IT導入補助金の特別枠(C類型)とは?通常型との違いや申請方法を解説

2020年12月30日

ITツールを導入したい中小企業や小規模事業者にとって、積極的に活用したいのがIT導入補助金だ。2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、通常枠とは異なった特別枠(C類型)が新設された。

そこでこの記事では、

  • IT導入補助金特別枠の通常枠との違い
  • IT導入補助金特別枠の申請方法

について解説する。

ITツールを導入したい中小企業や小規模事業者は、ぜひ参考にしてほしい。

IT導入補助金の特別枠(C類型)とは?

IT導入補助金特別枠(C類型)は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、事業環境に与えた影響への対策や感染拡大防止のための対策に取り組む事業者によるIT導入などを優先的に支援するために補助金だ。

従来からある通常枠のA類型、B類型に加え、コロナ特別枠としてC類型が新設された。

経済産業省の2020年度補正予算案に盛り込まれ、2020年5月より受付開始されている。

IT補助金特別枠(C類型)の要件として下記3つのうちいずれかの要件にあてはまる必要がある。

  • 非対面型ビジネスモデルへの転換→サービス業などの対面での接触を避け、オンラインでのやり取りへの変換するための設備投資など。
  • サプライチェーンへの毀損(きそん)への対応→商品供給を止めることなく継続するための設備投資や製品開発など。
  • テレワーク環境の整備→出社を減らし、テレワーク業務を推進できるように環境を整備する。

新型コロナウイルス感染拡大によりダメージを受けた企業への救済措置なので、審査も比較的緩い傾向があり、補助率も高いので、要件にあてはまる場合は要チェックの補助金だ。

ただし、応急措置的な補助金なので、いつ終了するかわからない点は注意が必要だ。

IT導入補助金通常型と違う点は?

C類型は、補助率2/3のC類型-1と3/4のC類型-2がある。

通常型と違う点は以下のとおり。

  • 補助率が最大3/4に拡充
  • PCなどのハードウエアにかかるレンタル費用も対象
  • 公募前に購入したITツールも対象

順番に解説する。

IT導入補助金の通常枠については下記の記事を参考にしてほしい。

補助率が最大3/4に拡充

通常型の補助率が最大1/2に対し、特別枠の補助率は2/3もしくは3/4だ。

補助率の違いはITツールを導入する要件による。

  補助金申請額 補助率 要件
C類型-1 30~150万未満 2/3 サプライチェーンの毀損への対応
150~450万未満
C類型-2 30~300万未満 3/4
  • 非対面型ビジネスモデルへの転換
  • テレワーク環境の整備

どちらか一つ以上を導入

300~450万未満

つまり、120万円のITツールを導入した場合、通常枠(A類型・B類型)の場合、補助率は1/2なので補助額は60万円になります。

C類型の場合、最大3/4の補助率の場合、補助額は90万円、2/3の補助率の場合は、補助額80万円となる。

補助額の上限は、最大450万円なので、大きな違いになるだろう。

PCなどのハードウエアにかかるレンタル費用も対象

通常型(A類型・B類型)では、ソフトウエア購入費用、サビす等の導入支援が補助対象になり、PC・タブレットなどのハードウエア導入にかかる費用は補助対象外だった。

しかし、特別枠(C類型)では、テレワークの推奨のためPC・タブレットなどのハードウエアのレンタル費用も補助対象となる。

テレワークを導入したいが、ハードウエアの導入の必要がある企業にとっては朗報だ。

公募前に購入したITツールも対象

A類型・B類型では申請前に購入済みのITツールは補助金の対象にはならない。

しかし、C類型の場合は、ITツールの導入時期を2020年4月7日までさかのぼることができる。

C類型では、申請前に購入したITツールであっても、2020年4月7日以降に購入したものであれば補助金の対象になるということだ。

IT導入補助金の特別枠の申請方法は?

IT導入補助金特別枠(C類型)の手続きの流れは次のとおり。

  • IT導入支援事業者・ITツールの選定
  • IT導入支援事業者と打ち合わせ
  • gBizIDプライムのアカウントの取得
  • 必要書類の準備
  • 「申請マイページ」で企業情報等を入力
  • 交付決定・補助事業開始
  • 実施報告
  • 確定通知・補助金の交付

手順に沿って、解説する。

対象事業者

IT導入補助金特別枠の対象事業者は、A類型・B類型と同様で下記の表に記載した中小企業・小規模事業者だ。

業種・組織形態 資本金 従業員
(資本の額又は
出資の総額)

常勤

資本金・従業員規模の一方が、右記以下の場合対象(個人事業を含む) 製造業、建設業、運輸業 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
サービス業(ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) 5,000万円 100人
小売業 5,000万円 50人
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業
並びに工業用ベルト製造業を除く)
3億円 900人
ソフトウエア業又は情報処理サービス業 3億円 300人
旅館業 5,000万円 200人
その他の業種(上記以外) 3億円 300人
その他法人 医療法人、社会福祉法人、学校法人 300人
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 100人
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 主たる業種に記載の従業員規模
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 主たる業種に記載の従業員規模
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) 主たる業種に記載の従業員規模

特定非営利活動法人

主たる業種に記載の従業員規模
業種分類 従業員
常勤
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) 5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 20人以下
製造業その他 20人以下

