通帳を開いた1.2ページ目を添付する。ネットバンキングの場合は、上記の情報が確認できるページをスクリーンショットしたもので代替できる。
本人確認書類の写し
本人確認書類の写しは、以下のものが認められる。
- 運転免許証(両面)
- 個人番号カード(オモテ面のみ)
- 写真付きの住民基本台帳カード(オモテ面のみ)
- 在留カード、特別永住者証明書、外国人登録証明書(在留の資格が特別永住者のものに限る。) (両面)
本人確認書類はいずれの場合も申請を行う月において有効なものであり、記載された住所が申請時に登録する住所と同一のものに限る。引越しで住所が以前のものになっている場合は、申請前に正しい住所に変更しておく必要がある。また事業者が高齢、または病気などで運転免許証を返納している場合は、運転経歴証明書で代替可能だ。
これらを全て所有していない場合は、以下の書類でも代替できる。
- 住民票の写し及びパスポート(顔写真の掲載されているページ)の両方
- 住民票の写し及び各種健康保険証の両方
個人事業主 持続化給付金制度 申請手順と振り込まれるタイミングは?
持続化給付金制度は、どのように申請していつ頃振り込まれるのか。申請手順と振り込まれるタイミングについてそれぞれ解説する。
申請手順
持続化給付金制度の申請は、基本的にはWeb上でのオンライン申請で行う。自分で申請するのが困難な場合は、全国各地に開設された「申請サポート会場」にてサポートしてもらえる。持続化給付金制度の申請手順は、以下の流れで行う。
- 証拠書類(添付書類)を準備する
- マイページを作成する
- マイページから申請する
①証拠書類(添付書類)を準備する
申請の要件を確認し、証拠書類を準備する。紙の書類はスキャンして、オンラインで提出できるようにする。またデジタルカメラやスマートフォン等で書類を撮影した写真でも提出は可能。細かい文字も読み取れるように、明るい場所できれいな写真を撮影する。データの保存形式は、PDF・JPG・PNGのいずれかで、一つずつファイルを準備する。売上台帳は、エクセルや経理ソフトから抽出したデータや、手書きの売上帳のコピーでの提出も可能だ。
iPhoneで撮影する場合は、 iOS 11から画像のファイル形式が、より高効率な「HEIF」になっている。HEIFのファイル形式だと電子申請に添付することができないため、「JPEG」への変更が必要だ。写真を撮影する前に、設定>カメラ>フォーマットの順に選択し、カメラ撮影を「互換性優先」に変更しておくと、「JPEG」で保存される。
②マイページを作成する
2020年9月1日(火)以降に新規申請する場合は、従来のサイトではなく、新設されたサイトにて申請が必要となる。
2020年8月31日(月)以前に申請し、各種情報の参照や修正申請を行いたい場合は従来のサイトでの手続きが可能だ。
https://www.jizokuka-kyufu.jp/index2.html
専用サイトにて【申請する】ボタンを押して、メールアドレスを入力、仮登録する。入力したメールアドレスに、メールが届いていることを確認し、本登録を行う。メールが届かない場合は、各キャリアのセキュリティ設定やドメイン指定受信などの設定により、迷惑メールとして格納されていることも。迷惑メールフォルダを確認するか、「@jizokuka-kyufu.jp」のドメインを受信できるように設定してから仮登録しよう。メールが届いたら、IDとパスワードを入力してマイページを作成する。
③マイページから申請する
マイページから申請を行う。まず以下の申請情報を入力し、証拠書類をアップロードする。
- 屋号・雅号
- 申請者住所
- 書類送付先
- 業種(日本産業分類)
- 申請者氏名
- 生年月日
- 申請者電話番号
- 申請者メールアドレス
- 2019年の事業収入
- 対象月
- 対象月の月間事業収入
- 対象月の2019年同月の事業収入
- 口座情報
内容に不備がないか確認して、画面に従って申請する。2時~3時はシステムメンテナンスのため申請できないので注意が必要だ。申請は特設サイトからの電子申請が基本だが、申請方法が分からない方や、自分で申請するのが難しい方に限り、申請サポート会場にて補助員に入力サポートをしてもらえる。事前に来訪予約が必要で、申請に必要な情報は「申請補助シート」に記入して当日持参する。申請サポート会場は全国各地に設置されているため、自分で申請するのが難しければ探してみてほしい。電話からも予約できる。
振り込まれるタイミング
