【税理士監修】e-taxでの確定申告のやり方・メリットデメリット まとめ

2020年9月6日

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確定申告と言えば、税務署で申告するイメージを持つ方が多いだろう。しかし今は、インターネットやスマートフォンを用いて行う「e-tax」での確定申告も可能となった。期限間近に混雑しがちな税務署にわざわざ足を運ばなくても申告できるe-tax。とは言えいまいち実態が分からず、従来の確定申告を続けている事業主も多い。そこで今回は、e-taxでの税務申告を考えられている創業初期経営者の方に向けて、e-taxで確定申告を実施する際の必要書類やメリットデメリット・具体的なやり方などを網羅的に解説していく。

本記事を読むメリット

  • e-taxの概要・確定申告の手続き・メリットデメリット・必要書類まで全て把握出来る
  • e-taxでの医療費控除やふるさと納税から確実に行う方法まで網羅できる

e-taxとは?

e-taxとは、国税電子申告・納税システムの呼称である。所得税や法人税などの国税に関する申告、納税、申請、届出など各種の手続きを、インターネットを通じて行えるシステムを指す。確定申告書類を提出するには、直接税務署に提出する方法や郵送があるが、e-taxでは電子データをインターネットで経由して送信するため、自宅に居ながら確定申告を済ませることができる。財務省は現在「ペーパーレス推進税制」を進めており、2020年からは大法人に向けて電子申告の義務化も始まっている。いずれは全事業者に電子申告が義務化されることも考えられるため、早めに慣れておきたい。

e-taxで確定申告する際に必要なものは?

e-taxで確定申告するには、大きく分けて以下の2通りの方法がある。

  • マイナンバーカード方式
  • ID・パスワード方式

それぞれで必要なものを解説する。

マイナンバーカード方式で必要なもの

マイナンバーカード方式で必要なものは、以下の通りである。

  • マイナンバーカード(住民基本台帳カード)
  • ICカードリーダライタ
  • 利用者クライアントソフト

マイナンバーカード(住民基本台帳カード)

e-taxでの確定申告では、データ作成者が本人であるかどうかを確認するために、電子証明書を用いる。誰もが手軽に入手できる電子証明書として一般的なのが「マイナンバーカード」だ。マイナンバーカードとは、国民一人ひとりに割り当てられたマイナンバー(個人番号)が記載された顔写真付のカードのこと。プラスチック製のICチップ付きカードで、表面には氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバー、本人の顔写真などが記載されている。住民基本台帳カードを持っている方は、有効期限内であれば組み込まれた電子証明書をそのまま利用できる。しかし住民基本台帳カードはすでに交付が終了しているため、今から用意するならマイナンバーカード一択だろう。

マイナンバーカードの交付申請には、以下の4つの方法がある。

  • スマートフォンによる申請
  • パソコンによる申請
  • まちなかの証明写真機からの申請
  • 郵送による申請

スマートフォンとパソコンによる申請は、スマートフォンのカメラかデジタルカメラで顔写真を撮影し、所定のフォームからオンラインで申請する。まちなかの証明写真機では、証明写真機に申請書を持参して、顔写真を撮影して申請する。申請可能な証明写真機は限られるため、事前に確認してから申請しにいく必要がある。郵送による申請は、マイナンバーカードの交付申請書に本人の顔写真を貼り、送付用封筒に入れて郵便ポストに入れる。通知カードを受け取っている方は、通知カードの下に付属していた「個人番号カード交付申請書」を切り取って使用できる。紛失した方は、マイナンバーカード総合サイトからダウンロードできる。また、差出有効期限が2022年5月31日までの交付申請書の送付用封筒もこちらからダウンロードできる。

https://www.kojinbango-card.go.jp/kofushinse-yubin/

交付申請後、約1ヶ月後にお住まいの市区町村から交付通知書が送付される。交付場所は原則としてお住まいの市区町村窓口で、交付通知書にも記載されている。交付の際に必要な持ち物は、以下のとおりだ。

  • 交付通知書(はがき)
  • 「通知カード」(令和2年5月以前に交付を受けている方)
  • 本人確認書類
  • 住民基本台帳カード(お持ちの方のみ)
  • マイナンバーカード(お持ちの方のみ)