その他、対象者には複数の条件がある。詳しくは、IT導入補助金2020ポータルサイトを確認してほしい。

ITツールの選定

まずは、「IT導入支援事業者・ITツール検索」を活用し、自社の業種、事業規模、経営課題に沿って、IT導入支援事業者とITツールの選定を行おう。

IT導入支援事業者とは、ITツールの提案や導入、経営診断ツールを利用した策定の支援をし、申請手続きをサポートする事業者だ。

IT導入補助金特別枠の公募要領には下記のとおり記載がある。

交付申請の内容については、「IT導入支援事業者を含む“第三者”による総括的な確認(※)」を受けること。

引用:IT導入補助金2020ポータルサイト

つまり、IT導入補助金を申請するためには必ずIT導入支援事業者の確認が必要だ。

IT導入支援事業者や対象となるITツールは、IT導入補助金2020ポータルサイトに登録されている。このサイトに登録されていないITツールは補助対象外となるので注意しよう。

gBizIDプライムアカウントの取得

IT導入補助金を申請するためには、「gBizIDプライムアカウント」が必要だ。

2020年から、国が実施する補助金の申請は原則として電子申請となっている。gBizIDは、国の補助金電子申請システム「jGrants」を利用するために必要なアカウントだ。

IT導入補助金の申請だけでなく、複数の行政サービスを一つのアカウントで利用できるので取得しておこう。

gBizIDプライムのアカウントの取得方法は、Webで必要事項を入力し、申請書と印鑑登録証明書を郵送する。ワンタイムパスワードにより保護されているので、SMSが受け取れる携帯電話が必要だ。申請に不備がなければ、2週間以内にアカウントが発行される。

gBizIDプライムアカウントは発行までに時間がかかるので早めに準備しよう。

詳しくはGビズIDクイックマニュアル gBizIDプライム編で確認しよう。

必要な添付書類

交付申請時に必要な添付書類は下記のとおり。法人と個人事業主では異なる。

これらの書類をPDFで添付する。

法人の場合

  • 履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
  • 法人税の納税証明書(税務署の窓口で発行された直近分の法人税の納税証明書。電子納税証明書は不可)

個人事業主

  • 本人確認書類((有効期限内の)運転免許証、運転経歴証明書、住民票(発行から3か月以内のもの))
  • 事業継続確認書類1(税務署の窓口で発行された直近分の所得税の納税証明書)
  • 事業継続確認書類2(税務署が受領した直近分の確定申告書Bの控え)

電子申請で申請

IT導入補助金の申請は、電子申請で申請する。

IT導入支援事業者と共同で申請内容を作成し、申請者より事務局へ提出を行う。

まず、「申請マイページ」の招待申請を行い「申請マイページ」の開設が必要。

「申請マイページ」では、申請手続きだけでなく、申請した事業者情報の変更や事務局からの通知、連絡を受けることができる。

交付決定・交付開始

下記の項目で審査が行われ、補助事業者の採択と交付決定が行われる。

審査項目 審査事項
事業面からの審査項目 (1)事業面の具体的な審査
  • 新型コロナウイルス感染症における事業への影響とその対策について効果的なツールが導入されているか
  • 自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか
  • 内部プロセスの高度化効率化及びデータ連携による社内横断的なデータ共有・分析等を取り入れ、継続的な生産性向上と事業の成長に取り組んでいるか

など

(2)計画目標値の審査 労働生産性の向上率
政策面からの審査項目 (3)加点項目にかかる取組の審査
  • 生産性の向上及び働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか
  • 国が推進する「クラウド導入」に取り組んでいるか
  • インボイス制度の導入に取り組んでいるか

など

引用:IT導入補助金2020【特別枠】公募要領

審査項目は他にもある。詳細は、IT導入補助金2020【特別枠】公募要領をチェックしよう。

交付の採択が確定すると、補助金が交付されるので、補助事業を開始しよう。

IT導入補助金特別枠のスケジュール

2020年の10次締切分のスケジュールは下記のとおり。

締切日 2020年12月18日(金)17:00まで
交付決定日 2021年1月27日(水)
事業実施開始日 交付決定日以降~2021年6月30日(水)
事業報告期間 交付決定日以降~2021年6月30日(水)17:00まで

2020年分は終了しているが、2021年にもIT導入補助金特別枠は実施される見込みだ。

2021年の申し込み開始日は未定だが、2021年補正予算が成立する見込みであることから、通常よりも早い申し込み開始が予想される。申請対象者は、早めに準備しておこう。

IT導入補助金は個人事業主も対象?

IT導入補助金は個人事業主も対象となる。法人とは、必要書類が異なるので注意しよう。

下記では個人事業主が使える補助金である、持続化給付金について解説しているので参考にしてほしい。

まとめ:新型コロナでITツールを導入したいのであれば補助金の活用を

IT導入補助金特別枠(C類型)は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにIT導入を支援するための補助金だ。

通常枠のA類型、B類型に比べ補助率も高く、2020年4月7日導入文まで遡って申請することもできるので、対象事業者は積極的に活用しよう。

2021年の申請開始時期は未定だが、早めの募集開始も予想される。準備には時間がかかるので、早めに対策しておこう。

監修税理士・公認会計士からのコメント

IT導入補助金の特別枠というのはこれまでの補助金に比べて、補助率も高くなり、レンタル費用も対象になっています。コロナウイルスで事業に影響があった事業者は積極的に活用していきましょう。

2020年12月30日経営者の課題と解決策

Posted by taxtech-editor