ものづくり補助金とは?概要から申請の方法まで解説
ものづくり補助金は、国の補助金事業のうちの一つである。
通年で公募され、新しいものづくりに挑戦したい中小企業におすすめの補助金だ。
この記事では、
- ものづくり補助金って何?
- ものづくり補助金の申請方法は?
という方のために、ものづくり補助金の概要から申請方法までを解説する。
ものづくり補助金を申請したいという方は参考にしてほしい。
この記事を読むとわかること
ものづくり補助金の概要と申請方法がわかる
ものづくり補助金とは?
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の略である。
新しいものづくりに挑戦する中小事業と小規模事業を支援するための国の補助金施策の一つだ。
担保や保証人の必要はなく、補助金なので返済の必要もない。予算が多いので採択されやすいのも魅力だ。
中小企業が受けられる補助金は他にも種類がある。
その他の補助金については下記の記事を参考にしてほしい。
ものづくり補助金の目的
中小企業や小規模事業者が複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大など)等に対応するため、革新的なサービス開発、試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等に係る費用に対する支援が目的だ。
ものづくり補助金の対象者
ものづくり補助金の対象者は次の2種類だ。細かい基準があるので、表を参考にしてほしい。
- 中小企業
- 特定非営利活動法人
※ただし、申請締切日前10か月以内に同一事業(令和元年度補正・令和二年度補正も
のづくり・商業・サービス生産性向上促進事業)の交付決定を受けた事業者を除く。
※日本国内に本社および実地場所を有する
なお、個人事業主については下記の記事で利用できる補助金をまとめている。
中小企業
資本金または従業員(常勤)が下表の数字以下となり会社または個人であること
業種 | 資本金 | 従業員数 |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 (ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業 (自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領
注意点としては、みなし大企業は除く。
みなし大企業とは、企業の規模は中小企業だが、実態としては大企業の一部とみなされる企業のことだ。
中小企業者(組合関連)
下記の表にあてはまる組合等に該当すること。
組織形態 |
企業組合 |
協業組合 |
事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会 |
商工組合、商工組合連合会 |
商店街振興組合、商店街振興組合連合会 |
水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会 |
生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会 |
酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会 |
内航海運組合、内航海運組合連合会 |
技術研究組合(直接又は間接の構成員の3分の2以上が中小企業者であるもの) |
さらに、細かい内容は公募要領を確認してほしい。
ものづくり補助金の対象事業と要件
ものづくり補助金の対象事業は下記の3種類の型がある。類型とは、簡単に言うと申し込みプランのようなものだ。自社の事業内容に合わせて類型を選ぼう。
- 一般型
- グローバル展開型
- ビジネスモデル構築型
※補助事業実地期間に、発注、納入、支払等の手続き全てがこの期間内に完了する事業であること
それぞれ解説する。
一般型
対象事業の概要は、中小企業者等が行う「革新的な製品・サービスの開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資のことだ。
補助事業実施期間は、交付決定日から10カ月以内。採択発表日からは12カ月目までとなっている。
経営革新の類型は4種類ある。
A1 | 新商品(試作品)の開発 |
A2 | 新たな生産方式の導入 |
B1 | 新役務(サービス)開発 |
B2 | 新たな提供方式の導入 |
グローバル展開型
グローバル展開型は、海外展開の手法により4つの類型がある。事業実施期間は交付決定日から12ヶ月以内と一般型よりも長い。海外旅費が補助対象になるのも特徴だ。
グローバル展開型の4つの類型は次の通り。
海外直接投資型 | グローバルな製品・サービスの開発・提供体制の構築 |
海外市場開拓型 | 海外顧客の開拓 |
インバウンド市場開拓型 | 訪日外国人観光客への市場開拓 |
海外事業者との共同事業型 | 外国法人を共同研究、共同事業開発に伴う設備投資 |
ビジネスモデル構築型
ビジネスモデル構築型は、通年募集がある他の2種類とは異なり、随時募集となる。補助の上限額も1億円と高いので、次回の募集時期を見逃さないようにしよう。
ビジネスモデル構築型は、中小企業による経営革新のための設備やシステム投資への支援である一般型とは異なり、中小企業のビジネスモデル構築や、事業計画策定を支援する民間サービスへの支援となる。事業計画の中に、斬新なアイデアや革新的なビジネスモデルが入っていることが必要だ。
その他要件
さらに、以下をすべて満たす3~5年の事業計画を作り、従業員に表明していることも要件だ。
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。
(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
・事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。
・事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加。
引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領
つまり、従業員の賃上げを従業員に宣言することが条件なのだ。
給与支給総額の年率1.5%増加は、わずかに見えるかもしれないが、3~5年間となると意外に大きな数字だ。人件費が補助金の額を超えないか、申請前に計算しよう。
ものづくり補助金はいくらもらえる?
補助上限と補助率は下記の通りだ。
一般型 | 1,000万円 |
グローバル展開型 | 3,000万円 |
ビジネスモデル構築型 | 1億円 |
補助率は、中小企業と小規模企業者・小規模事業者では次のように違いがある。(通常枠)
中小企業 | 1/2 |
小規模企業者・小規模事業者 | 2/3 |
つまり、中小企業で設備投資に2000万円かかった場合、補助額は1/2の1,000万円になる。
たとえ、設備投資に1億円かかったとしても、上限額の1,000万円までしか補助されないので注意しよう。
ものづくり補助金の期間はいつまで?