交付窓口にて本人確認をして、暗証番号を設定するとカードが交付される。マイナンバーカードには、英数字6桁以上のものと数字4桁の2種類の暗証番号が必要になる。交付窓口に行く前に、あらかじめ考えておこう。

ICカードリーダライタ

ICカードリーダライタは、ICカードに記録された電子情報を読み込むために必要な機器である。公的個人認証サービスを利用して確定申告を行うためには、マイナンバーカードに対応したICカードリーダライタが必要だ。ICカードリーダライタの中にはマイナンバーカードに対応していないものもあるため、以下の一覧表でマイナンバーカード対応機種を確認してから購入しよう。

https://www2.jpki.go.jp/prepare/pdf/num_rwlist11.pdf

2019年以降は、NFC対応のスマートフォンでも電子証明書が読み取れるようになった。そのため、ICカードリーダライタがなくてもe-taxで確定申告ができる。NFCとは「近距離無線通信規格」のひとつで、かざすだけで周辺機器と通信ができる。NFC対応のスマートフォンにマイナンバーカードをかざすことで、その情報を読み込んで確認できる。ICカードリーダライタを購入する前に、お手持ちのスマートフォンがNFC対応かどうかをチェックしておこう。以下の一覧表で確認できるほか、設定画面の「無線とネットワーク」などに「NFC」の記載があるかどうかでも確認できる。

https://www2.jpki.go.jp/prepare/pdf/nfclist.pdf

利用者クライアントソフト

利用者クライアントソフトとは、公的個人認証サービスを利用した行政手続きなどを行う際、マイナンバーカード(ICカード)に記録された電子証明書を利用するためのソフトウェアのこと。確定申告を行うパソコンに、パソコン版の利用者クライアントソフトをダウンロード、インストールする。

NFC対応のスマートフォンをICカードリーダライタとして利用する場合は、WindowsパソコンとスマートフォンをBluetooth機能で接続し、スマートフォンでマイナンバーカードに格納された電子証明書を読み込む。この場合は、パソコンだけでなくスマートフォンにもAndroid版の利用者クライアントソフトをインストールしておく必要がある。

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ID・パスワード方式で必要なもの

2019年からは、マイナンバーカードを持っていなくても「ID・パスワード方式」でe-Taxが利用できるようになった。その場合、税務署であらかじめ発行したIDとパスワードを本人確認の手段として利用する。必要なものは以下だけだ。

  • ID・パスワード方式の届出完了通知(利用者識別番号と暗証番号)

最寄りの税務署にて、職員と対面での本人確認をして、ID・パスワード方式の届出を作成・送信すると、利用者識別番号を取得できる。併せてメッセージボックスにID・パスワード方式の届出完了通知も格納される。本人確認の際は、運転免許証などの本人確認書類が必要となる。届出が済んだら、Webサイトの「確定申告書等作成コーナー」から、もしくはスマートフォンでも申告が可能だ。

e-taxでの確定申告のメリットとデメリット

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今推奨されているe-taxでの確定申告だが、どのようなメリット・デメリットがあるのか。それぞれご紹介する。

メリット

e-taxでの確定申告のメリットは、以下の通りだ。

  • 税務署に出向くことなく、インターネットを利用して申告や納税などの各種手続きをすることができる
  • パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット端末からでも申請ができる
  • 確定申告期間中は、メンテナンス時間を除き24時間利用ができる
  • 一部の添付書類(源泉徴収等)は内容を入力して送信することで、提示又は提出を省略できる
  • マイナンバーに係る本人確認書類の提示又は写しの提出が不要となる(マイナンバーの記載は必要)
  • 送信したデータの控えはPDFで保存できる
  • 書面で提出した場合より、還付金を早く受け取ることができる

最も大きなメリットは、インターネット環境さえあれば自宅でも事務所でも好きな場所から確定申告ができること。確定申告時期は税務署も街中に特設会場を設置し、確定申告に関する相談を受け付けている。しかしそれでも例年大変混雑しており、地域や時間帯によっては何時間も待たされることも。ただでさえ大変な確定申告の準備に加えて、当日の混雑にストレスを感じる人も多いだろう。しかしe-taxなら、こうした混雑からも解放される。インターネットバンキングやモバイルバンキングを利用して納税できるため、わざわざ銀行やATMへ出向く必要もなくなる。忙しいビジネスマンにとっては、メリットの大きい申告方法である。

