減損処理とは?言葉の定義から対象となる固定資産まで詳しく解説

2020年11月13日

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

1x1.trans - 減損処理とは?言葉の定義から対象となる固定資産まで詳しく解説

土地や建物、設備など取得した固定資産を利用して事業を行う際、思ったような利益を出せないケースもある。
こういった事態に対応できるよう設けられているのが「減損処理」だ。

今回は、減損処理の定義や対象となる固定資産など、詳細を解説していく。

この記事を読むメリット

・減損会計の微妙な言葉の定義が分かり、また具体的に対象資産や会計手順まで抑えることができる

減損会計とは?

まず初めに、減損会計の定義や概要について確認していこう。

「減損」の意味

減損とは会計用語の「減損処理」を省略した言葉として用いられることが多い。減損処理は、固定資産に関わる会計処理のひとつで、「資産の価値を減少させる」処理のことである。

購入した固定資産が、予想よりも低い売上しか回収できない場合は、この処理を利用して差額分を調整し、資産価値を下げていく。

経済活動において、固定資産が必ず予想通りの売上を出してくれるとは限らない。あらかじめ設定した金額よりも低い売上になってしまうと、帳簿上の金額と実際に手元に入る金額に差が生じてしまう。

この帳簿上の差を無くすために、減損処理が行われるわけである。

減損会計

減損会計とは、固定資産の売上を減損処理によって調整する会計手法だ。減損処理とほぼ同義になる。

固定資産の価値を変更することは、一見すると会計規則に違反しているように見えるが、あくまでも「現実の数値と帳簿上の数値の調整」であるため、減損会計を用いることは会計規則上、問題ない。

実際に存在しない収益をあたかも存在するかのように帳簿するのは「粉飾」になるので、その点、減損会計と混同しないよう注意する必要がある。

減損処理の対象となる3種類の固定資産

減損処理の対象となる固定資産として、下記の3種類が挙げられる。

・有形固定資産
・無形固定資産
・投資その他の資産

有形固定資産

有形固定資産とは、実在する形ある資産を指す。たとえば、設備機械や建物、土地などが該当する。

広大な土地や建物を購入して、事業投資を行うケースが多いが、予想外の収支になった際は、損失額と予想利益の調整を行う必要がある。

無形固定資産

無形固定資産とは、現実世界では見えない資産のこと。

たとえば、のれん(営業権)、特許権、ソフトウェアなどが挙げられる。この中でも、のれんは業績によって数値変動する可能性が高い。

投資その他の資産

投資その他の資産は、有価証券などの資産を指す。

購入した際の価格よりも、現在の価格が下がってしまい、元に戻る気配がない際は減損処理を実行する

1x1.trans - 減損処理とは?言葉の定義から対象となる固定資産まで詳しく解説

減損会計のメリット・デメリット

1x1.trans - 減損処理とは?言葉の定義から対象となる固定資産まで詳しく解説

減損会計を利用には、メリットもあればデメリットも存在する。

双方を把握しておくことで、減損会計を効果的に利用することが可能だ。それでは、メリット・デメリットをそれぞれ確認していく。

減損会計のメリット

減損会計を利用することで、将来的な損失を未然に防ぐことができる。例えば、のれん(営業権)などの資産価値が低下してしまい、減損処理をしないまま放置してしまうと、将来「損失」として計上されてしまう。

減損処理で、赤字は生じてしまうが、将来の損失を無くすことができるので、長期的なリスクヘッジにつなげることが可能だ。また、減損処理によって不良資産が減ると、資産の効率性が高くなる。

資産効率の向上により、自己資本利益率(ROE)、総資本事業利益率(ROA)の数値を高めることも可能。ROEやROAの数値が良くなると、投資家などから高い評価を受けやすくなるメリットもある。

減損会計のデメリット

減損会計を利用した場合、その年度は赤字となる。したがって、「なぜ減損処理を行ったのか」を取引先や株主、投資家に説明しなければいけない。

説明が不足していると「将来の配当が減るのでは?」という不安を投資家に連想させることになる。最悪の場合、株主が株を手放して、売却されてしまうこともあるので要注意だ。

また、デメリットとして繰越利益剰余金が減ってしまう可能性もある。繰越利益剰余金とは、企業が創業してから積み重ねてきた利益の金額である。

減損処理の金額によっては、繰越利益剰余金に悪影響を及ぼしていまい、企業価値が落ちてしまうケースもある。

長期的な目で見ると、企業価値が落ちることは融資や投資をしてもらう際の足かせになってしまうので、これらの点も考慮して減損処理を行う必要がある。

減損処理の手順

1x1.trans - 減損処理とは?言葉の定義から対象となる固定資産まで詳しく解説

減損処理の手順は、大まかに下記の流れとなる。

  1. 固定資産のグルーピング
  2. 減損の兆候を把握
  3. 減損損失の確認
  4. 減損損失の測定
  5. 減損処理の実行

①固定資産のグルーピング

まず初めに、固定資産のグルーピングを行う。

グルーピングをする際は、キャッシュフローを生み出す単位で分けていくことが多い。(店舗や支店ごとにグルーピングしていくイメージである)

②減損の兆候を把握

グルーピングした資産の中で、減損の兆候があるか否かを確認していく。

営業活動で損失を出していたり、キャッシュフローのマイナスが恒常化している場合は、減損の兆候ありと見なしていく。

③減損損失の確認

減損の兆候がある資産に対して、帳簿価額が大きい場合は、減損損失の確認作業に入っていく。このフェーズにおいて、減損処理の方向性を決定することが多い。

*帳簿価額とは、資産取得時の価額から減価償却分を引いた残額のこと

④減損損失の測定

減損損失で実際にどれくらいの金額を調整するか、測定を実施する。

損失額は、最終的に取引先や株主などに説明する必要があるため、表面上の損失のみならず、「なぜ減損損失が発生する事態に至ったのか」という点までクリアにしておく必要がある。

⑤減損処理の実行

測定した金額を元に、減損処理を行う。帳簿に変更金額・勘定科目を記帳して、処理を完了させていく。

1x1.trans - 減損処理とは?言葉の定義から対象となる固定資産まで詳しく解説

減損会計のタイミングは?

減損会計のタイミングは、「赤字が継続的に発生している」「経営環境が悪化している」といった状態になったときだ。

この状態に陥っていると、固定資産に投資した金額が回収できない可能性が高まる。利益を出せていない状態は、すでに減損処理のタイミングが迫っていると考えて良いだろう。

以下は、株式会社TaxTechnologyの担当税理士・公認会計士にバックオフィス業務を代行することができるアウトソーシングサービスの紹介ページである。

「バックオフィス」の業務を丸投げも検討している方は、以下をクリックし、ぜひ確認していただきたい。

1x1.trans - 減損処理とは?言葉の定義から対象となる固定資産まで詳しく解説

まとめ

減損処理は、固定資産を用いた事業で想定した利益が出せない場合に利用できる会計処理だ。減損処理で、損失と予想利益の調整が可能になる。

また、ROEやROAの数値改善も可能になる点、減損処理のメリットだ。ただし、減損処理を実行すると、その年度は赤字となるため、減損処理に至った経緯を株主や取引先に説明する必要もある。

十分な説明が行えないと、投資家たちが株を売却してしまうことにつながりかねない。メリット・デメリットを踏まえた上で、減損処理を活用することが肝要だ。

2020年11月13日税務サポート

Posted by taxtech-editor