【2020年1月~3月創業の法人対象】対象拡大|持続化給付金制度 完全解説

2020年6月24日

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2019年創業で2019年の事業収入が存在しない(0円)事業者及び2020年1月以降創業の事業者も対象に対象拡大。

2020年1-3月に創業した事業者が持続化給付金の対象になった。
すでに申請および給付が始まっている令和2年の第1次補正予算にもとづく持続化給付金では残念ながら対象外となり、事業を取り巻く環境は同じにもかかわらず、無念な想いをした事業者は多かっただろう。
しかし、朗報だ。
令和2年6月12日に成立した第2次補正予算で2020年1-3月に創業した事象者も「2020年新規創業特例」として持続化給付金の対象となった。またあわせて2019年1月から同年12月の間に法人を設立したものの2019年の事業収入が存在しない(0円)事業者も本特例の対象となった。

持続化給付金は基本的には自身で資料を準備出来る制度設計になっているものの、この特例を利用するにあたって必要となる「持続化給付金に係る収入等申立書」には税理士による正確性の確認および署名または記名押印入が必要となる。税理士がまだ決まっていない会社はすぐに探す必要があるので留意されたい。

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当メディアを運営する株式会社TaxTechnologyでは税理士・公認会計士による持続化給付金無料申請サポートを実施しております。以下ページにて詳細をご確認下さい。

・持続化給付金の制度概要

持続化給付金の概要はこうだ。
2020年のある月の事業収入が前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に、中小法人等であれば200万円、フリーランスを含む個人事業者は100万円を上限に現金を支給する制度である。
融資や補助金などは相手方の審査があるため申請しても不確実性を伴うが、この制度は給付対象者要件を満たし、必要な書類とともに申請すれば給付される、
つまり不確実性が排除されていることが一番の特徴であると筆者は考える。
そのため給付対象者要件の確認および必要書類をそろえて不備なく申請することが重要となってくる。
参考までに「持続化補助金(小規模事業者持続化補助金)」というものがあるが、別物である。
なお、本サイトでは法人を対象としているため、特にことわりがない限り、事業者は中小法人等を指している

給付対象者要件

次の(1)から(3)を全て満たせば支給対象となる。ここでのポイントは特例があること。形式上(1)から(3)の要件にはあてはまらなくとも、(4)の特例の要件にあてはまることがある2019年新規創業特例、2020年新規創業特例(新設)、法人成り特例などあるため、各特例の要件を熟読して、適用の可否をしっかりと見極めることが重要だ。

(1)中小法人等であること

2020年4月1日時点において次のいずれかを満たす法人であること

  • 資本金の額又は出資の総額が10億円未満であること。
  • 資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員の数が2,000人以下であること。

(2)事業継続性および意思

2019年以前から事業により事業収入(売上)を得ており、今後も事業を継続する意思があること。

(3)事業収入(売上)の50%以上の減少

2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等(以下、「コロナの影響」)により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月(「対象月」という。)があること。

(4)特例

上記(1)から(3)について、例えば創業1期目や季節変動のある事業者など不都合が生じるケースがあるため、次の特例が設けられている。なお⑧の2020年新規創業特例は第2次補正予算で新設されている。

  • 2019年新規創業特例(2019年1月から12月までの間に設立した法人に対する特例。2019年に事業収入が存在しない場合は⑧の2020年新規創業特例を選択することになる)
  • 季節性収入特例(月当たりの事業収入の変動が大きい法人に対する特例)
  • 合併特例(事業収入を比較する2つの月の間に合併を行った法人に対する特例)
  • 連結納税特例(連結納税を行っている法人に対する特例)
  • 罹災特例(2018年又は2019年に発行された罹災証明書等を有する法人に対する特例)
  • 法人成り特例(事業収入を比較する2つの月の間に個人事業者から法人化した者に対する特例)
  • NPOや公益法人特例(特定非営利法人及び公益法人等に対する特例)
  • 2020年新規創業特例(2020年1月1日から3月31日までの間に設立した法人および2019年1月から12月までの間に設立したものの2019年に事業収入が存在しない法人に対する特例)

