【経営者必見】絶対に抑えておきたい!法人確定申告とは?

2020年9月6日

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法人化すると避けては通れないのが確定申告。さまざまな書類を準備しなければならず、初めてだと何から手を付けて良いのか悩んでしまう方も多いだろう。そこで今回は、法人の確定申告とは何かを解説し、必要書類と書き方及び注意点と提出期限 決算との違いe-taxで行う場合や自分で行う場合など完全に網羅して解説していく。

本記事を読むメリット

  • 法人における確定申告の概要から必要書類、書き方、注意点、手続きまで全て網羅できる

法人 確定申告とは?

会社を起業して利益を得ると、その利益に対して税金が課税され、確定申告の義務が生じる。法人で課税される主な税金は「法人税」と「消費税」である。

法人税とは、会社や公益法人などの法人が事業活動する上で得た所得にかかる税金。所得税は個人の所得の額によって納税額が変動する「累進課税制度」を採用しているが、法人税は法人の資本金規模や所得総額によって納税額が異なる。

消費税は基本的にすべてのものやサービスにかかる税金だが、法人に対しても課税される。消費税は「間接税」であるため、事業者は消費者から受け取った消費税や自らが支払った消費税をもとに計算して納付する。

これらの税金を事業者自らが計算し、所轄の税務署に申告するのが、法人の確定申告だ。節税するためには、法人税や消費税の仕組みについてよく理解した上で申告することが大切である。

法人税について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてほしい。

消費税についても、以下の記事で詳しく解説している。

確定申告には以下の4つの方法があるので、自分に合った方法を選ぼう。

  • 申告書類を税務署へ直接提出
  • 申告書類を税務署へ郵送する
  • 営業時間外に対応した税務署のポストへ投函する
  • 自宅のパソコンで申請する(e-tax)
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法人の確定申告 青色申告と白色申告

法人の確定申告には、青色申告と白色申告の2種類がある。それぞれについて解説していく。

青色申告

青色申告とは、「複式帳簿」と呼ばれる複雑な帳簿付けが必要とされる申告方法だ。以下の要件を満たした場合に、青色申告を選択できる。

  • 法定の帳簿書類を備え付けて取引を記録し、その書類を一定期間保存すること
  • 税務署に青色申告の承認の申請書を提出して、あらかじめ承認を受けること

法人青色申告承認申請書は、青色申告によって申告書を提出しようとする事業年度開始の日の前日までに提出する必要がある。初年度の場合は、設立の日以後3ヶ月を経過した日と当該事業年度終了の日とのうち、いずれか早い日の前日までと定められている。何も手続きをしなければ、自動的に白色申告をすることになる。

青色申告は手間はかかるものの、節税効果が非常に高いのが特徴。例えば、以下のようなメリットがある。

  • 欠損金の繰越控除がある
  • 欠損金の繰り戻し還付が受けられる
  • 特別償却と特別控除が受けられる

欠損金とは、事業において赤字になった金額のことである。青色申告を行うと、赤字が発生した翌年以降に利益が出て黒字になった場合、9年間は赤字を繰り越して相殺できる。例えば初年度で300万の赤字が出て、翌年は1,000万の黒字になった場合。初年度の課税所得は赤字なため「0円」で、2年目の課税所得は前年度の赤字を繰り越して「1,000万ー300万=700万円」となる。白色申告だと欠損金は繰り越せないので課税所得は1,000万円のままだが、青色申告にすることでかなりの節税効果を得られる。初年度は事業の準備段階で黒字が出せないことも多く課税所得はそこまで大きな額になりにくいが、翌年以降の税金対策として初年度から青色申告にしておくと良いだろう。

また、すでに支払った法人税を繰り戻して、還付を受けることも可能である。法人税を支払った翌年に赤字になった場合、前年度に赤字を繰り戻して還付される。対象となるのは前年度の1年間のみ、また資本金1憶円以下の中小企業に限定される。対象となれば法人税の節税に大いに役立つ。

