これまでと何が変わるの?インボイス制度を基礎から解説します

2020年11月14日

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

1x1.trans - これまでと何が変わるの?インボイス制度を基礎から解説します

2023年から適用されるインボイス制度を知っているだろうか?

今ここで始めて知ったという人もいるかもしれないが、消費税と軽減税率を支払う人にとって非常に重要な制度なので覚えておく必要があるだろう。

インボイス制度を理解し今後の対応を明確にするためにも、ぜひとも最後まで読んでみてほしい。

この記事を読むメリット

・インボイス制度の概要やその背景、また準備すべきことを理解できる

インボイス制度とは?

インボイス制度とは、登録を受けた課税事業者のみが法的効力があるインボイス、いわゆる適格請求書を発行できるという制度だ。

国税庁によれば、以下のように定義されている。

インボイス制度とは、

<売手側>
 売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。

<買手側>
 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。

(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm

以下が、国税庁の公開するインボイス制度に関するページである。

最新情報も随時掲載されているため、ぜひ一度目を通していただきたい。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm

それではさっそく、制度の背景から解説していこう。

1x1.trans - これまでと何が変わるの?インボイス制度を基礎から解説します

2023年から適用!その背景は?

1x1.trans - これまでと何が変わるの?インボイス制度を基礎から解説します

なぜ本制度が適用となるのか?その背景を知っておくと分かりやすいだろう。インボイス制度の背景には、「益税の排除」がある。詳しく解説していこう。

益税の排除

現在の請求書等保存方式では本来支払った消費税をゼロとして計上するところを、消費税を認識させることによって控除対象仕入税額が通常よりも多く計上させることができる。これを益税と言う。

たとえば、消費者から商品を買い取った場合、消費税は一切発生しない。しかし、買い取った側は商品を消費税込みで買い取ったことにできるため、一定の要件を満たすことで計上できるようになっている。

だが、インボイス制度が適用されると、課税事業者が発行する適格請求書に記載されている消費税しか仕入税額控除の対象にできないようになる。

現在の精度では抜け道のように益税を発生させてしまうが、インボイス制度がそれを排除する仕組みとなっている。

軽減税率への対応

消費増税が決定したと共に施工されたのが軽減税率の存在だ。計上する際に非常に混乱しやすいのが、軽減税率による正確な計算である。

消費税額は一律なので比較的計算しやすいが、軽減税率は8%と10%があるのでどれが8%でどれが10%なのか性格に把握していないと正確な計算ができない。

さらに、どの商品にどのくらいの軽減税率がかかっているのか細かく設定されているため、複数の過程を調べながら正確に計算するのは慣れた人でも難しく、時間を要するだろう。

しかし、インボイス制度が適用されれば、それらの計算が誰でも正確にできるようになるというわけだ。 なお、軽減税率に関し詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしていただきたい。

インボイス制度は免税事業者にも影響する!

上述したようにインボイス制度は登録を受けた課税事業者のみがインボイスを発行できるものとご説明したため、免税事業者は何も関係がないように思うだろう。

しかし、免税事業者にもしっかりと影響があるので注意が必要だ。

免税事業者は今まで益税などのメリットがあったが、インボイス制度の適用によって益税が排除されるなどのデメリットを負うことになるだろう。双方をきちんと理解することが肝心である。

さっそく具体的に、免税事業者への影響を解説していく。

仕入税額控除が適用されなくなる

免税事業者に与える影響として、「仕入税額控除が適用されなくなる」ことが挙げられる。 仕入税額控除ができないのは、適格請求書発行事業者しかインボイスが発行できないからだ。

免税事業者が請求書を発行しても取引先で仕入税額控除ができなくなるため、仕入税額控除を適用するには適格請求書免税事業者に登録するしかない。

しかし、免税事業者はそもそも登録すらできないことから、先に消費税課税事業者選択届を税務署に届けて課税事業者にならなければならない。

影響があるのは課税事業者

インボイス制度によって、直接的な影響があるのが「課税事業者」だ。 免税事業者は適格請求書が発行できないので確かに仕入税額控除ができなくなるが、免税事業者よりも課税事業者の方が大きな影響がある。

というのも、免税事業者にとって消費税の有無はそれほど大した問題ではない。 今まで通り営業を続けることはできるし、納税できないならできないで消費税が免除になるので関係ないかもしれない。

課税事業者は免税事業所が適格請求書ができないため、未だ党則していない企業や個人から仕入れが来ると請求書があっても仕入税額控除が除外されるのがデメリットだ。

インボイス制度対応のための条件

免税事業者のままではインボイス制度に対応できないので、制度に対応するために税務署に行って適格請求書発行事業者として登録する必要性がある。

無事に登録が完了すれば事業者登録番号が発行されるので、晴れて適格請求書を発行できるようになる。

なお、適格請求書を作成するにあたって、以下6つの必須項目を記載しよう。

・適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
・課税資産の譲渡等を行った年月日
・課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合は資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
・課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用
・税率ごとに区分した消費税額等
・書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

上述した項目が1ヶ所でも記載漏れしてしまうと、適格請求書として認められなくなるので注意していただきたい。

1x1.trans - これまでと何が変わるの?インボイス制度を基礎から解説します

インボイス制度対応に必要な準備

1x1.trans - これまでと何が変わるの?インボイス制度を基礎から解説します

免税事業者がインボイス制度に対応するために準備すべきことは主に、以下の4つである。

  • 適格請求書発行事業者の登録申請
  • 会計ソフトやワークフローの見直し
  • 本当に課税事業者になるべきなのか今一度考える
  • 売上アップとコスト削減の具体策を考える

課税事業者になる前に、本当に課税事業者になってもいいのか考えることが重要だ。免税事業者のままでいることもメリットがあるので、現状を変えてもいいのか考える必要性があるだろう。

まとめ

2023年10月から適用される予定のインボイス制度は、免税事業者にとっては少なからず辛い制度になるかもしれない。

だが、益税の排除や消費税と軽減税率を絡めた正確な計算がやりやすいなど、公平さと保ちつつ、今まで懸念されていた問題を解決できる重要な制度でもある。

課税事業者になることでインボイス制度に対応可能だが、免税事業者のままでいることにもメリットがあるので、ぜひご自身の状況に照らし合わせ、どちらが最適化を判断していただければと思う。

2020年11月14日税務サポート

Posted by taxtech-editor