詳細はリンク先のP.26以降を参照されたい。

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持続化給付金の金額

1.通常の給付金の算定方法

通常の給付金の算定方法は次のとおり。上限が200万円であること、対象月は事業者が任意で選べること、特例があることがポイントだ。給付金の算定方式を理解し、可能であれば多く給付される月を対象月として選択しよう。

S=A-B×12

S:給付額(上限200万円)
A:対象月の属する事業年度の直前の事業年度の年間事業収入
B:対象月の月間事業収入

例えば3月決算の会社で対象月が2020年4月のケースは次のとおりだ。

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  1. 直前の事業年度(2019年度)の年間事業収入:550万円(A)
  2. 2020年5月の月間事業収入:10万円(B)
  3. 対象月の前年同月(2019年5月)の月間事業収入:30万円
  4. 対象月の要件確認: 2020年5月の月間事業収入(10万円)は前年同月の月間事業収入(30万円)から50%以上減少しているため、2020年5月は対象月となる。なお、2020年4月は月間事業収入(40万円)が前年同月比で20%の下落にとどまり、50%以上下落していないため対象月とはなり得ない。
  5. 給付額:(A)-(B)×12=550万円-10万円×12=430万円 > 200万円(上限額)となるため、上限額の200万円が給付額となる。

なお、2020年6月は月間事業収入(30万円)が前年同月比で63%の下落はとなっているため、対象月として選択可能だが、その場合は給付額が190万円(550万円-30万円×12)となってしまうため注意しよう。

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2.2019年新規創業特例

2019年1月から12月までの間に法人を設立した場合の2019年新規創業特例の算定式は次のとおりだ。

S=A÷M×12-B×12

S:給付額(上限200万円)
A:2019年の年間事業収入
M:2019年の設立後月数(設立した月は、操業日数にかかわらず、1か月とみなす)
B:対象月の月間事業収入

2019年10月に開業、2020年5月を対象月としたケースは次のように計算される。

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  1. 2019年の年間事業収入:180万円(A)(2019年度の事業収入ではないので注意)
  2. 2019年の月平均事業収入:60万円
  3. 2019年の設立後月数:3か月(M)(2019年10月~12月)
  4. 2020年5月の月間事業収入:20万円(B)
  5. 対象月の要件確認:2020年5月の月間事業収入(20万円)は2019年の月平均事業収入(60万円(上記②))から50%以上減少しているため、2020年5月は対象月となる。
  6. 給付額:A÷M×12–B×12=180万円÷3か月×12-20万円×12=480万円>200万円(上限額)となるため、上限額の200万円が給付額となる。

3.2020年新規創業特例

今回新設された2020年新規創業特例(2020年1月から3月に設立)の算定式は次のとおりだ。

S= A÷M×6-B×6

S:給付額(上限200万円)
A:2020年1月から3月の間の事業収入の合計
M:法人設立月から2020年3月までの月数(法人設立した日の属する月は、操業日数に関わらず、1ヶ月とみなす。)
B:2020新規創業対象月の月間事業収入

2020年2月に法人設立、2020年6月を対象月としたケースは次のように計算される。

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①2020年1月から3月の間の事業収入の合計:60+80=140万円(A)(2月設立なので2020年1月は存在せず、2月および3月の合計のみとなる)
②法人設立月から2020年3月までの月数:2か月(M)(2月設立なので2020年1月は存在せず、2月および3月の2か月のみとなる)
③2020年6月の月間事業収入:30万円(B)
④対象月の要件確認:2020年6月の月間事業収入(30万円)は2020年1月から3月の月平均の事業収入(140万円÷2=70万円)から50%以上減少しているため、2020年6月は対象月となる。
⑦給付額:A÷M×6-B×6=140万円÷2か月×6-30万円×6=240万円>200万円(上限額)となるため、上限額の200万円が給付額となる。

