【具体的に解説】個人事業主が行うべき5つの節税対策!
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個人事業主になると、雇われて働いていたときよりも課される税金の種類が増えてくる。
個人事業主ならではの税金もあり、事前に把握しておかないと「こんなに税金が引かれるのか」と驚愕してしまうかもしれない。
個人事業主が税金を減らすためには「節税」が必須となる。本記事では、個人事業主が行うべき5つの節税対策について、詳細を解説していく。
この記事を読むメリット
・個人事業主が行うべき節税対策が具体的にわかる
目次
個人事業主が納めなければならない4種の税金
個人事業主が納めなければならない4種の税金として、
・所得税
・消費税
・住民税
・個人事業税
が挙げられる。これらの税金について、それぞれ詳細を確認していこう。
所得税
所得税とは、1月1日~12月31日までの1年間の所得から、所得控除を引いた金額に対して課せられる税金のこと。
所得税の税金計算では「累進課税」が適用される。累進課税とは、所得金額が多くなるほど税率が高くなる制度。稼いでいる人ほど、所得税が高くなる形だ。
消費税
消費税とは、商品を購入したり、各種サービスを受けたりした際に支払う金額に課せられる税金である。
消費税の税率は、原則として10%となっているが、下記の商品・サービスに関しては軽減税率が適用され、税率が「8%」となっている。
・飲食料品(酒類は除く)
・テイクアウト、出前
・学校給食、有料老人ホームなどで提供される食事
・ホテルや旅館の客室冷蔵庫内の飲料
・果物狩りで収穫した果物の購入
・定期購読の新聞
個人事業主の場合、消費税を「国(地方公共団体)に納める」側になる。お客さんから消費税を預かって、その分を納めるという形だ。
ただし、すべての事業主に消費税の納税が定められている訳ではない。消費税は「事業年度の売上が1,000万円以上」の場合に、納税の義務が生じる。
消費税を納税するタイミングは、売上が1,000万円以上に到達した年度の「2年後」になる。したがって、消費税の課税は基本的に「開業してから3年目」が基準になるので、覚えておこう。
売上高が1,000万円を超えて、2年後に課税事業者となることが決まったら、税務署に「課税事業者届出書」を提出しなければいけない。
提出が遅れても罰則は特にないが、提出することで税務署から消費税の申告書・納付書が届くようになる。消費税申告の度に税務署へ出向く必要がなくなるので、届出書を提出した方が後々楽になる。
住民税
会社員の場合は、住民税は給料から自動で引かれていたケースが多い。これに対して、個人事業主の場合は、自身で住民税を申告・納税しなければいけない。
住民税は住んでいる市区町村によって税率が異なってくるので、確認しておこう。通常、住民税は4回の分割払いで納付する(6月・8月・10月・翌1月がそれぞれ納付時期になる)。
分割払いでなく、一括払いで住民税を納付することも可能だ。
個人事業税
個人事業税は、個人事業主が市区町村に納める税金となる。個人事業主に課される独自の税金だ。個人事業税は、業種によって税率が異なってくる。
第1種事業 :物品販売業、運送取扱業・飲食店業・出版業などの37事業 → 5%
第2種事業 :畜産業・水産業・薪炭製造業 → 4%
第3種事業 :医業・公認会計士業・理容業・美容業などの28事業 → 5% あんま・柔道整復など、その他の医業に類する事業、装蹄師業 → 3%
上述の事業に当てはまらない事業の場合は、個人事業税は課されない。たとえば、本や雑誌の執筆を行う「執筆業」の場合は、上述の事業に含まれないため、個人事業税は非課税となる。
Webライターとして記事執筆を行っている場合も、自治体によっては「文筆業」という扱いになるため、非課税になるケースがある。
ただし、自費出版を行っている場合や複数の企業から原稿料をもらっている場合は、他の事業に該当することもある。
自身が行っている事業が個人事業税の課税に該当するか分からない場合は、管轄の税務署に問い合わせて確認しよう。
節税のための5つの対策
個人事業主が税金を減らすためには、節税を行うことが必須だ。節税を行わなければ、税金は減ることはないといって良い。節税のために行うべき5つの対策として、下記の方法が挙げられる。
・青色申告特別控除 ・経費計上をこまめに行う ・生命保険など各種保険に加入する ・減価償却の特例を利用する ・経費なる税金を利用する
それではさっそく、青色申告特別控除から解説をしていく。
①青色申告特別控除
青色申告特別控除とは、確定申告で「青色申告」を利用することで受けられる控除となる。確定申告には、「青色控除」と「白色控除」の2種類があり、特に申請をしなければ、確定申告では「白色申告」が適用される。