会社が一定の設備投資や人材投資を行った場合は、特別償却と特別控除が受けられる。別償却とは、減価償却費を通常より多く計上できる制度。特別控除とは、法人税を一定額控除する制度だ。その他にも教育訓練費の税額控除、試験研究費の税額控除、事業所内託児施設等の割増償却、エネルギー需給構造改革推進設備等の特別償却・特別控除など、節税に役立つさまざまな制度があるため、なるべく税金を安くしたいなら青色申告を選ぶのが得策だ。

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白色申告

白色申告とは、青色申告とは異なり「簡易帳簿」と呼ばれる簡単な帳簿付けで確定申告を行うことができる。その分控除額は小さく、節税効果は低い。ただ、開業時に申請する必要がなく、経理に関する業務を最低限まで簡略化できるのがメリットだ。特に創業したての頃はさまざまな業務があり、それを少ない人数でこなさなければならないケースが多い。白色申告を選ぶことで業務の負担を少しでも軽くして、その分事業を成長させることに力を注げる。

法人の青色申告について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてほしい。

法人確定申告に必要な書類と書き方 

法人確定申告では、以下の書類が必要となる。

  • 総勘定元帳
  • 領収書綴り
  • 決算報告書
  • 法人事情概況説明書
  • 法人税の申告書
  • 消費税の申告書

それぞれの書類について詳しく解説していく。

総勘定元帳

総勘定元帳とは、すべての取引や経理処理が科目ごとに記録された元帳のことである。勘定科目は、それぞれ損益計算書の項目である収益・費用、貸借対照表の項目である資産・負債・資本(純資産)の5つのうちいずれかに分類される。

領収書綴り

領収書綴りとは、経費の領収書を日付順に綴ったものである。何のために、いつ、誰にいくら支払ったのかが明記された領収書を保管しておくことで、お金のやりとりの証拠となる。領収書には、以下の4つの情報が記載されている必要がある。

  • 支払った日付
  • 購入金額
  • 購入したものやサービスの内容
  • お金を受け取った者の氏名や名称、住所

手書きの領収書の場合でも、最低限「飲食代として」などとおおまかな内容を記載してもらうと安心だ。宛名は、自分の名前や自分の会社名になっていることが望ましい。

確定申告の際に提出する義務はないが、必ず作成し、最低でも7年間は保管しなければならない。税務調査が入った場合は、領収書綴りをもとに申告内容が正しいかどうかをチェックされる。

決算報告書

決算報告書とは、会社の損益、貸借などのデータをまとめた報告書である。決算報告書は以下の5種類の書類で構成される。

  • 貸借対照表(B/S):現金や土地・建物といったプラスの「資産」のほか、マイナスの財産である借入金などの「負債」、元手や儲けなどの「純資産」を記載した書類
  • 損益計算書(P/L):1事業年度における企業の収益と費用、最終的な当期純利益を確認する書類
  • 株主資本等変動計算書:1会計期間中の貸借対照表における純資産の変動の理由や金額を報告するための書類
  • 販売費及び一般管理費の明細:会社の必要経費の詳しい明細が記載されたもの
  • 個別注記表:貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書を見る際に参考となる補足情報を記載したもの

法人事情概況説明書

法人事情概況説明書とは、法人名、事業内容、従業員数、海外取引状況、PC利用状況、主要科目など、法人に関する情報をまとめた書類のこと。税務署が法人の事業内容や状況などを毎年把握するために、「法人税法施行規則」によって提出が義務付けられている。法人税確定申告書に添付して提出する。

法人税および消費税の申告書

法人税の申告書は、税務計算書類、勘定科目内訳書、決算申告書等を綴ったもの。消費税の申告書は消費税額の計算書、確定申告書等を綴ったものを、それぞれ提出する。

上記のほかに、都道府県民事務所、もしくは管轄自治体の役所に「地方法人税の申告書」を提出しなければならない。地方税には大きく「地方住民税」「地方事業税」「地方法人特別税」の3つがあり、これらの計算書と申告書が「地方法人税の申告書」である。ほかにも、固定資産税や自動車税なども地方税に含まれる。事務所や店舗が複数ある場合はその数分割申告が必要である。地方法人税の申告書の提出期限は、決算日より2か月以内。3月末決算の場合は、5月末が締め切りとなる。申告フォーマットは各地方によって異なるため、所在地の都道府県税事務所に尋ねてみてほしい。