なお、2019年1月から12月の間に設立し、2019年に事業収入がないケースの算定式は次のとおりとなる。

S= A÷M×6-B×6


S:給付額(上限200万円)
A:2020年1月から3月の間の事業収入の合計
M:2019年の事業収入が存在しないため、本特例を用いる場合は3となる。
B:2020新規創業対象月の月間事業収入

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4.その他の特例

上記の以外の特例の給付金計算方法や詳細はリンク先のP.26以降を参照されたい。

申請期間

申請期間は令和2年5月1日から令和3年1月15日までとなっている。現時点では要件を満たしていなくとも、今後2020年12月までにコロナの影響により事業収入の50%以上の下落がある月が発生すれば申請すればよい。ただ、後述のとおり申請にあたっては書類が必要となるため十分な時間をもって申請することが望まれる。

申請書類

申請書類(申請内容を証明する書類等(証拠書類等))は次のとおり。特例を利用した場合は⑤のとおり申請書類が異なる点に留意。準備した書類はスキャナー、デジタルカメラまたはスマホカメラでPDF、JPGまたはPNGに電子化する。基本的に確定申告など過去に提出しているものや、(特例利用時は)登記事項全部証明書など役所で発行されるものであるため集めることで足りるが、②の売上台帳などは記載の作法があるため新たに作成する必要があること及び、日々管理や月次決算をしていない場合は集計をする必要があることがポイントだ。なお、社名変更等により、現在の法人名と証拠書類等の法人名が異なる場合も、法人番号に変更がない場合は、同一の法人とみなして申請を行える(合併により社名や法人名が変更している場合は合併特例を参照のこと)

①確定申告書類

対象月の属する事業年度の直前の事業年度の確定申告書別表一の控え、及び法人事業概況説明書の控え。(少なくとも、確定申告書別表一の控えには収受日付印が押印されていること。e-Taxによる申告の場合は「受信通知」を添付することが必要。)

相当の自由により控えを提出できない場合や収受日付印が押されていない場合は、次のいずれかが必要となる。

・2事業年度前の確定申告書類の控え
(この場合事業収入下落要件や給付額算出において対象月と比較するのは直前の事業年度ではなく2事業年度となる点に注意)
・税理士の署名押印済の前事業年度の事業収入証明書類

②対象月の月間事業収入がわかるもの

申請する対象月の事業収入額がわかる書類として売上台帳、帳面その他の申請日の対象月の属する事業年度の確定申告の基礎となる書類など。フォーマットの指定はなく、会計ソフト、ソフト等から抽出したデータ、エクセルデータ、手書きの売上帳などでもよい。ただし次の事項に留意。

・給与明細、通帳の写し、レシート、請求書等は認められない。
・提出するデータが対象月の事業収入であることを確認できるよう、対象となる【売上月】を記載
・対象となる売上月の【売上額】の【合計】を記載
・売上額が0円の場合は、【対象となる売上月】の売上額が【0円】であることを明確に記載

③通帳の写し

法人名義(または代表者名義)の通帳の写し(銀行名・支店番号・支店名・口座種別・口座番号・名義人の部分)

