退職金にかかる税金の種類と計算方法を解説!受け取り方で変わるのか

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退職金には税金が課せられる。

税金の種類は、所得税や住民税。退職金を受け取る方法には、一時金、年金があるが、受け取り方でかかる税金も変わる。退職金をできるだけお得にもらうためには、少しでも節税することがポイントだ。

そこでこの記事では、退職金に課せられる税金の計算方法を解説する。お得に受け取る方法も合わせて解説するので、ぜひ参考にしてほしい。

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退職金に課税される税金とは?

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退職金には税金が課税される。

税金の種類は

  • 所得税
  • 復興特別所得税
  • 住民税

以上の3種類だ。

一般的には源泉徴収で課税は終了するため確定申告の必要はない。退職金とは、雇い主などから退職者に支払われるお金のこと。定年退職だけでなく、自己都合による退職や解雇を受けたときや従業員が死亡した場合も支給の対象となる。

一度にまとめて受け取る場合は退職所得と分類され、申告分離課税として課税される。分割で受け取る場合は雑所得に分類され、総合課税となる。申告分離課税とは、他の所得と分離して、退職所得のみで税率が決まること。総合課税とは、他の所得との合算で税率が決まることだ。いずれの場合も、勤務先で手続きをして一定の条件を満たせば確定申告の必要はないが退職金は一時金として受け取った場合、企業年金として受け取った場合も税金が課税されると考えよう。

所得税、復興特別所得税と住民税が課税される

退職金はその支払いを受ける時に、所得税、復興特別所得税、住民税が源泉徴収、または特別徴収される。復興特別所得税は、2011年東日本大震災からの復興のための施策を実施するための財源確保のために平成23年(2011年)12月2日に特別措置法が交付され創設された。平成25年(2013年)から平成49年(2037年)までの各年分の基準所得税額が課税対象だ。

退職金には控除がある

長年の勤労に対する報償的給与ということから、一時金として受け取ると退職所得控除を設け税負担が軽くなるように配慮されている。さらに、他の所得と分離して退職所得のみに課税されるので、結果的に税金を抑えられるように配慮もされている。

税金の計算方法

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退職金は受け取る人の勤続年数などの状況によって課税される金額が異なるので実際に計算をして、受け取り方を考える参考にしてほしい。

控除額の計算方法

まず控除額の計算をしよう。

退職所得にかかる控除額の計算は勤続年数に関係する。

勤続年数は1日の勤務でも1年として計算するため、正確に確認しよう。障害者になったことを理由に退職した場合は、下記により計算した金額に100万円を加算する。下記の計算式は退職金を一時金で受け取った場合の計算式。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合には80万円)
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

所得税・復興特別所得税の計算方法

次に、一時金として受け取った退職金にかかる所得税の計算方法。

所得税の計算は次の通りだ。

所得税額(基準所得税額)=課税退職所得金額×所得税率※-控除額※

課税退職所得金額は、下記のように計算できる。

課税退職所得金額=(退職金-退職所得控除額)×1/2

復興特別所得税額の計算は下記の通り。

復興特別所得税額=基準所得税額×2.1%

※の所得税率、控除額は下記の表を参考。

所得税の計算に必要な税額表は以下の通り(令和2年分)

課税退職所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

以上の計算式にあてはめ、次では実際に計算してみよう。

実際の計算例

例えば、30年勤務した方が2500万円の退職金を受けとった場合。

まずは、退職所得控除額の計算から。

800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円

次に課税退職所得金額の計算をする。

(2500万円-1500万円)×1/2=500万円

以上の計算から所得税額を計算すると

500万円×20%-42万7500円=57万2500円

復興特別所得税額は

57万2500円×2.1%=12022円

所得税・復興特別所得税の合計は以下のように計算できる。

57万2500円+1万2022円=58万4522円

この方が支払う合計額は、58万4522円ということになる。

住民税は?

住民税は、退職した年の1月1日に住んでいた住所の市区町村で課税される。住民税は、退職金の支払いを行う雇い主などが計算し特別徴収をして市区町村へ納付する。

住民税の税率は、都道府県税率4%と市区町村税率6%の合計10%。計算方法は下記の通りだ。

退職所得×住民税率10%=住民税

上記の30年勤務した方が2500万円の退職金を受け取った場合の住民税は下記のようになる。

500万円×10%=50万円

つまり、この方が退職金をもらった翌年にかかる住民税の合計は50万円ということになる。

確定申告は必要?

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退職金は基本的に勤務先で所定の手続きを行えば、源泉徴収されるため原則として確定申告の必要はない。所定の手続きとは「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先で提出することだ。

退職所得の受給に関する申告書とは

退職金の受給に関する申告書とは、勤務先から退職金を受け取るときに提出する申告書のことだ。この申告書は勤務先から用紙を渡される場合が多いが、渡されない場合は国税庁ホームページからのダウンロードも可能だ。

申告書の提出は義務ではないが、提出しないと退職所得控除が適用されない。退職金すべてに税金が課税されることになるので税負担が重くなる。ただし、退職金をもらう前に申告書を提出していない場合も、後述する方法で確定申告をすれば払いすぎた税金の還付を受けることも可能だ。

