【貸借対照表を活用】財務分析を徹底的に解説します!

2020年11月11日

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「貸借対照表自体は知っているけど、活用方法が分からない」

このような悩みを抱えている方が少なくない印象だ。貸借対照表の活用方法を理解できれば、企業の財務分析の精度を高めることが可能だ。

投資を行っている場合は、投資対象とするべきかチェックする際にも利用できる。本記事では、貸借対照表を使った財務分析について、具体的な分析項目、チェックポイントを解説していく。

記事内容を読んで頂くことで、貸借対照表を使った財務分析の内容を広く理解できるので、是非一読して欲しい。

この記事を読むメリット

・貸借対照表の基本的な見方がわかる

【おさらい】貸借対照表とは?

貸借対照表は、決算日時点の財務状況を記した書類。左側に「資産の部」、右側に「負債の部」「純資産の部」が記載されている。

資産の部では、企業が保有している預金、商品、建物、土地などの資産が表示されている。負債の部では、他の企業や金融機関から借りている資本が表示される。未払いの代金、借入金などがこれに該当する。

純資産の部では、株主が出資した資本金、過去の利益の合計額が表示される。純資産は「自己資本」とも呼ばれ、負債と異なり返済義務がない。

貸借対照表では、上記3つの部に記載された金額をもとに、会社の財務状況を把握することが可能だ。いわば「企業の健康診断書」といっても良いだろう。

貸借対照表に関する詳細は、下記の記事にも掲載されているので、参考にして欲しい。

貸借対照表”抑えておくべき”チェックポイント

貸借対照表で抑えておくべきチェックポイントは下記の2つである。

・自己資本比率
・流動比率

さっそく、自己資本比率から詳細を解説していく。

自己資本比率

自己資本比率は、会社が保有するすべての資本(総資本)のうち、自己資本が占める比率のことである。

総資本とは「自己資本と他人資本の合計」。自己資本は「純資産」のことで、他人資本は「負債」になる。

自己資本比率の計算式は下記の通り。

自己資本比率=自己資本÷(他人資本+自己資本)×100

自己資本比率が高いほど、自己資本の占める割合が高くなるので、企業財政の安定性が高くなる。反対に、自己資本比率が低いと、負債などの他人資本に依存する状態になり、将来資金繰りが厳しくなったり、倒産してしまうリスクが高くなる。

一般的には、自己資本比率70%以上が理想の数で、自己資本比率40%以上が、倒産しづらい企業のラインといわれている。

ただ、日本企業の場合だと、黒字企業でも平均値が27%ほどなので、実際は40%に満たない企業も多い。また、赤字企業になると、自己資本比率がマイナス数値になっているところも存在する。

流動比率

流動比率とは、短期債務の支払い能力を示す指標。債務を返済できないと、企業は倒産する。そのため、債務を返済する能力がどれほどあるのか、把握しておくことは非常に重要だ。

流動比率が高いほど債務の返済能力が高く、倒産のリスクが低くなる。反対に、流動比率が低いほど債務返済能力が低くなり、倒産するリスクが高くなる。

流動比率の計算式は下記の通り。

流動比率=流動資産÷流動負債

流動資産とは、1年以内に現金化できる可能性が高い資産。現金、預金、売掛金、受取手形、有価証券などがこれにあたる。

一方、流動負債とは、1年以内に支払期限を迎える負債のことである。これは買掛金、前受金、未払金などが該当する。

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財務分析とは?5つの分析と主な指標

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財務分析とは、貸借対照表や損益計算書をなど、各種財務諸表を利用して、企業の財務状況を分析することだ。
財務分析を行うことで、企業の全体像、問題点などを把握することができる。

また、将来の成長度や利益も予想することも可能である。財務分析は、分析の目的によって下記の5つに分類される。

・収益性分析
・安全性分析
・活動性分析
・生産性分析
・成長性分析

それぞれの分析について、詳細を見ていこう。

1.収益性分析

収益性分析では、対象の企業がどれくらい利益を創出しているかを分析していく。

利益額ではなく、利益の比率を見ていく点がポイント。企業の存在前提は「利益を出している」ことであるので、収益性分析は財務分析の中でも基本である。

収益性分析で使用する指標として「粗利率」と「売上高営業利益率」が挙げられる。

粗利率

粗利とは「売上高から売上原価を差し引いた金額」であり、粗利率は売上高に対する粗利の割合を示す。粗利はその名の通り、おおざっぱな利益額となるため、粗利率も企業のおおよその収益性を表すものとなる。

粗利率の計算式は下記の通り。

粗利率=売上高総利益÷売上高×100

売上高営業利益率

売上高営業利益率とは、売上高に対する営業利益の割合を示す指標。営業利益とは、企業が本業の事業で稼いだ利益のこと。売上高営業利益率が高いと、企業の「本業で稼ぐ力」が高いと判断できる。