持続化給付金はマイページからの申請後、通常2週間程度で給付通知書のハガキが発送される。給付通知書には、確定した給付額と振込先が記載されている。その後、登録した銀行口座に入金される。場合によっては、入金後された後に給付通知書が届くこともある。特例を利用した場合や入力に不備があった場合は、確認に時間がかかり給付が遅れることもある。不明な点が発生した場合は登録したメールアドレスに連絡されるため、マイページから内容を確認し、即急に対応しよう。
給付通知書は、各自治体が独自で行っている補助金や給付金制度の申請に必要となることもある。紛失しないように、大切に保管しておこう。
個人事業主 持続化給付金制度 注意点
個人事業主が持続化給付金制度を利用するには、どのような点に注意すれば良いのか。
不正受給をしない
持続化給付金の不正受給は、犯罪にあたる。持続化給付金制度はコロナウィルスで影響を受けた事業者への支援策なため、スピード感を持って実施されている。虚偽の申請でも通ってしまう可能性はあるが、当然ながら不正受給は罰せられる。提出された証拠書類等について不審な点が見られる場合は、調査が行われる。調査の結果によって不正受給と判断された場合は、以下の措置が講じられる。
- 給付金の全額に、不正受給の日の翌日から返還の日まで、年3%の割合で算定した延滞金を加え、これらの合計額にその2割に相当する額を加えた額の返還請求。
- 申請者の屋号・雅号等を公表。不正の内容が悪質な場合には刑事告発。
「売上台帳」の不備に注意する
持続化給付金制度でよく見られた書類の不備が、売上台帳の不備。売上台帳は公式ページに具体的な作成例が無かったため、必要事項が抜けている不備が多く見られた。例えば「売上台帳(またはそれに準ずる)」と書かれていなかったり、取引先名や「2020年」、「〇月」などが抜けていたりすると、正式な売上台帳として認められず申請が通らない。定められたフォーマットがないため戸惑いがちだが、必要な情報さえしっかり記載されていれば、エクセルでも手書きでも売上台帳として認められる。提出前に不備がないかよくチェックしよう。
個人事業主 持続化給付金制度 法人との違いは?
持続化給付金制度は、個人事業主だけでなく法人も利用できる。資本金10億円以上の企業を除く、中小法人等を対象とし医療法人、農業法人、NPO法人など、会社以外の法人についても幅広く対象となる。個人事業主と法人の持続化給付金制度の違いは、給付金額の上限。個人事業主が上限100万円なのに対して、法人は200万円。計算方法も異なり、法人は「直前の事業年度の年間総売上-(前年同月比50%以上減の月の売上×12ヵ月)」で計算される。
また、以下の条件を満たした法人のみ受給対象となる。
- 2020年4月1日時点において、資本金の額又は出資の総額が10億円未満、もしくは資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員の数が2,000人以下であること
- 2019年以前から事業により事業収入(売上)を得ており、今後も事業を継続する意思があること
ただし、組合、若しくはその連合会、または一般社団法人については、構成員である事業者の3分の2以上が個人、または上記の条件を満たす法人である必要がある。また、事業収入は確定申告書の別表1「売上金額」欄に記載されたものと同じ金額を指す。
以下の条件に該当する法人は、給付対象外となる。
- 国、法人税法別表第一に規定する公共法人
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する「性風俗関連特殊営業」、当該営業に係る「接客業務受託営業」を行う事業者
- 政治団体
- 宗教上の組織若しくは団体
- 上記に掲げる者のほか、給付金の趣旨・目的に照らして適当でないと中小企業庁長官が判断する者
申請方法や申請書類は、個人事業主の場合と大差ない。申請内容に不備等が無ければ、通常2週間程度で事務局名義にて申請された銀行口座に振り込まれる。
給付金申請は税理士に相談しましょう。
持続化給付金に関しては今後も拡張していくと思われる。
また、「知っている」と「知っていない」だけで実際に大きなキャッシュの差が生まれているのが実情だ。
遠慮なく、税理士に相談をしていくのが賢明である。
弊社TaxTechnologyでは、持続化給付金に関する問い合わせを受けている。
ご検討のほどをおすすめする。
お問い合わせ;https://lp.taxtech.co.jp/contact/
まとめ/監修税理士・公認会計士コメント
今回は、個人事業主における持続化給付金の給付条件から必要書類・申請手順と振り込まれるタイミング、注意点までを網羅的に解説した。難しく思えるかもしれないが、手続きは意外と簡単。「自分は要件に当てはまらないから」と諦めていた方も、特例により受給範囲が広がりつつあるので、再度確認してみてほしい。