デメリット

反対にデメリットは、初回の事前準備が大変なことが挙げられる。やはり初めてだと分からないことが多く、準備しなければならないものもある。「面倒だし直接提出した方が早い」

という意見があるのも実情だ。しかしやってみるとそこまで難しいことではなく、慣れてしまえばe-taxの方がぐんと確定申告の負担が軽くなることが分かる。

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e-taxで確定申告の手続きを行う具体的なやり方

では、具体的にe-taxで確定申告の手続きを行うにはどうしたら良いのか。2019年1月以降、e-Taxを利用した電子申告には大きく以下の2つの方法がある。

  • マイナンバーカード方式
  • ID・パスワード方式 

どちらも事前準備で用意するものが異なるだけで、全体の流れは同じである。ここでは、その全体の流れについて解説していく。

①事前準備を行う

マイナンバーカード方式

マイナンバーカードを取得する。マイナンバーカードは居住地の市役所や区役所で発行できるが、時間がかかることもあるため確定申告の期限に余裕を持って行っておくこと。申請の際には、マイナンバー制度開始後に送付された、マイナンバー通知書が必要である。また、ICカードリーダライタ、もしくはNFC対応のスマートフォンを用意しておく。

e-Taxを利用するために必要なソフトウェアもインストールしておく。Windowsの場合は、ソフトウェアを同時にインストール可能な「事前準備セットアップ」ファイルを利用できる。Macの場合は、ルート証明書や公的個人認証サービス利用者クライアントソフトなどをそれぞれダウンロードする。

ID・パスワード方式

運転免許証等の本人確認書類を持って税務署へ行き、e-Tax用のID・パスワードを取得する。平成30年1月以降に確定申告会場などで既にID・パスワード方式の届出完了通知を受け取っている場合は、それを利用できるため新たに取得しなくても良い。またパソコンやスマートフォンなど、確定申告を行う端末のインターネット環境を整えておく。

②確定申告書を作成する

事前準備が完了したら、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」に進み申告書を作成する。まず「申告書・決算書・収支内訳書等・作成開始」をクリックし、左側にある「e-tax」を選択。「利用識別番号(16ケタ)」の有無を選択し、利用識別番号がない場合は「開始届出書」を提出。ある場合は「利用識別番号」と「e-taxの暗証番号」を入力する。

③申告データを送信する

自分で作成した書類であることを証明するために、電子署名及び電子証明書を添付する。自分で行う場合はマイナンバーカードなどの電子証明書を登録し、税理士が代行するときは会計事務所などの情報を入力する。ID・パスワード方式による申告手続きを行う場合については、電子署名は不要。各ソフト・コーナーの画面に従い、申告・申請データを送信する。納税は、事前に税務署に届け出た預貯金口座から振替で納付する「ダイレクト納付」のほか、インターネットバンキングを利用した納税も可能だ。それぞれ利用可能な金融機関が異なるので、自分の持っている口座が利用可能かどうか確認しておこう。

納税後は、インターネットを利用して納税証明書の交付請求を行える。書面の納税証明書を税務署窓口または郵送で受け取ることができる。また、電子納税証明書としてファイルで取得することも可能だ。

e-taxで医療費控除する方法

申告する本人や生計を一にする配偶者、その他親族が支払った医療費について、一定額を超えた場合は所得控除を受けられる制度。以下のとおりに計算した金額を、医療費控除として所得金額から差し引ける。

(1年間に支払った医療費の総額ー保険金などで補てんされる金額)ー10万円=医療費控除額

基本的には年間の医療費が10万円を超えた場合に対象となるが、所得の合計額が200万までの方は、所得の合計額の5%の金額が医療費総額から差し引かれる。また、控除額の上限はいずれの場合も200万円である。病院で受けた診察や治療にかかる費用では医療費控除が使えるが、ドラッグストアなどで自分で購入した特定の医薬品購入額も控除の対象となる。ただし、世帯での年間購入額が12,000円を超えた場合に限る。対象商品を購入した場合は、レシートを保存しておこう。