第5次締め切り分の公募要領によると、公募期間は下記の通り。
公募開始:令和2年12月18日(金) 17時~ 申請受付:令和3年2月2日(火) 17時~ (予定) 応募締切:令和3年2月19日(金) 17時(5次締切) 採択発表:令和3年3月末頃を予定 |
1~4次締め切りで不採択の場合でも、5次分に再度応募できる。
令和3年度にも申請受付は続く予定だ。通年で公募され、3か月おきに締め切りがある。
しっかりと事前準備をし、公募に備えよう。
ビジネスモデル構築型は、他の2種類とは異なり、通年で公募されない。次回公募時期を見逃さないようにしよう。
新型コロナ特別枠とは?
新型コロナウイルスの影響が拡大する中、ものづくり補助金は新型コロナ対応のための特別枠が設けられている。2020年(令和2年)12月の閣議決定で、特別枠は新特別枠「低感染リスク型ビジネス枠」として改編され、2020年度第3次補正予算案に盛り込まれた。
補助上限金は、1,000万円で補助率は2/3となる。補助要件は、対人接触機会の減少のための、製品やサービスの開発、生産プロセスの改善に必要な設備投資やシステム構築である。
公募開始時期は未定なので、対象者の場合はチェックしておこう。
ものづくり補助金の申請方法
ものづくり補助金は、電子申請で行う。そのため、記入漏れ等も見つけやすく、申請しやすくなっている。
ものづくり補助金を申請する際大切なポイントをまとめると
- 補助事業期間内の発注、納品、支払いに限られる
- 通年公募
- 事業実施期間は交付決定日から10カ月以内(採択発表日から12カ月後の日まで)
- グローバル展開型は交付決定日から12カ月以内(採択発表日から14カ月後の日まで)
上記の通り。つまり、設備の発注や納品、支払時期が決められているので、注意が必要だ。
次にものづくり補助金の申請スケジュールを解説する。
ものづくり補助金の手続きの流れ
受給までの手続きとスケジュールは次の通りなので、確認しておこう。(5次締め切りの場合)
- 事前準備(GBizIDの取得)
- 公募開始(2020年12月18日)
- 申請受付(2021年2月2日~19日)
- 採択通知(2021年3月中)
- 交付申請・交付決定(採択通知の約1か月後)
- 補助事業期間(交付申請後10カ月もしくは12カ月以内)(事業実施・中間検査・実績報告)
- 確定検査(交付額の確定)(補助事業期間の約1カ月後)
- 補助金の請求
- 補助金の支払い
- 知的財産権等報告・事業化状況報告(毎年4月ごろに依頼)
電子申請にはGBizIDが必要
ものづくり補助金は、電子申請となる。申請には必ずGBizIDが必要だ。
2020年から、国が実施する補助金の申請は原則として電子申請となっている。GBizIDは、国の補助金電子申請システム「jGrants」を利用するために必要なアカウントだ。
ものづくり補助金だけでなく、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金などの申請にも利用するので取得しておこう。
GBizIDには3種類のアカウントがあるが、ものづくり補助金の申請には「GBizIDプライム」のアカウントが必要。
GBizIDプライムのアカウントの取得方法は、Webで必要事項を入力し、申請書と印鑑登録証明書を郵送する。ワンタイムパスワードにより保護されているので、SMSが受け取れる携帯電話が必要だ。申請に不備がなければ、2週間以内にアカウントが発行される。
詳しくは下記で確認しよう。
電子申請にて申請書類作成・提出
ものづくり補助金は電子申請なので、Webフォームに事業計画書を入力する。添付書類は、PDFを添付する。
必要事項を漏れがないように、記入しよう。審査項目に関しては、しっかりと書き込むことも採択されるために大切だ。
ものづくり補助金申請の添付書類
ものづくり補助金の申請には、下記の添付書類が必要だ。
- 事業計画書
- 決算報告書(2期分)
- 賃金引上げ計画を従業員に表明したことを示す書類
- 開業届、または履歴事項全部証明書(小規模事業者または、創業、第2創業5年以内の事業者)
- 自然災害及び感染症による被害状況等証明書
- 海外事業の準備状況を示す書類(グローバル展開型のみ)
- 審査における加点を希望する場合に必要な追加書類
- 経営革新計画の承認書等
- 事業継続力強化計画認定書(または連携事業継続緑化計画認定書)(加点として申請する場合)
- 特定適用事業所該当通知書
加点に必要な書類は、加点に必要な場合のみ用意しよう。
まとめ:ものづくり補助金はものづくりに挑戦する中小企業を支援する国の補助金。余裕をもって申請を
ものづくり補助金は、新しいものづくりに挑戦する中小事業と小規模事業を支援するための国の補助金施策だ。
担保や保証人の必要がないので、要件にあてはまればぜひチャレンジしてほしい。
しかしながら、賃上げ等の要件もあり人件費が上がるので、補助金と人件費をよく吟味する必要がある。通年公募なので内容をよく確認し、余裕をもって申請に臨もう。
ものづくり補助金は、新しいものづくりを始める中小企業や小規模事業者にとってはおすすめの補助金です。返済する必要もないため、有効活用していきましょう。その他にも中小企業におすすめの補助金はたくさんあるため、Taxtechの他の記事を参考にしてください。