キャッシュフロー計算書 間接法の特徴と利用方法 まとめ

2020年10月3日

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会社の経営状況を客観的に把握して適切な判断を行うための指標となるのが、キャッシュフロー計算書である。キャッシュフロー計算書には間接法と直接法という2種類の計算方法があり、それぞれメリット・デメリットがあるため会社にあった適切な方法を選ぶことが大切だ。そこで今回は財務管理をする方に向けて、キャッシュフロー計算書の間接法の概要から実際の使い方・メリットデメリット・直接法との違いまで網羅的に解説していく。

キャッシュフロー計算書 間接法とは?

会社のお金の流れを示す決算書のひとつ、キャッシュフロー計算書。現状で会社にどのくらいの現金があるのかを示す「会社の家計簿」のような書類で、財政状況を把握するためにとても重要だ。キャッシュフロー計算書には、「直接法」と「間接法」という2種類の記載方法がある。「間接法」とは、損益計算書の当期純利益をベースに、キャッシュフローの増減を間接的に表示する方法。税金控除前の当期純利益から調整項目を加減して、キャッシュの動きに関する部分だけを計算して作成する。

キャッシュフロー計算書では、資金の流れを「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに分けて表す。計算方法が異なるのは営業活動によるキャッシュフローのみで、投資活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローの計算は同じになる。 つまり、間接法のキャッシュフロー計算書でも、投資活動と財務活動においては取引ごとに総額表示をしなければならない。 直接法と間接法のどちらでキャッシュフロー計算書を作成するかについては、会社が自由に選択することができる。

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キャッシュフロー計算書 間接法の特徴と使い方

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間接法キャッシュフロー計算書では、損益計算書の当期純利益を出発点にして計算していく。つまり、損益計算書の当期純利益と営業活動によるキャッシュフローとの差異を一覧で表示しているということである。

間接法キャッシュフロー計算書を作成する手順は、大まかに以下のとおりである。

  1. 必要書類を準備する
  2. 金額を項目別に割り振る
  3. 集めた情報をもとに計算する

それぞれの手順について詳しく解説していく。

必要書類を準備する

まず、キャッシュフロー計算書を作るために必要な書類を準備する。基本的には、以下の書類があれば作成できる。

  • 当期分の損益計算書
  • 前期分の貸借対照表
  • 当期分の貸借対照表

しかし融資の借り換え、固定資産の取得や売却、有価証券の購入や売却、法人税の中間納付などを行っている場合は、別途以下の書類も必要となる。

  • 融資の借り換えに関する資料
  • 固定資産の取得や譲渡に関する資料
  • 有価証券の取得や譲渡に関する資料
  • 法人税の中間納付額

金額を項目別に割り振る

必要な書類を用意したら、以下の情報を貸借対照表、損益計算書又はその他の書類から準備します。

【営業活動の項目】

  • 税引前当期純利益
  • 減価償却費
  • 貸倒引当金
  • 棚卸資産
  • 売掛金や受取手形などの売上債権
  • 買掛金や支払手形などの仕入債務
  • 利息   など

【投資活動の項目】

  • 固定資産(不動産や車、機械やソフトウェアなど)
  • 有価証券
  • 固定資産売却益・損
  • 有価証券売却益・損

【財務活動の項目】

  • 短期、長期借入金
  • 自社株式
  • 配当金   など

間接法キャッシュフロー計算書に記載する金額は、資金の増減を伴わない損益項目と、資金の増減に関係する資産の増減です。

集めた情報をもとに計算する

損益計算書で算出した「税引前当期純利益」から項目を加減してキャッシュフローを計算する。

プラス項目は以下の通りである。

  • 減価償却費
  • 貸倒引当金の増加額
  • 棚卸資産の減少額
  • 売上債権の減少額
  • 仕入債務の増加額
  • 利子利息の支払額

マイナス項目は以下の通りである。

  • 貸倒引当金の減少額
  • 棚卸資産の増加額
  • 売上債権の増加額
  • 仕入債務の減少額
  • 利子利息の受取額
  • 法人税等の支払額

キャッシュフロー計算書 間接法のメリット・デメリット

間接法と直接法のどちらを選択するかを決める上で、メリットとデメリットについては把握しておきたい。そこでここでは、間接法のメリット・デメリットを紹介する。

間接法のメリット

間接法キャッシュフロー計算書の最大のメリットは、作成が簡単なことである。基本的には貸借対照表と損益計算書から作成できるため、直接法のように取引ごとの膨大なデータを用意する必要がない。手間を削減してコストで作成できる。実際に、日本の全上場企業の9割以上が間接法を選択しているというデータもある。また、損益計算書に紐付いた営業キャッシュフローを作成するため、損益計算書の最終利益と営業成績の因果関係が分かりやすい。利益と営業キャッシュフローがなぜずれているのか理由を明確にして、資金の裏付けのある収益力を示すことができるのも間接法キャッシュフロー計算書のメリットである。

間接法のデメリット

間接法キャッシュフロー計算書のデメリットは、企業の経営実態の全体像が把握しづらいことである。 間接法キャッシュフロー計算書は直接法と異なり、買掛金の増減や売掛金の増減、減価償却費などを記載するだけで、取引ごとの細かな増減は記載しない。そのため営業キャッシュフローを構成する売上・仕入など活動ごとのキャッシュフローが分かりづらく、収支の全体像の把握が難しい。

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直接法との違いとは?

「間接法」がキャッシュの動きに関する部分だけを計算するのに対して、「直接法」は営業活動に関する収入や支出などのキャッシュフローを総額でとらえる方法である。商品の販売や仕入れ、経費の支払い、給料の支払いといった主要な取引ごとにキャッシュフローの総額を示す。企業の経営実態を詳細に示すことができるが、作成するには取引ごとにデータを用意しなければならないため、膨大な手間が発生する。特に大企業になればなるほど、取引数も膨大になり作成に手間がかかる。人件費などのコストもかさむため、実際には間接法を利用する会社の方が多い。しかし国際会計基準審議会(IASB)によって設定された会計基準「IFRS」では直説法が推奨されており、今後直接法に統一される可能性もある。グローバル化を目指す企業は、今のうちから直接法を選択しておくのも良いだろう。

収支項目全体を把握するのは難しいが作成の手間を大幅に削減できる「間接法」と、会社の経営状況の全体像を把握できるが膨大なデータが必要となる「直接法」。どちらの方法で作成しても、最終的な営業キャッシュフローの値は同じになる。どちらにもメリットやデメリットがあるため、自社に合った方法を選ぶ必要がある。

キャッシュフロー計算書の直接法についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてほしい。

キャッシュフロー計算書 間接法 雛形

間接法キャッシュフロー計算書は、以下の雛形を参考に作成してみてほしい。

まとめ/監修税理士・公認会計士コメント

今回は財務管理をする方に向けて、キャッシュフロー計算書の間接法の概要から実際の使い方・メリットデメリット・直接法との違いまで網羅的に解説した。キャッシュフロー計算書は、会社の財務状況を把握し、黒字倒産を防ぐために大切な書類である。将来へ向けて投資を行っていく際も指標となる。多くの会社は間接法でキャッシュフロー計算書を作成するため、しっかり知識を身に着けておきたい。

キャッシュフロー(C/F)計算書の概要と作り方、注意点を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてほしい。

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