また税理士が税務を代理する場合は、決算を委託するための書類として「税務代理権限証書」が必要となる。これは各申告書に添付して提出する。税理士が責任を持って申告書を作成した証明書であり、提出しておくと万が一税務署が税務調査に入る際、事前に税理士へ連絡が入るようになる。税務署とのやりとりを税理士に任せられてスムーズになるため、顧問税理士にお願いして必ず添付するようにしよう。

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法人の確定申告の注意点と提出期限

では、法人の確定申告は何に気を付けていつまでに行えば良いのか。ここでは法人の確定申告の注意点と、提出期限について解説する。

注意点

多くの法人は、節税効果の高い「青色申告」を選択するだろう。青色申告は、法人設立時に税務署で「青色申告承認申請書」を提出し申請しなければ選択できないため注意が必要だ。申請の期限は、青色申告によって申告書を提出しようとする事業年度開始の日の前日まで。初年度は設立の日以後3ヶ月を経過した日と当該事業年度終了の日とのうち、いずれか早い日の前日までとなっている。設立日から決算日までの期間が3ヶ月を切っている場合、決算日の前日までには申請しなければいけないので要注意。

申請さえしておけば基本的にはずっと適用され、青色申告ができる。しかし注意したいのが、確定申告提出期限。2期連続で提出期限に遅れてしまった場合、特別な事情がない限り青色申告の承認は取り消されてしまう。一旦取り消されると1年間は再申請ができず、さらに申請して適用されるのは翌期になるため、最短でも翌々期までは青色申告ができない。当然この間に生じた欠損金は繰り越せなくなるため、確定申告は期限を守って行うようにしよう。

提出期限

法人の確定申告の期限は、企業ごとに定めた決算から2か月以内の納付。「2月16日~3月15日」と時期が定められている個人事業主とは異なるため、注意が必要だ。法人の確定申告は決算終了日から納付日までの日数が少なく、提出書類も多い。遅れないように、期限までに余裕をもって準備を進めたい。

法人確定申告と決算の違いは?

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法人確定申告とよく混同されがちなのが「決算」だ。決算とは、法人が独自に決めた1会計期間ごとに、売上、仕入、諸経費などを計算し、利益を確定させる一連の作業のことを指す。この区切った期間を「事業年度」といい、事業年度の最後の月を「決算期」という。決算ではまず、勘定科目の実際の残高、在高、あるべき残高と合計残高試算表の科目残高を照らし合わせて、決算日現在の各勘定科目の残高が、実際の残高と一致しているかを確認する。残高を確定させて、その数字をもとに「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」の3つを中心とした決算書を作成する。

確定申告は決算で確定した利益をもとに交際費の加算などの税務調整を計算し、法人税や消費税などの納税額を確定させて申告することを言う。税金の計算は基本的に「消費税→法人税」の順番で行う。経理担当者が書類を作成した後、経営者が確認、その後役員会で承認、株主総会に提出・承認という流れになるのが一般的だ。

決算の流れについては、以下の記事で詳しく説明しているので参考にしてほしい。

法人の確定申告をe-taxで行うなら

確定申告方法の一つである「e-tax」。e-taxとは国税電子申告・納税システムのことで、確定申告や納税に関する各種手続きをインターネットを通じて行える。税務署に足を運ばなくても、自宅や事務所で24時間いつでも申告を行えるのがメリットだ。現在は「ペーパーレス推進税制」によりe-taxでの確定申告が推奨されており、2020年からは大法人に向けて電子申告の義務化も始まっている。では、e-taxでの確定申告はどのように行うのか。ここではその流れを解説していく。