④その他事務局が必要と認める書類

申請段階では特に準備は不要。事務局から問合せがあれば対応すればよい。

⑤特例を利用した場合の追加資料等

特例を利用した場合は次表のとおり通常ケースから一部変更または追加がなされている。

区分確定申告書類対象月の
月間事業収入がわかるもの
通帳の写し追加資料
通常対象月の属する事業年度の直前の事業年度の確定申告書類の控え必要必要
2019年
新規創業特例
対象月の属する事業年度の直前の事業年度の確定申告書類の控え必要必要・履歴事項全部証明書
季節性収入特例基準期間の属する事業年度の確定申告書類の控え
※基準期間が複数の事業年度にまたがる場合には当該期間の全ての期間分
必要
(対象期間にかかるもの)
必要
合併特例合併前の法人のそれぞれの2019年の年間事業収入がわかる確定申告書類の控えの全て
※2019年中に複数の事業年度が存在する場合は、2019年中の全ての月間事業収入がわかるもの
必要必要・履歴事項全部証明書
連結納税特例各法人ごとに給付申請を行う場合は、各法人の直前の事業年度の連結法人税の個別帰属額等の届出書と法人事業概況説明書必要
(申請する法人の
対象月にかかるもの)
必要
罹災特例罹災証明書等の前事業年度の確定申告書類の控え必要必要・罹災証明書等(ただし発行年は、2018年又は2019年のものに限る)
法人成り特例個人事業者として提出した2019年分の確定申告書類の控え必要必要・法人設立届
・個人事業の開業・廃業届出書
・履歴事項全部証明書
NPO法人や公益法人等特例事業活動収支計算書、事業活動計算書、正味財産増減計算書など、対象月の属する事業年度の直前の事業年度の年間収入がわかる書類必要必要・履歴事項全部証明書又は
根拠法令に基づき公益法人等の設立について公的機関に認可等されていることがわかる書類等
2020年新規
創業特例
不要不要必要・持続化給付金に係る収入等申立書
・履歴事項全部証明書(設立日が2020年1月1日から3月31日のものに限る)

2020年新規創業特例の追加資料にある「持続化給付金に係る収入等申立書」は、法人番号や法人名などの他に2020年の月別の事業収入の記載のみならず、税理士による署名または記名押印も求められている。そのため顧問税理士や会計・税理士事務所が決まっていない事業者は、税理士を探すことから始める必要があることと、事業収入の根拠を準備する必要がある点に留意しよう。

必要な書類の詳細やお作法はリンク先のP.15~18、P.26以降を参照されたい。

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申請方法

申請はWeb上で行う。持続化給付金の申請用HP (https://www.jizokuka-kyufu.jp/)にパソコンかスマホでアクセスし、「申請する」をクリックして順次埋めていく。電子申請が困難な事業者は申請サポート会場で行えるので、会場と日時の確認および予約をして訪問しよう。https://www.jizokuka-kyufu.jp/support/

申請後、申請内容に不備・不明点があれば、メールで連絡される。そのため登録後のマイページを確認して、対応する必要がある。https://mypage.jizokuka-kyufu.jp/loginpage

支給タイミング

申請後、通常2週間程度で振込がなされることになっている。ただし特例を利用した申請の場合は時間を要することがある。参考リンク(https://www.jizokuka-kyufu.jp/news/20200527.html)

よくある書類の不備

不備があると手間がかかり、振込が遅れる。よくある不備一覧が公表されているため、申請前に確認するとよい。https://www.jizokuka-kyufu.jp/news/20200527.html

その他

持続化給付金に関しては経済産業省および申請受付のサイトが充実しているため、詳細はこちらを参照するとよい。
参考:https://www.meti.go.jp/covid-19/jizokuka-kyufukin.html
参考:https://www.jizokuka-kyufu.jp/

監修税理士・公認会計士コメント

持続化給付金制度の趣旨から迅速な振込の実現をするため、全体として手続は簡単に構成されており、また時の経過や申請件数の増加とともに給付金申請サイトの説明によるサポートが充実してきている印象を受ける。そのため自身でも申請することができる。しかし特例の適用や売上台帳の作成などがあるため、正確に不備なく申請書類を準備するのは意外と時間と手間がかかるのが現実であろう。問合せのコールセンターが準備されているものの、筆者が電話する限りは繋がりにくい。そのため、時間の節約と迅速な振込を達成するために、給付金の申請をサポートしてくれる税理士、会計士、行政書士に相談してみるのも一考だ。なお、確定申告書類を提出できず事業収入証明書類が必要なケース、拡大されて対象となった2020年新規創業特例を利用するケースは税理士による署名または記名押印が必要となるため、顧問税理士や会計・税理士事務所が決まっていない事業者は、税理士を探すことから始めよう。

2020年6月24日税務サポート

Posted by taxtech-editor