確定申告の方法

申告書を提出していない場合、退職所得控除が適用されない。その場合は、確定申告をすることで払いすぎた税金の還付を受けられる。

確定申告の流れは下記の通り。

  1. 必要書類の準備
  2. 確定申告書の準備
  3. 必要事項を記入
  4. 税務署へ提出

必要書類は

  • 源泉徴収票
  • 生命保険料・損害保険料の納付証明書
  • 社会保険料の納付書
  • 本人確認書類

源泉徴収票は、退職金を受け取った証明になる。源泉徴収票の中には税収税額の記載があり、0の場合は還付金がなく所得税を徴収される場合もある。生命保険料や損害保険料、社会保険料は控除対象となるので必ず用意しよう。

退職金を受け取った年度内であれば国民年金保険料や国民健康保険料も控除の対象となるので提出しよう。医療費の合計が10万円を超える場合は、医療費控除の対象にもなるので合わせて申告しよう。

本人確認書類は、マイナンバーカードや通知カード、運転免許証の写しなどの添付が必要だ。

確定申告書は国税庁ホームページからダウンロード可能だ。必要事項を記入し、必要書類と合わせて税務署に提出しよう。

還付金がある場合は、後日還付金が払い戻される。税務署に必要書類を提出の際に振込依頼書も提出しておくと指定口座に還付金が振り込まれる手順となっている。

確定申告の方法は、税務署や確定申告会場で説明を受けることもできる。確定申告書の記入方法がわかりにくい場合は最寄りの税務署で相談しよう。

確定申告では還付金がある場合も

申告書が未提出の場合以外にも、年度の途中で退職して年度中に再就職しなかった場合、退職後に扶養者の数が変わった場合、副業など他の所得で赤字の場合なども確定申告により還付金を受け取れる可能性がある。

さらに、退職した年の年収が低い場合も扶養控除、配偶者控除など控除しきれていない場合もある。以上のケースがあてはまる場合は、確定申告によって還付金を受け取れる可能性がある。まずは、計算してみよう。

退職金の受け取り方で税金が変わる?

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退職金の受け取り方には、一時金、企業年金がある。

一時金として受け取る場合、退職所得として分類されその他の所得とは分離されて課税される。一時金として受け取ると税制優遇が大きく非課税になる部分が大きい。

年金として受け取る場合は雑所得に分類され、他の収入と合わせて課税される。特別な控除枠があるものの課税となる部分が大きい。

一時金で受け取った場合、勤続20年までは年間40万円、それ以降は年間70万円退職金の控除枠が増えていく。大卒で60歳定年退職した場合(勤続38年)、2060万円までの退職金は非課税で受け取れる。それ以上についても課税対象となるのは1/2となるので税負担はかなり軽くなる。

企業年金として受け取る場合は、公的年金を合算して税金の計算をすることに。公的年金や企業年金には控除枠があり、これを超えた分が課税対象になる。

公的年金等の控除の計算式は以下の通り。

公的年金と企業年金の収入金額の合計額×割合-控除額

計算式中の割合や控除額は下記の表を参考にしよう。

※公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1000万円以下の場合

年齢公的年金等の収入金額の合計額割合(控除額
65歳未満(公的年金等の収入金額の合計額が60万円までの場合所得金額はゼロ)
60万1円以上130万円未満100%60万円
130万円以上410万円未満75%27.5万円
410万円以上770万円未満85%68.5万円
770万円以上1000万円未満95%145.5万円
 1000万円以上100%195.5万円
65歳以上(公的年金等の収入金額の合計額が110万円以下の場合所得金額はゼロ)
110万1円以上330万円未満100%110万円
330万円以上410万円未満75%27.5万円
410万円以上770万円未満85%68.5万円
770万円以上1000万円未満95%145.5万円
 1000万円以上100%195.5万円

公的年金等に係る雑所得以外の合計金額が1000万円以上の場合は下記の国税庁ホームページを参考にしてほしい。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

企業年金として退職金を受け取る場合、7.5%の源泉徴収をあらかじめ行い、翌年の確定申告で払いすぎた税金の還付金を受け取るのが一般的だ。

このように比較すると一時金で受け取る方が非課税枠も大きいのでお得に見えるかもしれない。しかし、年金として受け取る場合は利息が上積みされ、条件によっては税金を差し引いても一時金でもらうよりもお得になる可能性もある。

また退職金の受け取り方は、すべてをどちらかに決めなければならないわけではなく、「一時金50:年金50」や「一時金75:年金25」のように配分を変えられる場合もある。

退職金を受け取る場合は、受け取り条件をよく確認しシミュレーションしながら検討しよう。

まとめ:退職金には税金がかかる!退職金をお得に受け取ろう

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退職金には、所得税・復興特別所得税、住民税の税金が課税される。

一時金として受け取る場合と企業年金として受け取る場合は、分類される所得が変わり課税される金額が異なる。一見、優遇措置の大きい一時金で受け取る方法が有利に感じるが、受け取り条件によっては企業年金がお得な場合も。ここで解説した計算方法を活用し、自分の退職金について計算してみよう。今後のライフプランを考慮しつつ、自分に合った年金の受け取り方法を見つけよう。

監修税理士・公認会計士からのコメント

退職金にかかる税金には、いくつか種類があります。各種類や計算方法等を事前に知っておくだけで、実際の状況になった際も迅速に動くことに繋がっていくはずです。この記事に記載されている情報や意見を参考にして、自分にあう受取方法の発見に繋げていきましょう。

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