青色申告では、複式簿記による記帳を行って、損益計算書・貸借対照表などの決算書を作成して確定申告を行う。
白色申告と比べると、記帳や書類作成の手間がかかってしまうが、その代わりに「65万円」の青色申告特別控除を受けることが可能だ。
白色申告の場合だと、特別控除が10万円のみなので、その差は「55万円」になる。55万円の差は非常に大きいといって良いだろう。
青色申告を行うには、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要がある。原則として、青色申告承認申請書は開業日から2ヵ月以内に提出しなければいけない。
ただ、提出が遅れたからといって罰則がある訳ではなく、青色申告したい年の3月15日までが提出期限となる。
青色申告の方法に関しては、以下の記事をぜひ参考にしていただきたい。
②経費計上をこまめに行う
青色申告を行うことで、経費にできる費用の範囲が広がる。たとえば、家族従業員に給与を支払う場合、青色申告では基本的に全額経費として計上することが可能だ(ただし、給与の金額は適正な範囲内)。
白色申告の場合だと、配偶者が86万円、その他の親族は50万円までしか経費計上できない。青色申告で節税を効率よく行うために、経費計上できるものはこまめに計上することが肝要になる。
③生命保険など各種保険に加入する
生命保険や介護医療保険などに加入することで、所得金額から一定の金額を控除することが可能だ。生命保険、介護医療保険、個人年金保険の場合は、下記の金額の控除が受けられる。
支払保険料 | 控除金額 |
---|---|
20,000円以下 | 保険料全額 |
20,001円~40,000円 | 保険料×1/2+10,000円 |
40,001円~80,000円 | 保険料×1/4+20,000円 |
80,001円~ | 一律40,000円 |
控除金額の上限は40,000円となる。40,000円以上の控除は受けられないので、注意が必要だ。
④減価償却の特例を利用する
減価償却とは、購入した固定資産の費用を分割して計上してく会計上の手法のこと。一括で経費計上はできないが、数年かけて経費計上を行えるのが特徴だ。
個人事業主の場合、購入した固定資産のうち「10万円以上、30万円未満」の資産を一括で経費計上できる特例が適用される。本来減価償却するものを一括で経費計上できるので、大きな節税効果が狙える。
減価償却の特例を受けるためには、下記の条件を満たすことが必要になる。
・青色申告を行っている
・取得した固定資産の金額が30万円未満で、合計金額が300万円未満である
・青色申告決算書で必要事項を記入して、申告時に提出する
⑤経費なる税金を利用する
個人事業主が納める税金の中で、事業に関連する税金は経費として計上することが可能だ。経費になる税金は「租税公課」という勘定科目で処理される。租税公課として利用できる税金は下記の通り。
・消費税
・事業税
・固定資産税
・自動車税
・自動車所得税
・不動産所得税
・登録免許税
・印紙税
たとえば、社用車として自動車を保有している場合は、発生する自動車税を税金として計上することが可能だ。事業と関連しない税金(所得税、住民税など)は、経費計上できないので、要注意。 “
「法人化」の検討
個人事業主で行える節税方法よりも、より広範な範囲で節税を行いたい場合は「法人化」を検討するのも有効だろう。法人化することで、下記の節税メリットを享受できる。
・所得税を減らせる
・経費の範囲が個人事業主よりも広がる
・消費税を2年間支払わなくてよい
・赤字の繰越期間が9年間となる
法人化することで、「法人税」が適用されることになる。個人事業主の所得は「累進課税」により、所得金額が大きいほど税率が高くなる。
これに対して、法人税の場合は累進課税は適用されず、所得金額800万円を基準にして税率が15~23.2%の範囲で固定される。所得金額が大きい法人ほど、法人税の負担が低くなるので、実質的に所得税を減らすことにつながる。
経費の範囲も個人事業主のよりも広くなる。たとえば、法人であれば役員消費や福利厚生費などを経費計上することが可能だ。
法人化することで、個人事業主では得られない節税メリットが手に入るので、税金をより抑えたい場合は法人化を検討してみよう。開業の方法などは、ぜひ以下の記事を参考にしていただきたい。
まとめ
個人事業主で税金を減らす場合は、節税を徹底して行うことが肝要だ。節税をするか否かで、最終的に支払う税金額に大きな差が生まれてくる。
本記事で紹介した節税方法を実践してもらい、税金を減らしていこう。さらに税金を減らしていきたい場合は「法人化」するのも一つの手だ。
法人化することで、累進課税が適用されなくなる等、各種節税メリットを享受できる。まずは個人事業主で行える節税を試してもらい、それでも足りないと感じたら法人化に移ってみることをおすすめする。