売上高営業利益率の計算式は下記の通り。

売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100

2.安全性分析

安全性分析では、企業の支払い能力を分析していく。負債を支払える能力があるのか、安全性分析を通じて確認を行い、その企業の財務面の安全性を把握していく。

なお、安全性分析で用いられる主な指標は、先ほど説明した「自己資本比率」と「流動比率」である利、この他にも「固定比率」などの指標が用いられる。

固定比率

固定比率とは、長期的な投資である固定資産を自己資本でどれほど賄っているかを示した比率。
比率が低いほど、固定資産が自己資本から独立していることになり、財務的な安定性が高まる。

固定比率の計算式は下記の通り。

固定比率=固定資産÷自己資本×100

3.活動性分析

活動性分析では、売上額を上げていくために、資産を有効活用できているか分析していく。資産を有効に活用できているほど、「効率よく売上を出せている」ことにつながり、収益力が高い企業という評価ができる。

活動性分析で使われる主な指標として、「総資本回転率」「固定資産回転率」「棚卸資産回転率」が挙げられる。

総資本回転率

総資本回転率は、売上に対する資本がどれほど回転しているかを示す指標である。総資本回転率が高いほど、資本を効率的に利用できていることになり、少ない資本で売上を出せている状態と評価できる。

総資本回転率の計算式は下記の通り。

総資本回転率=売上高÷総資本×100

固定資産回転率

固定資産回転率は、売上を出すためにどれほどの固定資産が活用されているかを示す指標である。固定資産が適切に利用されているか、設備投資が適正な範囲内で行われているか判断するときに利用される。
固定資産回転率の計算式は下記の通り。

固定資産回転率=売上高÷固定資産×100

棚卸資産回転率

棚卸資産回転率は、商品・製品などを効率よく販売できているかどうか、また棚卸資産の残高が適正であるか否かを把握するときに利用する指標である。

棚卸回転率が低いほど、棚卸資産が余っていることになり、商品・製品を効率よく販売できていない状態とされる。

回転率が高いほど、効率よく販売できていることになるが、業種や会社によって、適正な棚卸資産回転率は異なってくる。棚卸資産回転率の計算式は下記の通り。

棚卸資産回転率=売上高÷棚卸資産×100

4.生産性分析

生産性分析では、会社が設備や従業員などを効率よく使えているかどうかを分析する。設備、従業員が売上や付加価値の創出につながっているか否か、生産性分析で把握することが可能だ。

生産性分析で利用される主な指標として、「労働生産性」「労働分配率」が挙げられる。

労働生産性

労働生産性は、従業員1人あたりが創出している付加価値の比率を示す指標。労働生産性が高いほど、少ない従業員で付加価値を生み出していることになる。

労働生産性の計算式は下記の通り。

労働生産性=付加価値÷平均従業員数

労働分配率

労働分配率は、付加価値に対する人件費の比率を示す指標。付加価値の創出にかかっている人件費が適正であるか否か、確認することができる。

労働分配率の計算式は下記の通り。

労働分配率=人件費÷粗付付加価値額×100

5.成長性分析

成長性分析では、会社がこれまで如何に成長してきたか、また今後の成長可能性について分析していく。
企業全体の成長力を把握する際に、成長性分析は有用だ。

成長性分析では「売上高伸び率」「経常利益伸び率」の指標が主に使用される。

売上高伸び率

売上高伸び率は、前期と当期の売上高を比較し、当期の売上高がどれほど伸びているかを示す指標。
売上高をベースに、企業の成長力を分析するのに用いる。

売上高伸び率の計算式は下記の通り。

売上高伸び率=(当期売上高ー前期売上高)÷前期売上高×100

経常利益伸び率

経常利益伸び率は、前期のと比較して、登記の経常利益がどれほど伸びているかを示す指標である。伸び率が高いほど、企業の評価は高くなる。

経常利益伸び率の計算式は下記の通り。

経常利益伸び率=(当期経常利益ー前期経常利益)÷前期計上利益×100


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経営改善にも役立つ貸借対照表

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貸借対照表は、自社の経営改善にも役立つ。上記で紹介した財務分析を自社の貸借対照表を用いて行うことで、自社を客観的な数値で評価することができる。

財務分析の結果、労働生産性が低いことが分かったり、売上高伸び率が緩い点が把握できたり等、改善ポイントを把握できるので、経営改善に利用しやすい。

もちろん、財務分析の結果が企業のすべてではないが、数値化して「見える状態」にすることは、経営改善の上で重要だ。

財務分析は経理担当のみならず、経営陣や一般社員も使いこなせるようになるのが望ましい。会社全体で数値を把握することで、企業運営、仕事の足並みを揃えやすいからだ。

財務分析を日ごろの会議やミーティングに取り入れてみることをおすすめする。

まずは自社の経営状況を具体的に把握していきたい方は、以下の記事も参考にしていただきたい。

まとめ

貸借対照表は、財務分析で活用することができる。貸借対照表上の数値のみを眺めずに、各指標の計算式に当てはめて使うことで、企業の経営状態、収益力などを把握することが可能だ。

財務分析の計算自体は、貸借対照表の数字さえ分かれば電卓で簡単に行える。貸借対照表を活用して、企業の経営改善や従業員の業務改善に利用していこう。

2020年11月11日経営のオンライン化

Posted by taxtech-editor