10分でマスター!!【損益分岐点の計算方法と具体的な活用法】
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会社経営において大切なのは、適切な数値目標を立てること。「たくさん売ればいい」とやみくもに動いていても、会社経営は成功しない。そこで目標設定のために重要な指標となるのが、「損益分岐点」である。今回は、損益分岐点を活用する意義や背景、すぐに把握して使える損益分岐点の計算方法などを分かりやすく解説していく。経営数値計画などを作成される方は、ぜひ参考にしてみほしい。
この記事を読むメリット
- 損益分岐点の存在意義から計算方法・活用法まで網羅出来る
目次
損益分岐点とは?簡単に分かりやすく解説
損益分岐点とは「損失と利益が分岐する点」、つまり利益がゼロとなる状態を指す。英語では「break-even point」といい、略して「BEP」とも表記される。大きな利益があったとしても、それにかかる費用が上回っていれば、企業は赤字である。損益分岐点では事業にかかる費用を固定費と変動費に分類し、事業活動の収支構造を明らかにする。企業にとって損益分岐点は「これだけの利益を獲得しなければ赤字になる」という指標となり、効率的なコストカットと製品の品質管理を両立させるのに役立つ。
損益分岐点を把握する意義は?
損益分岐点を把握することで、企業にとってどのような意義があるのだろうか。損益分岐点を把握すると、利益ゼロの状態での売上高、あるいはコストが分かる。これにより企業は、「ある一定のコストの下で利益を出すために最低限必要な売上高」また「ある一定の売上高の下で利益を出すために必要なコストダウンの金額」などの予想が可能となる。売上目標を立てたり、会社全体の収益構造を改善したりする際に、意思決定を下すうえでの判断基準のひとつとして、経営者にとっては欠かせないツールだ。
損益分岐点の計算方法
損益分岐点の計算には、損益計算書のデータを用いる。以下の計算式で求められる。
損益分岐点 = 固定費 ÷ {1―(変動費÷売上高)}
当然だが、商品やサービスの対価として得た売上高すべてが企業の利益というわけではない。商品やサービスを生み出すためには、材料費、人件費、家賃など、さまざまな経費がかかる。企業の利益は、売上高からこれらの経費を引いて計算する。損益分岐点を求めるためには、まずこの費用を分解する必要がある。費用には大きく分けて「固定費」と「変動費」の2種類がある。固定費とは、売上に関係なく発生する費用のこと。変動費とは、売り上げに比例して増加する費用のことだ。
固定費は仮に売上高が0円であっても発生する費用であり、事業を行っている限りは必ず回収しなければならない最低限の金額である。例えば、以下のようなものがある。
- 工場や事務所の家賃
- 保有している資産に対する固定資産税
- 営業成績に比例しない給与などの人件費
- 福利厚生のために加入している保険料
- リース料
- 広告宣伝費
- 借入金の支払利息
一方、変動費は売り上げの増減に比例して増減する。製品を多く製造すれば、それだけ原材料や加工費、人件費もかさむ。変動費には、以下のようなものがある。
- 商品や材料の仕入高
- 営業インセンティブのような人件費
- 製品製造のために稼働させる機械の水道光熱
- 建設や製造の現場における人工代
- 商品の製造にかかる外注費
- 販売手数料
これらの固定費と変動費は、勘定科目ごとに分類する手法が一般的である。
損益分岐点の考え方と改善方法
損益分岐点による分析は、経営改善のための対策の検討に活用できる。経営改善は、利益が出やすい状態にすることが重要だ。損益分岐点でいうと、「引き下げるにはどうしたら良いか」を考える必要がある。損益分岐点を引き下げるために有効な方法となるのは以下の2つである。
- 費用を減らす
- 売上を増やす
それぞれの具体的な対策についてご紹介する。
費用を減らす
先ほどご紹介したとおり、会社経営における費用は「固定費」と「変動費」の大きく2つに分類される。経営を改善するためには、これら2つとも、無理のない範囲で削減するのが効果的だ。
最も取り組みやすく高い効果が得られるのは、固定費の削減である。家賃や事務費など、売上獲得に直接関係しない費用なので、削減しやすい。不要なリースを解約する、所有している固定資産を手放すなどの対策がある。
また、変動費の削減も大切だ。工程や原材料を見直したり、現場での作業を効率化して人件費を削減したりすることで、損益分岐点を引き下げて利益を獲得しやすい状態にできる。しかし変動費は、商品やサービスのクオリティに直接かかわる費用であるため、費用の削減には慎重な検討が欠かせない。損益分岐点を引き下げるために無理なコストカットをすると商品やサービスの品質低下を招き、お客様が離れてしまうこともある。結果的に利益が出なくなってしまうため、本末転倒である。もちろん、原材料の価格高騰などによる価格の見直しは定期的に行うべきではあるが、過度のコストカットによって企業のイメージダウンを招かないようには注意が必要だ。
売上を増やす
費用の削減と同様に重要なのが、「売上を増やすこと」である。言わずもがなどの企業も売上を増やすための努力はしていると思うが、やみくもに取り組んでいても売上を伸ばすのは簡単なことではない。大切なのは、売上を要素に分解することである。売上高は、基本的には以下の要素に分解できる。
売上高 = 単価 × 客数 × 回転数
単価引き上げ、新規顧客の獲得、リピーターの増加。これらの各要素について対策をすることで、売上高アップを狙える。これを同時並行的に目指すことが求められます。特に単価の設定は、経営においてとても重要な要素である。単価は安ければ良いというわけではなく、安すぎる価格設定はブランディングにおいてマイナスイメージを与えることもある。市場調査をしてターゲット層のニーズを探り、適切な価格設定をしよう。
損益分岐点比率とは?
損益分岐点と、もう一つ経営において重要な指標となるのが「損益分岐点比率」である。損益分岐点比率とは、実際の売上高と損益分岐点売上高の比率を計算したもの。この数値が低ければ低いほど、売上低下による赤字への影響が少ないといえる。損益分岐点比率は以下のような計算式で求められる。
損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100
損益分岐点比率はパーセンテージで表記され、「どこまで売上が落ちてもトントンか」を意味する。例えば現在の売上高が1000万円で損益分岐点比率が50%だった場合、仮に売上が500万円まで下がってしまってもトントンだ。つまり最低でも500万円の売上があれば、ぎりぎり赤字にはならない。「最低限これだけは売上を確保する」という数値目標が具体的になるため、今後の空く所のプランを練りやすくなる。
まとめ/監修税理士・公認会計士コメント
今回は、損益分岐点を活用する意義や背景、すぐに把握して使える損益分岐点の計算方法などを分かりやすく解説した。赤字に転落しないためには、まず「いくら稼がないと赤字になるのか」を明確に知っておく必要がある。そのために、損益分岐点は常に意識する必要がある。損益分岐点による経営分析はとてもシンプルな手法だが、その分分かりやすく高い効果も期待できる。経営者の方は、損益分岐点の計算法と活用方法をしっかりマスターしておこう。