【ROE(自己資本利益率)とは?】難解なことを分かりやすく解説!

2020年10月4日

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経営や投資において、「ROE(自己資本利益率)」という言葉を耳にしたことのある方は多いのではないだろうか。ROE(自己資本利益率)は、投資判断のためには必ず理解しておきたい大切な指標。また経営者にとっては、株主からの投資を呼び込む目安となる。そこで今回は創業初期経営者の方などに向けて、ROE(自己資本利益率)とは何か、ROEの計算方法から業界目安、活用シーン、ROAとの違いなどを網羅的に解説していく。

この記事を読むメリット

  • ROE(自己資本利益率)に関して網羅出来るようになる

ROE(自己資本利益率)とは?分かりやすく解説!

ROEとは、株主から預かったお金である「自己資本」のみを使ってどれだけ利益を生み出したかを示す指標のことである。「Return on Equity」の略で、日本語では「自己資本利益率」を意味する言葉だ。投資家が現在重視しているのは、「投下した資本に対して企業がどれだけの利潤を上げられるのか」という点。そのため、株主から見てROEは収益性の指標であり、最も重要視されている。ROEが高いと株主からの投資を呼び込みやすく、株価も上がりやすい。会社の業績にも大きな影響を与える数値であり、経営者にとっても事業運営上の目安とすべき指標である。

基本的にはROEが高ければ高いほど投資価値のある会社だと判断されるが、注意したいのが「財務レバレッジ」だ。レバレッジ(leverage)は「テコ」を表す英語だ。学校で習った「テコの原理」を思い出してほしい。テコを使えば、小さな力でも重いものが持ち上げられる。この原理のとおり、財務レバレッジは自分自身の小さな力=小さな自己資本で、大きなビジネスを行うことを指す。つまり財務レバレッジとは、自己資本の何倍にあたる資金(総資本)を事業に投じているかを表す数値である。「負債 ÷ 自己資本」あるいは「負債 ÷ 総資本」で求められる。財務レバレッジとROEは、互いに逆数となっている。

  • 財務レバレッジ:総資本は自己資本の何倍になるか
  • 自己資本比率:自己資本は総資本の何割を占めるか

事業が好調であればレバレッジ効果がプラスに働きROEを上昇させるが、不調な場合には逆にマイナスに働きROEを下落させる。ROEが高い株式銘柄は投資家に買われやすく、株式投資やM&Aをする上での企業の収益性の判断基準としても重視される。

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ROE(自己資本利益率)の計算方法と目安

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では、ROE(自己資本利益率)はどのように求めて、どれくらいを目安にしたら良いのか。ここではROE(自己資本利益率)の計算式と業界目安をご紹介する。

ROE(自己資本利益率)の計算方法

ROA(総資産利益率)の計算はとてもシンプルで、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)さえあれば簡単に計算できる。ROA(総資産利益率)の計算式は、以下のとおりである。

ROE=当期純利益÷自己資本(期中平均)×100

「当期純利益」とは、一事業年度に計上される収益から、法人税や住民税といった会社が支払うべきコストをすべて差し引いた額のこと。最終利益とも呼ばれ、「会社がどれだけ稼いだのか」の最終的な数値を示したものである。損益計算書(P/L)を見ることで、企業の当期純利益が分かる。

会社の資本は、大きく分けて「自己資本」と「他人資本」の2つに分類される。自己資本とは、返済する必要がない会社の資金のこと。対して「他人資本」は、負債、銀行などに返済等をする必要がある借入金などの金額を指す。

自己資本は貸借対照表(B/S)の右側下部「純資産の部」から算出できるが、自己資本という項目がある訳では無い。純資産の部は「株主資本」「その他の包括利益累計額」「新株予約権」「少数株主持分」の4つの項目で構成されるが、その多くが株主が出資した資金である「株主資本」が占めている。ROAを計算するときに使う自己資本の値は、このうち「株主資本」と「その他の包括利益累計額」を足し合わせたものが相当する。

ROE(自己資本利益率)の目安

ROEの数値は%で表示される。一般的に、ROEの良し悪しを判断する目安は10%と言われている。10%を上回った企業が優良だといわれており、投資価値のある会社だと判断される。しかし、日本企業のROEの平均値は5%程度。10%を下回っているからといって、一概に投資価値のない会社だとは言えない。

また、業種や環境によってもROEの目安は大きく異なる。たとえば製造業では、工場などの大規模な設備投資が必要となる。そのため必然的に多額の資本がかかってしまい、資本の大きさと比べると利益が小さく見えることがある。このような業種ではROEはどうしても低くなるため、目安の値より多少低くてもさほど気にする必要はない。ROEを比較する場合は、他業種の企業ではなく、同業他社の数値を参考にすることが大切だ。

ROE(自己資本利益率)を活用するシーンとは?

ROEは、株主にとっては自分の投資資金が事業に使われて、どれだけの利潤を上げられたのかを判断する指標となる。投資の重要な判断材料であるため、ROEが低くなれば株主からの評価は下がる。株価が下がることで、資金調達へ悪影響を与えかねない。経営者はROEの悪化を防ぎ、一定水準以上の維持が求める必要がある。

ROAとの違いは?

ROEとよく混同されがちなものに、「ROA」がある。ROAとは、総資産に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す財務指標である。「Return on Assets」の略で、日本語では「総資産利益率」を意味する言葉。ROAの数値が高ければ高いほど、総資産に対して効率よく利益を出しているということになる。

ROAとROEの大きな違いは、負債を含めているか否かという点だ。ROEは返済の必要のない自己資本のみで純利益を比べるのに対して、ROAは負債も含めて計算する。そのためROAが高いからといって、必ずしも経営が安定しているとは言えない。大きな利益を出していても、自己資産がほとんどなく、多額の負債を抱えている可能性もある。資金繰りが悪化して目の前の支払いができなくなれば、どれだけ利益を出していても会社経営は上手くいかない。

ROAだけでは会社の経営状況を正確に分析することはできず、ROEとROA、2つの数値を活用することが重要だ。ROEが高くてROAが低い場合は、大きな負債を抱えており倒産リスクを持っている可能性がある。反対にROEが低くてROAが高い場合、財務レバレッジを活用できていない可能性がある。また、一般的にROEは10%以上だと投資価値がある会社だと判断されるが、ROAは5%以上で投資価値がある会社だと判断される。

ROAについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてほしい。

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まとめ/監修税理士・公認会計士コメント

今回は創業初期経営者の方などに向けて、ROE(自己資本利益率)とは何か、ROEの計算方法から業界目安、活用シーン、ROAとの違いなどを網羅的に解説した。株主から預かったお金である「自己資本」を使って、どれだけ効率的に利益を生み出せたかを示す指標である「ROA」。将来に向けての投資を行う場合や、株価を低下を防ぐための経営状況の把握において、ROEはとても重要な指標となる。経営者であれば、必ず知っておきたい知識だ。ROEを求める際には、決算書に記載されたデータが必要となる。決算書の読み方について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてほしい。

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