e-taxの申告でも医療費控除はできる。具体的な流れは以下の通りだ。

  1. 「確定申告書等作成コーナー」から申請書を作成し、該当年度分の「申請書等作成メニュー」で「所得税」をクリックする。
  2. 所得や所得金額に関する情報を入力していく。
  3. 医療費控除に関する情報を入力する。
  4. 医療費の詳細を入力する(医療費控除の「入力する」をクリックする)。
  5. 「医療費控除を適用する」をクリックする。
  6. セルフメディケーション税制を利用する場合は、「セルフメディケーション税制を適用する」をクリックする。
  7. 入力方法を選択する。
  8. 還付される金額を確認し、還付受取方法を入力する。
  9. 作成した内容を確認し、送信する。

入力方法は、以下の4つから選択できる。

  • 領収書から入力
  • 医療費集計フォームを読みこんで明細書を作成
  • 医療費の合計額のみ入力
  • 医療費通知

自分のやりやすい方法を選んで申告しよう。ただし医療費通知にはタイムラグがあることが多く、申告時点では10月分までしか通知が来ていないということも。申告前に1年間分の医療費が記載されているかをしっかり確認しておく必要がある。もし申告期限までに1年間分の医療費通知が間に合わなければ、他の方法を選択しよう。送信でも、印刷でも、作成したデータは保存できる。次回の申請時に迷わないように保存しておくと良いだろう。

e-taxでふるさと納税

地方自治体に寄付を行うことで、返礼品を受け取れて、所得税や住民税が優遇されるふるさと納税。その優遇を受けるためには原則として確定申告が必要だ。確定申告を行わずに控除を受けることができるワンストップ特例制度もあるが、法人や個人事業主として収益を得ている方はこの制度は利用できない。ここでは、e-taxでふるさと納税の控除を受けるための流れをご紹介する。

  1. 所得控除の内容から「寄付金控除」をクリックする。
  2. 寄付金控除、政党等寄付金等当別控除で「寄付した年」を入力する。
  3. 寄付金の種類を選ぶ(都道府県、市町村に対する寄付金(ふるさと納税))
  4. 寄付した合計額を入力する。
  5. 自治体名や住所を入力する。
  6. 1カ所以上の市町村へふるさと納税をした場合は、「もう1件入力する」をクリックする。
  7. すべての納税先の情報を記入したら「入力終了」を押す。
  8. 還付金を確認する。

郵送や窓口で申告する場合は、「寄付金受領証明書」が必要だが、e-taxでは添付の必要はない。しかし添付の必要がないだけで、確定申告期限から5年間は入力内容の確認のために保管しておかなければならない。また寄付金額等を記入しなければならないので、自分が寄付した金額を確認するためにもあった方が良い。寄付金受領証明書は返礼品を受け取った際に一緒に届くか、後日郵送される場合もある。紛失した場合は、寄付した自治体に問い合わせると再発行してもらえる。確定申告期限に間に合うように大切に保管して、紛失した場合は早めに問い合わせておこう。

ふるさと納税について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてほしい。

e-taxを確実に行うなら

e-taxを確実に行うなら、クラウド会計ソフトの活用はマストと言って過言では無い。
また、インターネット上で完結するというe-taxの性質上便利な側面も有りながら、経営者自らや、経理担当だけで完結するには少々ハードルが高いのが実情だと思われる。
税理士や公認会計士のサポートが充実している会計ソフトを選択する事によって、税務申告の工数は圧倒的に削減される。
弊社TaxTechnologyが運営する会計ソフト10bookであればe-taxにもスムーズに対応出来る上、税理士・公認会計士のサポートも充実しコストパフォーマンスも非常に高い。
是非検討して見て欲しい。

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まとめ/監修税理士・公認会計士コメント

今回はe-taxでの税務申告を考えられている創業初期経営者の方に向けてe-taxで確定申告を実施する際の必要書類やメリットデメリット・具体的なやり方など網羅的に解説した。今まで混雑した税務署で行っていた確定申告を自宅で好きな時間にできるとなると、助かる個人事業主、法人の方は多いだろう。将来的には中小企業にも電子申告の義務化が検討されているので、今のうちから慣れておきたい。確定申告の詳しい方法について知りたい方は、以下の記事を参考にしてほしい。

2020年9月6日税務サポート