法人の確定申告をe-taxで行う大まかな流れは、以下の通りだ。

  1. 利用者識別番号の取得
  2. 電子証明書の取得
  3. 申告申請データを作成・送信する
  4. 送信結果を確認する

それぞれ詳しく解説する。

①利用者識別番号の取得

e-taxで確定申告を行う際に必要になるのが、利用者識別番号だ。利用者識別番号を取得するためには以下の4つの方法がある。

  • Web
  • 書面
  • 法人設立ワンストップサービス
  • 税理士が代理

国税庁のWebサイトの「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」から、開始届出書を作成・送信することで、利用者識別番号を取得できる。国税庁のWebサイトから用紙をダウンロードし、作成した書類を税務署に送付・持参することも可能。

「法人設立ワンストップサービス」は、法人設立に関するさまざまな手続きをオンラインで行えるもの。法人代表者のマイナンバーカードを使って、開始届出書を作成・送信すると、利用者識別番号を取得できる。この場合はマイナンバーカードを読み込むICカードリーダライタも必要だ。税理士の方に開始届出書を代理送信してもらうこともできる。

②電子証明書を取得

申告データをインターネットで送信するには、そのデータが本人が作成したものであることを証明する必要がある。その際、自署・押印に代わるものとして利用できるのが、電子署名。電子署名を行うためには、事前に電子証明書を取得し、それを読み込めるICカードリーダライタが必要だ。またはNFC対応のスマートフォンでも電子証明書が読み取ることができる。

e-Taxで使用できる電子証明書は、電子署名法の特定認証業務の認定を経た上で、政府認証基盤(GPKI)のブリッジ認証局と相互認証を行っている認証局が作成した電子証明書等のうち、e-Taxで使用可能であることが確認されたものに限定される。法人の代表者のマイナンバーカードのほか、以下が発行するものも利用できる。法人の代表者のマイナンバーカードのほか、以下が発行する電子証明書も利用できる。

  • 商業登記認証局
  • 地方公共団体組織認証基盤(LGPKI)
  • 株式会社帝国データバンク(電子委任状取扱事業者)
  • 東北インフォメーション・システムズ株式会社
  • 日本電子認証株式会社
  • 株式会社NTTネオメイト(電子委任状取扱事業者)
  • セコムトラストシステムズ株式会社(電子委任状取扱事業者)
  • 三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(電子委任状取扱事業者)
  • 政府共用認証局(官職認証局)

電子証明書にはそれぞれの認証機関が定めた有効期間がある。法人の代表者のマイナンバーカードを使用する場合は、有効期間は発行の日から5回目の誕生日まで。また公的個人認証サービスで使用する電子証明書の有効期間は、発行の日から3年間。有効期間が切れるまでに、格納されている電子証明書の更新を行う必要がある。期限が切れている電子証明書は失効となり、e-Taxでも使用できない。あらかじめ各認証機関に確認しておこう。

③申告申請データを作成・送信する

申告申請データの作成・送信は、国税庁が用意したダウンロード版e-Taxソフトで行える。画面に従い、取得した電子証明書を使って「電子証明書の登録」を行う。申告・申請データを作成し、電子署名及び電子証明書を添付。画面に従って申告・申請データを送信する。送信が完了したら、画面上に正常に受信されたかどうかの判定と、受付番号、受付日時、受付ファイル名、送信者の利用者識別番号などの即時通知が表示される。

④送信結果を確認する

即時通知後しばらくすると、送信データの審査結果が国税庁Webサイトのメッセージボックスに届く。必須項目にデータが入力されているか、改ざんされていないか、添付された電子証明書が有効期限内で、かつ、登録された電子証明書と一致するかなどが判定されているので、必ず確認する。問題がなければ、これで確定申告が完了となる。

e-Taxでの確定申告についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてほしい。

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まとめ/監修税理士・公認会計士コメント

今回は、法人の確定申告とは何かを解説し、必要書類と書き方及び注意点と提出期限 決算との違いe-taxで行う場合や自分で行う場合などについて網羅的に解説した。確定申告は法人になると必ず必要なもの。複雑で面倒なイメージがあるかもしれないが、少しずつ準備を進めていれば期限間近に焦ることもない。また適時に記帳をすることで決算前に節税の検討を行うこともできる。

2020年9月6日税務サポート